ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2010年5号
特集
第6部 大手通販会社ケーススタディフェリシモ──リードタイムより環境・品質を重視

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MAY 2010  36 フェリシモ ──リードタイムより環境・品質を重視  トラック輸送から鉄道などへのモーダルシフトを進め、物 流コスト削減と環境負荷低減を両立させている。
モーダル シフトは物流センターから半径500キロメートル以上の地域 を対象としている。
リードタイムは約1日伸びたが、毎月定 期的に商品を届ける頒布会形式という業態がそのデメリッ トを無効にしている。
           (梶原幸絵) 配送には“地域一番店”を起用  アパレル関連商品や雑貨などを販売するフェリシモ が神戸市須磨区に置く大型施設「エスパスフェリシ モ」。
受注、情報システム、物流機能のほか、多目的 ホールなども備える大型施設だ。
敷地面積は約二万 平方メートル、延べ床面積は四万平方メートルを超え る。
 フェリシモの取り扱う商品のほぼすべてがエスパス フェリシモから出荷され、年間の出荷個数はおよそ 一〇〇〇万個に上る。
そのうち北海道、東北、関東、 四国、九州に向けた荷物は主にJR貨物で各地域に 輸送され、それぞれの地域を担当する宅配業者に引 き渡される。
 フェリシモがモーダルシフトを開始したのは一九八 八年のこと。
当初は北海道向け。
九九年からは神戸 から概ね半径五〇〇キロメートル以上の地域という基 準を設けて取り組み、段階的に対象地域を拡大して 〇三年に切り替えを完了した。
 「JRコンテナには大体一〇〇〇個の荷物を積むこ とができる。
中長距離の大量輸送を行うことで、環 境への負荷低減とコスト削減の両方が成り立つ」と CSフルフィルメント本部物流サービス部の武元康夫 部長は説明する。
現在、新潟向けは神戸圏に来るト ラックの帰り便を利用して配送しているが、これも 環境とコストの両立を念頭に置いている。
 モーダルシフトの実施で出荷から顧客着荷までの リードタイムは平均約三日と一日伸びた。
しかし顧 客サービスのレベルは落ちてはいない。
フェリシモの 販売は「フェリシモコレクション」と呼ぶ頒布会に似 た形式が中心だ。
顧客は商品カテゴリーだけを選ぶ。
それに対して基本的に毎月一回、色柄・デザインの 異なるその月の商品が送られてくる。
それがフェリシ モの魅力の一つとなっている。
武元部長は「どのよ うな商品が届くのか、ワクワク、ドキドキ期待をこめ て待つ時間もコレクションの醍醐味の一つ」と語る。
 配送日は厳密には決まっていない。
商品の入荷と 在庫状況、注文内容によって変動する。
 複数のカテゴリーを注文している場合は基本的にす べての商品がエスパスフェリシモに揃った段階で出荷 している。
初回の申し込みから納品までのリードタイ ムは最短二週間前後だが、商品の出荷期間によって は四週間にもなる。
 そこで、インターネットを利用する顧客を対象にき め細やかな情報提供を行っている。
顧客は在庫ステー タスや出荷状況、到着予定などをウェブ上で閲覧で きる。
出荷が完了すれば出荷案内メールも送信する。
商品が揃わず出荷が大きく遅れる可能性があれば、要 望に応じて揃っているアイテムを先に出荷する。
イン ターネットを利用していない顧客の問い合わせはコー ルセンターで受け付ける。
 頒布会という独特の販売形式が配送日未定という 異例の物流サービスを可能にしている。
 ただし配送品質は厳密に管理している。
指標とな るのは指定時間帯遅れなどに関する?コールセンター などへの月間入電件数、?入電内容、?荷物の着荷 予定日と実際の着荷日との差異──の三つだ。
 大きなミスについては即座に業者に伝えて対策を 要請し、顧客にも対応を伝えるほか、月一回の業者 との会議で改善策を話し合い、その後の進捗状況も 管理している。
 現在、取り組んでいる課題はフェリシモのホームペー ジ上での貨物追跡サービスだ。
一〜一年半前に一部 地域で導入したが、全国展開には至っていない。
