ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2010年6号
ケース
コープネット事業連合 拠点再編

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

八つの生協の物流システムを統合  コープネット事業連合(以下、コープネッ ト)は、関東甲信越の地域生協が商品の共同 開発や共同仕入れ、物流施設の共同利用を進 めるために設立した連合会で、一都七県の八 つの生協が加盟している。
八生協を合わせた 事業規模は、組合員数が三五四万九〇〇〇 人、総事業高が四九八七億円(二〇〇八年度 実績)で、売上高のおよそ七割を宅配事業が 占めている。
 昨年六月、コープネットは約一〇〇億円を 投じて千葉県印西市の松崎工業団地内に国内 最大級の冷凍品物流センター「印西冷凍セン ター」を稼働させた。
敷地面積三万二〇〇〇 平方メートル、建物は三階建てで延べ床面積 が三万一〇〇〇平方メートルある。
会員生協 の宅配事業向けに冷凍品のピッキング・出荷 を行っている。
 生協の宅配事業は組合員が個人またはグル ープで注文した商品を毎週同じ曜日に配達す るというサービスだ。
配達時にドライバーが 翌週配達分の注文書を回収して次回の注文分 のカタログを配布する。
 コープネットグループの八生協では、宅配 事業を「コープデリ宅配」の統一ブランドで 展開している。
商品案内の媒体もグループで 「ハピ・デリ!」に統一している。
事業の運 営にあたってはコープネットが商品の企画・ 開発、情報・物流システムの構築などのチェ ーン本部機能を担い、媒体の製作や物流、請 求などの基幹業務を会員生協から受託する形 をとっている。
 「ハピ・デリ!」には日配品をはじめ生鮮 三品、米麺類、冷凍食品、パン、デザート、 飲料などの食品を中心に生活用品や衣料品な どあわせて二五〇〇近い品目を掲載している。
 コープネットではこれらの商品を大きく? 冷凍・冷蔵品(要冷品)、?グロサリーなどの 常温品、?青果物の三つのカテゴリーに分け、 それぞれ物流体制を整備している。
仕入先か ら調達した商品をカテゴリー別に設けた物流 センターに保管し、組合員のオーダーごとに 仕分けて各地域の宅配センターへ配達日の朝 までに配送する(図1)。
 かつては会員生協が独自に物流センターを 設け、別々の仕組みで運営していたが、グル ープ一体で物流を運営する方が効率的との判 断から、コープネットが施設を譲り受けて会 員からセンター業務を受託する形へ段階的に 切り替えてきた。
 〇八年にコープデリ宅配事業の基幹システ ムを統合し、受注処理や請求のシステムが一 つになった。
このときに物流システムの統合 も行い、物流センターの運営をすべてコープ ネットに移管した。
 これによって商品の調達、仕分け、宅配セ ンターへの配送までの物流業務がコープネッ トに一元化された。
一方、会員生協は宅配セ ンターの運営や組合員への配達業務を担当す  コープネット事業連合は昨年6月、総額100億円を 投じて千葉県印西市に宅配事業向けの冷凍品専用セ ンターを稼働させた。
立体自動倉庫をはじめ最新の ピッキングシステムや自動補充装置、積付けロボッ トなどを導入した先端拠点だ。
加盟生協の物流を同 センターに集約し、コスト削減と品質強化を図る。
拠点再編 コープネット事業連合 100億円投じて冷凍品専用センターを建設 加盟生協の物流を集約して宅配事業強化 41  JUNE 2010 る。
この役割分担を明確にしたうえで、コー プネットグループとして宅配事業の冷凍・冷 蔵品、および常温品カテゴリーで物流拠点の 再編に乗り出した。
日本生協連のDCを併設  組合員の継続利用を促すための新サービス や商品政策によって「ハピ・デリ!」に掲載 される商品数は近年増加する傾向にある。
品 目数の増加は物流コスト増を招きやすい。
こ れを避けるため物流拠点の再編によって、ロ ーコストオペレーションをもう一段進める必要 があった。
 また新センターの建設には、冷凍・冷蔵品 の品温管理を強化する狙いもあった。
従来は 二つの温度帯を「要冷品」のカテゴリーで扱 い、同じ施設内でオペレーションを行ってい た。
共通のピッキングラインを時間帯で分け、 午前中に冷凍品、午後から冷蔵品の作業を行 うのが一般的な運用形態だった。
