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APRIL 2010 50
住宅メーカーの積水ハウスは業界で初めて、新築
施工現場で発生する廃棄物のゼロエミッションを達
成した。 現場で分別を行い、集荷拠点を経由して
自社のリサイクル施設に回収する仕組みを作ること
で、廃棄物の発生量を大幅に削減した。 さらに部
材の設計段階から発生抑制を図るため、回収時に
ICタグで廃棄物情報を収集するシステムの構築を
めざしている。
バフェットも認める有望市場
アメリカの著名投資家、ウォーレン・バフ
ェット氏率いる投資会社のバークシャー・ハ
サウェイは昨年、アメリカの二大貨物鉄道会
社の一つ、バーリントン・ノーザン・サンタ
フェ鉄道(BNSF)を総額四四〇億ドル
(約四兆円)で買収すると発表した。 世界一
の投資家として知られるバフェット氏にとっ
ても過去最大の買収案件だ。
この買収に当たってバフェット氏は、「安い
買い物ではなかったが、(BNSFは)今後
一〇〇年にわたり優良な資産になる」「アメリ
カの将来の繁栄は、効率的で十分に手入れさ
れた鉄道輸送システムを持てるかどうかにか
かっている。 逆に言えば、アメリカ経済は鉄
道輸送事業の経営がうまくいくような方向で
成長しなければならない」とコメントしてい
る。
鉄道貨物輸送や通運業(鉄道貨物の取扱
業)といえば、日本では斜陽産業のイメージ
がある。 実際、日本の貨物鉄道の輸送機関別
分担率は一九五〇年代をピークに今日まで半
世紀にわたって低下し続けている。
ところがアメリカでは、鉄道貨物輸送が七
〇年代以降ほぼ一貫して増加し続けている。
鉄道を使ったインターモーダル輸送(複合一
貫輸送)の積み替え回数は七〇年代には年間
で約二〇〇万回だった。 それが現在は一四〇
〇万回近くに増えている(図1)。
アメリカの旅客輸送は鉄道から飛行機にシ
フトしてしまったが、六〇〇マイル(一〇八
〇キロ)以上の長距離輸送でトラック輸送の
代替モードとなるとされる鉄道貨物輸送は、
広い国土と相性がいい。 景気さえ回復すれば、
貨物鉄道事業は今後も安定した収益が期待で
きるとバフェット氏は評価したわけだ。
こうした鉄道貨物輸送の拡大を追い風とし
て成長を続けてきた物流会社がハブ・グルー
プだ(図2)。 創業は一九七一年で、現在会
長兼CEOであるデーブ・イエイガー氏の父
イリノイ州に本社を置くハブ・グループは自ら
をインターモーダル・マーケティング・カンパニー
(IMC)と呼び、通運業を主力に成長してきた。 し
かし08年秋から同時不況の影響を受けて、09年度
は大幅な減収減益に。 09年終盤に荷動きは底を打っ
たが運賃相場は依然低迷している。
世界同時不況
ハブ・グループ
インターモーダル市場でシェア2位
米鉄道貨物輸送の拡大と共に成長
企業概要
社名 ハブ・グループ(Hub Group)
本社 イリノイ州ダウナーズグローブ
創業 1971年
代表者 デーブ・イエイガー会長兼CEO
売上高 15億1097万ドル(1359億8700万円)
最終利益 3427万ドル(30億8400万円)
従業員数 1329人(うちドライバー301人)
2009年末の数字
図1 アメリカのインターモーダル貨物量
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
出典:北米インターモーダル協会
(単位:万回)
80
年
85
年
90
年
95
年
2000
年
01
年
02
年
03
年
04
年
05
年
06
年
07
年
08
年
51 APRIL 2010
親であるフィリップ氏が起業した。
アメリカ東部出身のフィリップ氏は、大学
卒業後にペンシルバニア中央鉄道で働き、そ
こで貨物輸送を手掛ける。 その経験を元に、
