ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2010年7号
特集
物流現場の作り方 第1部 強い荷主、儲かる物流業の発想法

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

特集 投資しないと生き残れない  総合物流機器メーカー、ダイフクの二〇一〇年 三月期の連結売上高は一五四二億円で前期の二四 二二億円から三六・三%も減少した。
トヨタショ ックで〇八年後半に主力の自動車産業が設備投資 を急停止させた影響が、世間よりも一年遅れて業 績に表れた。
同様に世界同時不況の直撃を受けた エレクトロニクス業界向けも急落した。
 しかし内需型の大手メーカーや流通業界向けの 物流システム販売は、依然として高い水準にある。
中小型の案件が停滞しているのとは裏腹に、投資 額が数十億円から一〇〇億円を超える規模の大型 案件が堅調に推移している。
 不況は国内も同じだが、生活必需品の荷動きが 止まるわけではない。
物量は安定している。
ただ し、デフレによる商品単価の下落が、売上高物流 コスト比率を押し上げている。
物量を減らした企 業はコスト比率の上昇が一段と激しい。
物流コスト による収益力の違いが鮮明になっている。
 そして、ダイフクの宮下知治物流システム部第3 グループグループ長部長代理は「流通業界では各分 野とも大手数社への集約が進み、生き残った勝ち 組はどこも、今こそチャンスだと判断して積極的 に物流投資に動いている。
ベンダーの我々から見 ても、今なら良い設備が安い値段で手に入る」と いう。
その結果として物流の企業間格差が今後い っそう拡大する。
それがさらに市場の淘汰を押し 進めていくことになる。
 物流業界も同様だ。
物流不動産相場の低迷を買 い時と判断し、拠点の増設に踏み切る企業が、有 力大手のみならず、地域密着型の中堅にも目立っ JULY 2010  14 強い荷主、儲かる物流業の発想法  世界的な設備投資の冷え込みをよそに、国内の大規 模流通センターの新設需要は堅調に推移している。
不況 をシェア拡大のチャンスととらえ、勝ち組企業が攻勢を いっそう強めている。
物流市場の明暗もはっきりしてき た。
コスト競争力に自信を持つ物流会社はリスクをとっ て先行投資に乗り出している。
     (大矢昌浩) 第1部 てきた。
 東京・東大和市に本社を置く東京システム運輸も その一つだ。
ここ数年、三〇〇〇坪〜五〇〇〇坪 のセンターを毎年二カ所ペースで増設している。
同 社の細川廣承社長は「どの拠点も荷主の決まって いない先行投資だ。
もちろんリスクはあるが、施 設を埋める自信はある」という。
 同社のグループ年商は現在約一二〇億円。
この 二年は既存荷主の物量減少で売上高は頭打ちとな っているが、収益は安定している。
一九六七年の 創業以来、赤字は一度も出していない。
危機は何 度も訪れたが、環境変化を先取りすることで乗り 越え、順調に業績を伸ばしてきた。
 創業当初は地元・多摩地区の工場で生産された 製品の輸出梱包をメーンにしていた。
しかしその 後、生産拠点の海外シフトが進み、地盤とする営 業エリアが工業地帯からベッドタウンに変わってい ったことを受け、建設資材の共同配送やチェーン ストア向けの川下物流にドメインを移した。
 建設資材は長尺モノや無梱包商品が多く、また 建設現場ごとに納品条件の指定があり、宅配便や 路線便が利用できない。
そのため自社便か専用便 が仕立てられていた。
しかし、荷主には固定費を 変動費化したいというニーズがあるはずだと、大手 建材メーカーに個建ての配送を提案。
それをベース カーゴに同じ建設現場に納品している他メーカーの 荷物を次々に取り込んで積載効率を高めていった。
 一方、チェーンストア向けの川下物流は、物量の 波動に応じて柔軟に作業員を投入することがカギ になる。
これも特定エリアに汎用拠点を集中展開 することで対応している。
人手の足りない時には 隣接する拠点からパートを応援にやる。
荷主の物 量のベースに変化が生じた場合は、他の荷主との 組み合わせを調整してスペースのムダを回避すると いった単独拠点にはない優位性がある。
 細川社長は「エリアを集中し密度を高めていくこ とが、当社のような独立系中小の生き残りの手段と 考えている。
これまで海外も含めエリア外への拠点 進出を大手荷主から誘われることもあったが、すべ て断ってきた。
仕事 はもらえても、それ では荷主におんぶに 抱っこになってしま う。
当社の強みが活 かせない」という。
 同社の堅実な業 績と首都圏西部のネットワークに目を付け、買収を 打診してくる物流会社や投資ファンドも珍しくな いが、大手の傘下に入るつもりはない。
昨年春に 若手の幹部候補社員一〇人を選抜してプロジェク トチームを組織し、将来ビジョンと長期経営計画を 策定した。
いつでも株式公開できる状態にしてお くことを当面の財務的な目標に置き、今後も経営 の独立を堅持していく方針だ。
マテハン投資の最適解を探る  現在、同社のような年商一〇〇億円クラスの地 域密着型の3PLが全国各地で台頭し、積極的な 拠点投資を行っている。
ただし、その施設にはマ テハン設備がほとんど入っていない。
確実に導入 効果が得られるケースでも、3PLはマテハン投資 による固定費の増加を避ける傾向にある。
それだ け作業精度や生産性が犠牲になっている。
 一方、荷主企業の先進施設には自動化機器がふ んだんに導入され、世界にも例を見ない驚異的な 物流精度が実現されている。
しかし、こちらは過 剰品質に陥っている可能性がある。
巨額のマテハ ン投資が、ミスの発生による損失回避と見合って いるのか疑わしい。
 マテハン投資の最適解は果たしてどこにあるの か。
本誌は前号の特集「物流生産性調査二〇一〇」 で、生産性の高い上位二〇%の拠点と下位八〇% では、現場のスペックや管理手法にどのような違 いがあるのかを分析した。
同調査は各拠点のマテ ハン設備についてもアンケートしている。
本特集で はその結果と生産性上位二〇%に入った拠点の現 地取材および識者の見解を元にして、良い現場の 条件をマテハン設備の視点から探っていく。
15  JULY 2010 東京システム運輸の 細川廣承社長 5,000 4,500 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 自動倉庫 台車系 コンベヤ系 仕分け・ ピッキング 回転棚 移動棚 棚 パレタイザ/ デパレタイザ 垂直搬送機 ボックスパレット・ ロールボックス パレット コンピュータ その他 日本ロジスティクスシステム協会調べ 物流システム機器生産出荷統計 総売上金額の推移 04 年度05 年度06 年度07 年度08 年度 2,680 4,106 4,529 4,481 3,896 (億円)

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