 しかし、この運用形態では冷凍品をマイナ ス一八〜二〇度の温度帯で全工程を厳密に管 理するのは難しい。
そこで冷凍品専用の物流 センターを設けて二つの温度帯を分け、新設 する物流センターに集約することにした。
 この再編の柱となるのが印西冷凍センター だ。
さいたまコープ、ちばコープ、いばらき コープの三生協の冷凍品のピッキング・出荷 業務を同センターに移管した。
グループの冷 凍品の出荷数量全体の五割を集約した格好だ。
これに合わせて既存の七センターのうち二カ 所を冷蔵品専用のセンターに改造し、一カ所 を廃止した。
 印西冷凍センターは、全国組織の日本生活 協同組合連合会(日本生協連)の保管基地 (DC)も併設している。
 コープネットは日本生協連からプライベー トブランド(PB)商品の供給を受けている。
印西冷凍センターで扱う冷凍品の二五%をP Bが占めている。
そのためサプライチェーンの 上流工程となる日本生協連のDCと一体で運 営することによる在庫負担や入出庫・横持ち 輸送の費用削減を狙う。
 コープネットはこれまでも日本生協連と輸 配送網の共同化などを実施してきた。
今回の 取り組みは物流面の連携をさらに強化するも のだ。
その実行部隊となるセンターの管理運 営はコープネットの子会社・協栄流通、オペ レーションは日本生協連の子会社・シーエッ クスカーゴに委託している。
 印西冷凍センターには立体自動倉庫をはじ め最新のピッキングシステムや自動補充装置、 図1 コープデリ宅配物流全体概要 取引先・メーカー 要冷 (冷凍/冷蔵) グロサリー (ドライ/別積み /パン) 青果 (農産/別積み) 外部物流 いばらきコープ とちぎコープ コープぐんま ちばコープ さいたまコープ コープとうきょう コープながの コープにいがた 積み込み 組合員 組合員 組合員 組合員 組合員 組合員 組合員 組合員 会員生協 調達 静脈物流 内部物流 輸配送 お届け 配達配達配達配達配達配達配達配達 コープネット 宅配センター直納 図2 概要フロー コープネット 冷凍集品センター 日本生協連 冷凍DC 取引先商品 会員生協コープデリ 宅配センター 出庫 入庫 配送 棚補充 パレット自動倉庫日本生協連DC 在庫 コープネット在庫 商品 ケース自動倉庫(補充ケース自動仕分け) 印西冷凍センター 集品作業室(集品・詰め合わせ) JUNE 2010  42 積み付けロボットなどを導入し、可能な限り の省人化を図った。
入出庫や搬送をはじめ、 ピッキング棚への補充も完全に自動化し、著 しく温度の低い室内で人が作業を行うのを極 力避けた。
 センターは二四時間稼働で、前日に入荷し た商品をピッキング・出荷し、翌日朝までに 宅配センターへ配送する。
出荷作業は、自動 倉庫からフローラックへの補充、ピッキング、 仕分け、袋閉じ、出荷箱への詰め合わせ、台 車への積み付けという流れだ。
「一点オーダー」専用のピッキング設備  このセンターの最も大きな特徴はピッキン グ方法にある。
コープデリ宅配では、一アイ テムにつき一点だけという注文が極めて多い。
冷凍食品の場合、注文の八割以上が「一点オ ーダー」だ。
 そこで「一点オーダー」に適したオークラ 輸送機製のピッキングシステム「ピカトル1」 を導入した。
ピッキングする個数が一アイテ ムにつき必ず一個であることを前提に考案さ れたシステムで、従来のデジタル表示式ピッ キングシステムのようにピッキングする商品の 間口に数量を表示せず、ランプだけを点灯さ せる。
 作業者はピッキング棚とコンベアの間の通 路に立ち、ピッキング間口の表示器とコンベ アの手前に設けられた仮置きトレーにランプ が点灯するのを交互に確認しながらピッキン  今年の七月からはグロサリーのカテゴリーで も再編がスタートする。
 日本生協連が千葉県野田市に建設するDC に、コープネットのピッキング・出荷基地を 併設し、ちばコープ、いばらきコープ、とち ぎコープ、とうきょうコープの四生協の業務 を集約して(とうきょうコープについては一 部の業務)、日本生協連のDCと連携して運 用する。
 グロサリー部門では埼玉県桶川市内の既 存のセンターでも先行して集約を進めており、 野田の新センターの稼働によりグロサリー全体 グ作業を行う。