四〇代でハブ・グループを立ち上げて、九〇
年代半ばにナスダック市場に上場を果たした。
会長職にあったフィリップ氏が二〇〇八年
に他界すると、息子のデーブ氏が会長兼CE
Oとなり、もう一人の息子であるマーク氏が
現在、副会長兼COOを務めている。
アメリカにおける主な鉄道輸送業者として
は、BNSFとユニオン・パシフィック鉄道
が二強で他にはCSXトランスポーテーション、
ノーフォーク・サザン鉄道──などがある。
これに対して通運業者( I M C :
Intermodal Marketing Company)は最大手
が部門売上高一七億ドルのJBハント。 二位
が一〇億ドルのハブ・グループ。 以下、シュ
ナイダー・ナショナル、UPS、ペイサー・
インターナショナル、米郵政庁(U.S. Postal
Service)──と続く。 この上位六社で約八
〇億ドルとされるIMC市場の七割前後を押
さえている。
メーンの鉄道会社を変更
〇九年度に、ハブ・グループはインターモ
ーダル輸送のネットワークに大きなメスを入れ
た。 これまで同社は、強みとするアメリカ中
西部から南東部にかけての輸送キャリアとし
てノーフォーク・サザン鉄道の輸送枠を使っ
てきた。 一方、アメリカ西部はライバルのJ
Bハントが地盤としていて、これまで十分に
ネットワークを拡大することができずにきた
(図3)。
そうした現状を打開する狙いもあり、ハ
ブ・グループは昨年七月、西部でメーンに使
う鉄道会社を、それまでのBNSFからユニ
オン・パシフィック鉄道に切り替えた。 西部
エリアの売上高の九割までをユニオン・パシ
フィック鉄道に切り替えるという内容で、複
数年契約を結んだ。
イエイガーCEOは、鉄道会社を切り替え
た理由として、運賃で折り合いがつかなかっ
たのではなく、コンテナの使用権が最大の問
題だったとする。
同社はこれまで、鉄道会社の所有する九
〇〇〇本近い鉄道コンテナを独占的に利用し
て業務を行ってきた。 しかしBNSFは近年、
ハブ・グループをはじめとするIMC側にコ
ンテナを含めた輸送機材を自分で所有するこ
とを求めるようになっている。 これが自社の
資産をできるだけ軽くしたいハブ・グループ
図2 過去5 年の業績の推移
2,000,000 (単位:千ドル)
1,800,000
1,600,000
1,400,000
1,200,000
1,000,000
800,000
600,000
400,000
200,000
0
売上高:左軸
営業利益:右軸
05年度 06年度 07年度 08年度 09年度
70,000
60,000
50,000
40,000
30,000
20,000
10,000
0
図3 ハブ・グループのアメリカの主な拠点
クリーブランド
コロンバス
シカゴ
カンザスシティセントルイスノーフォーク
シャーロット
チャールストン
サバンナ
ヒューストン ジャクソンビル
ダラス
メンフィス
ナッシュビル
アトランタ
バーミンガム チャタヌガ
ハンツビル
ストックトン
ロサンゼルス
APRIL 2010 52
の思惑とぶつかった。
ハブ・グループは創業時から一貫して、で
きるだけ資産を持たない「アセット・ライト
(asset-light)型」の企業を標榜しており、事
業者としても鉄道業者やトラック業者などの
輸送キャリアと荷主企業の仲介を主業として
位置付けている。
ユニオン・パシフィック鉄道はBNSFと
違って輸送機材をIMCに提供する姿勢があ
った。 それが切り替えの最大の理由だったと
いうわけだ。
またハブ・グループは輸送キャリアを切り
替えたことで、〇九年の第4四半期にはコ
ンテナが戻ってくる日数が前年同期に比べて
九%早くなったという。 イエイガーCEOは
「西部の輸送をユニオン・パシフィック鉄道に
任せたことで輸送効率が高まった。 同社から