地 6 大手通販会社ケーススタディ 37  MAY 2010 域別に配送業者を使い分けていることがボトルネック になっている。
 フェリシモは年一回、相見積もりを取って宅配業 者を選定するが、決定に当たっては地域に根ざした ?地域一番店?であることを重視している。
地域の事 情に精通し、住人とのコミュニケーションも取り易い ため、配送がスムーズに進むという判断だ。
 現在の起用業者はケイヒン配送、カトーレック、姫 路合同貨物自動車など六〜七社。
そうした業者がカ バーできないエリアでは全国区の佐川急便と日本郵便 を利用する。
 ウェブ上での貨物追跡体制を整備している業者で あれば、システムを改修するだけで済む。
しかし、そ うでない協力会社もあるので、全国展開できない状 況だ。
協力会社には情報システムと現場の体制整備 を働きかけているが、今後は相見積もりの条件の一 つに入れることも検討したいという。
 アイテム違いや数量違いなどの誤出荷も顧客から のクレームに基づいて管理しているが、現在の誤出荷 率は数万件に一件あるかないかの精度。
出荷精度が 飛躍的に向上したのは、エスパスフェリシモの開設と マテハンの導入によるところが大きい。
独自のマテハンシステムを導入  エスパスフェリシモは土地・建物ともに自社所有の 総合施設。
九八年八月に開設した。
それ以前は商品 を在庫する商品センターと二カ所の配送センター、受 注センター、情報センターが大阪府内に分散し、東京 にも配送センターを置いていた。
それをすべてエスパ スフェリシモに集約した。
 集約前の配送センターの作業は人手に頼っていた が、エスパスフェリシモには出荷設備として独自のマ テハンシステム「スカイポーターシステム(SPS)」 を導入した。
一件一件の注文ごとに商品を入れるた めの「スカイポーター」と呼ぶバッグを用意し、天井 に張り巡らせたレールからつり下げ、注文商品のある ピッキングエリア、梱包エリアへと自動で搬送する仕 組みだ。
商品のピッキングは人手で行うが、バーコー ドで管理しているため基本的に誤出荷は発生しない。
 「エスパスフェリシモを建設するに当たっては、お よそ五年をかけて構想を練った。
お客さまによいサー ビスを提供し当社ならではのスピリッツを伝えるため には自前のセンターが必要だと考えた」と武元部長は 当時を振り返る。
 創業以来、コレクション・システムを強みに成長し てきたが、〇七年度に顧客の指定した商品を単品で 販売する「コネクション」を開始した。
コネクション 商品もエスパスフェリシモから出荷しているのは同じ だが、受注後すぐに出荷作業を行うところがコレク ション商品との違いだ。
二一時までに受けた注文の 商品は翌日夕方に出荷するため、リードタイムは概ね 三〜四日。
最大でも一〇日という。
 鉄道輸送を行わず大手宅配会社のネットワークを使 えばリードタイムは最短二日になる。
しかし三日とい う数字は決して他社に比べて劣ってはいないことか ら現在の配送網を今後も維持する考えだ。
 コレクションで取り扱うSKU数は五万〜六万、一 方のコネクションのSKUは約二〇〇〇と取扱量の大 部分はコレクションが占めている。
このためエスパス フェリシモ内ではコレクション商品の作業を主に行い、 コネクション商品はその流れの合間に挟み込むという 方法を採っている。
将来的にはコネクションの物量が 増加することも予想されるが、SPSの運用や作業 体制の変更などで対応することを考えている。
?スカイポーターのタグに伝票情報を 紐付け、伝票を投入。
スカイポーター の色はピンク、水色などカラフル ?バーコードを読み取って商品を投入。
誤った商品を投入すればエラー表示が 出る ?伝票投入後、3階と4階 のピッキングエリアに運ば れていく 地下の自動倉庫。
商品はここに保管さ れた後、各ピッキングコーナーに搬送 される。
約5万ケースを保管可能 ?2階で梱包された商品はソーターで 宅配会社ごとに仕分けられ、地域別 にカートラックに積み込まれる エスパスフェリシモ。
マテハンシステムを導 入しているが、商品の投入、箱詰めなどは 人の手で行う。
「最後の要は人」という

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