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MAY 2010 58
物流業の炭素排出量報告ガイドライン
Consignment-Level Carbon Reporting Guidelines
本文書の目的は、物流・運輸業における炭素
排出量報告の一貫性を向上させるための原則、も
しくはガイドラインを提供することにある。 この
ガイドラインは既存の、あるいは今後発表される
製品レベルでの炭素排出量報告基準を補完するこ
とを目的としている。
物流・運輸業の炭素排出量報告ガイドライン
は、次の五つのエリアで構成される。
?適用範囲
?データ基準
?全体の合計
?割当て
?スコープ(範囲)
?適用範囲
1 .1補足
本文書で取り扱われる物流・運輸業界向けガイ
ドラインは、製品ライフサイクルに関する炭素排
出量報告基準を補足することを目的としている。
基準とは、GHG(温室効果ガス)プロトコル※1
の製品ライフサイクルとスコープ3基準(二〇一
〇年末発表予定)※2、ISO(国際標準化機構)
のライフサイクル・アカウンティング(ISO14
040、14044)、さらにはPAS2050
※3といった広く受け入れられている製品レベルの
補足的な報告基準などをいう。
また、当ガイドラインは物流・運輸業界に固有
のオペレーション・プロセスのみに焦点を絞って
おり、その他の一般的な炭素測定・報告の原則に
は言及していない(排出量測定の代表的なサンプ
ルサイズ等)。
1
.2
適
用
事業者は当ガイドラインを利用して、自己証明
もしくはコンプライアンス監査を行うことができ
る。 その際、報告書には算定された排出量の一部
が物流・運輸業界向けガイドラインに則って作成
されたものであることを明記しなければならない。
?データ基準
排出量測定・時間の平均化の決定など、その
他の一般原則は、製品レベルの報告基準にしたが
って作成されなければならない。
?全体の合計
すべての排出量の合計が、事業者自身と外注さ
れた物流/輸送業務から生じる排出量の合計に等
しくなるよう、計算システムは設計されなければ
ならない。
?割当て
4
.1
割当てから控除される限界費用
世界経済フォーラム 2010
(※2)二重計上等を避けるためスコープ(範囲)という概念が導入
されている。 スコープ1は「温室効果ガスの直接排出」、2は「電気
の使用に伴う温室効果ガスの間接排出」、3が「その他の温室効果ガ
スの間接排出」。
(※3)英国規格協会が定めている、製品・サービスのライフサイクル
における「カーボンフットプリント」の算定に関する規格。
(※1)GHG(温室効果ガス)プロトコル──環境NGO「世界資
源研究所」と世界の諸事業者一七〇社から成る「持続可能な発展の
ための世界経済人会議」がまとめた、事業者の温室効果ガス排出量
の算定と報告のための基準。
世界経済フォーラム(通称ダボス会議で知られるジュネー
ブに本部を置く非営利財団)の物流・運輸産業グループは、
アクセンチュアと共同で物流・運輸業における炭素排出量を
算定するための標準ガイドラインを発表した。 アクセンチュ
アの許可を得てその全文を訳出する。
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すべての貨物は物的特性とプロセスをベースに
して取り扱われなければならない。 ただし復路の
割当てについては、後記4 . 4で定めるとおりに
経済的価値が考慮される。
4
.2
割当ての基礎となる輸送量
貨物の排出量は、その物流/輸送業務で利用し
た輸送モードによって区分される。 実態をより正
確に反映する輸送量の単位が特別に定義されてい
ない限り、輸送量の単位は表1の通り規定される。
原材料輸送は容器を利用しない輸送として定義
される。 また、本社機能からの排出は無視しうる
ほどの量であり、それを目的とした割当単位は定
められていない。
4
.3
輸送路の特性
4
.3
.1
定期輸送ルート
定期輸送ルート(長距離海上・航空・陸上な
ど)の場合、そのルートの平均排出量を、輸送量
の単位に基づいて貨物量で割る。
4
.3
.2
変動の大きいローカルな輸送ルート
変動の大きいローカルな輸送ルート(都市部の
ピックアップやデリバリーなど)の場合、ローカ
ル・ネットワーク内の排出量の合計を、輸送量の
単位に基づいて貨物量で割る。 地域によるバラツ
キがそれほど大きくない場合、広域ネットワーク
の平均値は妥当性をもつ。
4
.4
復路の割当
定期輸送ルート(長距離海上・航空・陸上な
ど)の各区間の経済的価値に大きな違い(たとえ
ば五〇%以上)がある場合、各区間の排出量は全
体の合計を相対的な経済価値に基づいて配分する。
?スコープ(範囲)
燃料の燃焼による直接排出(GHGプロトコル
スコープ1)と電力の使用に伴う温室効果ガス
の間接排出(GHGプロトコル スコープ2)を
報告に含めなければならない。
5
.1
協力会社による物流/輸送業務
協力会社による物流・輸送業務を報告に含めな
ければならない。
事業者はガイドラインにしたがって、協力会社
から貨物の排出量データを得るよう努めなければ
ならない。 それが不可能な場合は、二次的なデー
タを基に排出量を推定しなければならない。
5
.2
その他の間接的活動
従うべき炭素報告基準が、物流・輸送業務で
利用される物品に関する広範囲なライフサイクル
活動からの排出量を含めることまで求めている場
合には、少なくとも次に挙げる潜在的な排出源を
評価し、もし顕著であれば報告に含めなければな
らない。 その場合、可能であれば信用できるソー
ス(環境省やエネルギー省など)が発表する排出
基準を利用する。
●燃料や電力の生産に伴う排出=油田等からタン
ク、あるいは発電所までの間に発生する排出量
(採収、輸送、可燃物の加工・配送)
●川上、川下の物流・運輸業務のプロセスで使
用・廃棄される梱包材と、燃料以外の主な消耗
品から発生する排出量(梱包材の生産と廃棄な
ど)。
オペレーション推奨割当
単位
その他の主な
割当単位
海上輸送
長距離陸上輸送
鉄道輸送
航空輸送
(ベリーカーゴ※を含む)
梱包/ソーティング
/保管
ローカル・デリバリー/
ピックアップ輸送
※旅客便に搭載する貨物
トンキロ
(原材料)
m3/ km
(物品)
m3/ km
(物品)
寸法重量
寸法重量
貨物の数
貨物の数or
寸法重量
トンキロ
(原材料)
トンキロ
トンキロ
トンキロ
m3/時
表1 オペレーション別割当単位
物流業の炭素排出量報告(実例)
サービス内容
サービス内容
報告基準
●ソウルの顧客倉庫からサンフラ
ンシスコの倉庫まで1 万品目の
輸送
●炭素排出量報告に含むべき諸
活動:複合輸送、海上輸送、
再梱包、サンフランシスコの倉
庫への陸上輸送
報告パラメーター
報告パラメーター
計算方法1 年の平均
2.85kg CO2 e/ 貨物
直接18,500kg CO2 e
間接10,000kg CO2 e
GHG プロトコル─製品およびサプライチェーン・プロトコル完全に準拠すること
完全に準拠すること
関連する
間接的活動
協力会社
からの排出
上流の燃料からの排出
梱包に関連する
ライフサイクル炭素排出
計算に二次的データの
利用を含む
物流・運輸業界向け報告ガイドライン
表2 炭素排出の情報をロジスティクス/輸送プロバイダーと荷主やエ
ンドユーザーのあいだでやりとりをするのに役立つ、簡単な報告フォーム
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