受けるサービスは、オンタイム配送率や、積
み替え時間、サービスの一貫性といった面か
らみて非常に満足できるレベルにある」と語
っている。
一方、鉄道による幹線輸送の末端で発生す
るトラックによるドレージ輸送では、〇六年、
コムトラック(Comtrak)を三億八〇〇〇万
ドルで買収した。
コムトラックは現在、自社のドライバー三
〇〇人強と、インデペンデント・コントラク
ターと呼ばれる一人親方のドライバーを一〇
〇〇人強使って、輸送業務を行っている。 こ
こでも自社のドライバーの数をできるだけ抑
の激しい市場環境という二つのプレッシャー
にさらされている。 そんな中でも当社は〇
九年度において、運賃水準とマーケットシェ
アとのバランスをうまくとりながら、適度な
(reasonable)利益水準を確保してきた」と
語った。
ハブ・グループの事業部門は、インターモ
ーダル部門のほかに、トラック輸送の仲介部
門、ロジスティクス部門の三つに分かれてい
る。
部門別に業績をみると、インターモーダル
部門の〇九年度売上高は前述の通り前年度比
二〇・七%減少して一〇億五四八六万ドルだ
った。 減少の内訳は、十一%が燃料費の下落
によるもので、五%が物量の減少、三%が運
えようとする姿勢が表れている。 輸送機器は、
リース分を含めてトラクターが三〇〇台、ト
レーラーが五五〇台だ。
昨年、コムトラックは主要マーケットであ
る東部のペンシルバニア州のハリスバーグとフ
ィラデルフィアに新しい拠点を立ち上げた。 ま
たアメリカ企業の委託生産が進むメキシコ発
の貨物を取り込むためにメキシコ・シティに
も事務所を開設している。
〇九年度は3PL部門だけが増収
ハブ・グループが今年一月末に発表した二
〇〇九年度の決算は、売上高が一五億一〇
九七万ドル(一三五九億八七〇〇万円、前年
度比一八・八%減)、営業利益が五五五三万
ドル(同・四一・八%減)、最終利益が三四
二七万ドル(同・四二・二%減)──の大幅
な減収減益だった。
同社の売上高の約七割を占めるインターモ
ーダル部門が前年度比で二〇%以上の落ち込
みとなったことが、全体の売上高の足を引っ
張ったかたちだ(図4)。
〇九年度の第4四半期も、売上高四億七
八八万ドル(前年同期比・五・二%減)、営
業利益一五五二万ドル(同・三二・九減)、
最終利益九九五万ドル(同・三〇%減)──
と減収減益ペースは続いている。
〇九年度の業績についてデーブ・イエイガ
ーCEOは、「当社の粗利は依然として、弱
含みで推移するアメリカ国内経済と、競争
図4 2009 年通期の損益計算書
売上高(前年同期比) 15 億1097 万ドル -18.8%
インターモーダル 10 億5486 万ドル -20.7%
トラック輸送 2 億9264 万ドル -21.3%
ロジスティクス 1 億6347 万ドル 2.7%
輸送枠購入費 13 億2528 万ドル -18.5%
粗利 1 億8569 万ドル -20.8%
営業支出 1 億3016 万ドル -6.3%
人件費 8852 万ドル -5.5%
一般管理費 3747 万ドル -9.1%
減価償却費 417 万ドル 5.5%
営業利益 5553 万ドル -41.8%
その他の収支 35 万ドル -59.0%
利子による支出 ▲9 万ドル ─
利子による収入 15 万ドル -87.3%
その他 30 万ドル ─
税引き前利益 5589 万ドル -42.0%
法人税 2162 万ドル -41.7%
最終利益 3427 万ドル -42.2%
潜在株式調整後─株当たりの利益 0.91ドル -42.4%
53 APRIL 2010
四七万ドルで同二・七%の増加と、三部門の
中で唯一増加した。 新規荷主を二社獲得した
ことが寄与した。
売り上げ減少の影響を吸収するために〇九