 ランプが点灯した間口から商品を一個 取り出し、通路の向かい側でLEDラン プの点灯しているトレーの上に商品を載せ ていくという単純な作業で、商品を数え る必要がなく、数え間違いによる出荷ミ スを防止できる。
該当するトレーの下で LEDが発光する仕掛けのため、投入ミ スも起こりにくい。
 トレーに載せられた商品はコンベアでオ ーダー別に仕分けられる。
仕分けの済ん だ商品を組合員ごとに袋に入れて包装し、 出荷箱に詰め合わせる。
出荷箱を台車に 積み付ける最終工程にもロボットパレタイ ザーを導入し作業を自動化した。
 ピッキングラインは六ラインある。
印西 冷凍センターで扱う三生協の冷凍品は稼働 当初の二七〇品目からすでに五〇品目ほ ど増えている。
最大で三九六品目まで処理が 可能だ。
増設スペースを設けてあり、将来の 数量増にも対応できる。
 フローズン帯の品温を保つための工夫も随 所に施している。
ピッキングラインに外気が 侵入するのを防ぐため、棚には自動制御によ るエアカーテンを採用した。
ドックシェルター のついた入出荷バースには空調機を設置して、 常時、乾燥した空気を送り込み結露防止に役 立てている。
また地中熱を取得して空調熱源 に利用するなど環境にもさまざまな配慮を行 っている。
ピッキングライン。
ランプの点いた左 ロボットで出荷箱をパレタイズ の間口から1個とって右のトレーへ 容器を標準化してユニットロード化 バースの庇に空調機を設置し結露対策 43  JUNE 2010 れ出荷箱の大型化を行っている。
出荷箱を 専用の台車に段積みしてユニットロード化し、 トラックへの積載率を上げる。
これによって 物流センターと宅配センターの間の配送車両 の台数を削減する。
 出荷箱は組合員へ配達するときの荷姿で、 地域の配達事情によっては大型化の難しいと ころもある。
だが二つのセンター以外の拠点 も含めて、できる限り規格統一を進める考え だ。
 会員生協によって組合員に対する宅配事業 のサービスレベルには違いがある。
例えば常 温品をグループ購入している場合に、グルー プ別に仕分けただけで配達している会員生協 がある一方、個人別まで仕分けている会員生 協もある。
 会員生協はそれぞれが独立した事業体で、 経営状況も異なる。
そのためサービスレベル については個々の会員生協に委ねられている。
これに対応してセンターではサービス内容に より料金設定を変え、いずれのオペレーショ ンにも対応する体制をとっている。
 冷凍品の印西冷凍センターに続き、野田の グローサリーセンターが稼働すれば、コープネ ットの宅配事業部門の物流再編は一段落する。
コープデリ宅配事業本部の下野司物流担当部 長は「組合員から支持されるには、品揃えと ともに価格が重要な要素になる。
センターの オペレーションをさらに効率化してグループの 機能集約の効果を上げ、低価格で商品を供給 できるよう貢献していきたい」と強調する。
 コスト削減策の一つとして組合員への配達 時の保冷方法の見直しも検討している。
物流 センターから宅配センターまでは温度帯別に 別々の車両で配送するが、宅配センターから 組合員へは一台の車両に三温度帯の商品を積 み合わせて配送する。
品温を保つため冷凍品 の出荷箱にドライアイスを大量に使用してお り、年間に二〇億円もの費用をかけている。
これを削減するため、低コストで保冷効果の 高い冷凍品用の蓄冷剤の研究を進める。
 また媒体作成の際の紙の使用量も減らす。
会員生協の拡販キャンペーンなどの情報を収 集して媒体の発行部数を適正化していく。
〇 三年から開始しているインターネット受注に も力を入れる。
 コープネットグループの宅配センターは一都 七県に一二三カ所ある。
配達車両の数は八生 協合わせて三〇〇〇台に上る。
宅配センター の配置は原則として会員生協が決め、運営形 態も会員によりまちまちだ。
コスト削減を進 めるには組合員への配達まで含めてトータル で考える必要がある。
 だが末端の販売物流については再編などの 方向性をグループとして打ち出してはいない。
下野部長は「効率を優先して組合員の利便性 が損なわれれば本末転倒になる。
川上部分を なるべく共同化してコストを吸収できるよう 知恵を絞るのが先決だ」と割り切っている。
(フリージャーナリスト・内田三知代)

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