年度はコスト削減に努めた。 年間の総人件費
は、八八五二万ドルで同五・五%を削減した。
従業員数を一〇九九人から一〇二八人へと七
〇人強削減したのに加え、ボーナスなどもカ
ットした。 また一般管理費も三七四七万ドル
と同九・一%削減した。
物量は回復傾向だが運賃は依然低迷
アメリカの同業他社と同様、同社も〇八年
秋以降の世界同時不況の影響を大きく被って
いる。 過去の業績の推移をみると、四半期売
上高は〇八年度の第3四半期に五億一〇〇
〇万ドル台でピークを迎え、〇九年度の第1
四半期には三億五〇〇〇万ドル台まで落ち込
んでいる。
しかしその後、〇九年度の第4四半期に再
び四億ドル台に戻した(図5)。 主力のインタ
ーモーダル輸送の物量が第4四半期に入って
同時不況以降で初めて増加に転じた。 当初は
第4四半期も四〜八%の物量減少を見込んで
いたが、ふたを開けてみると六%増加した。
ただし、物量増にもかかわらず、売上高
は同七%減少している。 燃料費の低下に加
えて、運賃の五%低下が響いた。 同社のマー
ク・イエイガー副会長兼COOは「物量の増
加は、主にこれまでそれほど取引がなかった
荷主からの貨物が増えた結果だ。 それまで取
引高で上位二〇社の圏外にいた荷主との取引
が増えて、上位一〇社に入ってきたケースも
ある。 当社が同業他社から積極的にシェアを
奪おうと動いた成果だ」と説明する。
物量に勢いが戻りつつある現在、関心は運
賃水準がどこまで回復するかに移っている。
デーブ・イエイガーCEOは「〇八年度の
年末は繁忙期といえるような物量の増加がな
かったが、〇九年度の後半には繁忙期が戻っ
てきた。 (同時不況以前のように)繁忙期の
特別料金を上乗せするまではいたらなかった
が、運賃市況に関していえば、〇八年末から
〇九年初めにかけての契約更新の時期に底を
打ったと感じている。 荷主が現時点で改めて
契約を更新しようとすれば、割高な運賃とな
って跳ね返ってくるだろう」という。
一〇年度は運賃水準が戻ることを織り込ん
で、一株当たりの利益を一〜一・一五ドルを
予測している。 金額にすると三七五二万ドル
〜四三一五万ドルとなり、〇九年と比較して
最大で二五%の増加となる見込みだ。
キャッシュフローは潤沢だ。 〇九年期末の
手持ちのキャッシュは一億二七〇〇万ドルで、
前年期末に比べて四一〇〇万ドル増えた。 そ
こまでキャッシュを積み増す必要があるのか、
株式市場から疑問の声が上がるほどだった。
それに応えて同社は二月下旬、三〇〇〇万ド
ルを使って自社株の買い戻しを行うことを決
めている。 (ジャーナリスト 横田増生)
賃の低下などとしている。
二つ目の柱である「トラック輸送の仲介部
門」の事業は、日本の求貨求車システムに近
い。 自らはトラックなどの資産やドライバーな
どの人材を抱えずに、トラック業者と荷主の
間に立って、貨物輸送を手配し、手数料を収
入源とする。
その「トラック輸送の仲介部門」の売上
高は、二億九二六四万ドルで、同・二一・
三%の減少だった。 そのうち二%は物量の減
少で、十一%は燃料費の低下、八%はその他
の要因による。
ロジスティクス部門の売上高は、一億六三
1ドル= 90円で換算
図5 四半期ごとの業績の推移
08年
Q1
08年
Q2
08年
Q3
08年
Q4
09
年Q1
09
年Q2
09
年Q3
09
年Q4
18,000
16,000
14,000
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
0
売上高:左軸
最終利益:右軸
600,000
500,000
400,000
300,000
200,000
100,000
0
(単位:千ドル)
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