ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年12号
大学院体験記
私たちが大学院に通うワケ

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

DECEMBER 2005 40 私たちが大学院に通うワケ MBA(Master of Business Administration) =経営学修士 米国と日本のロジスティクス大学院に通う20代の女性2人に 出会いました。
ロジスティクス分野でのキャリアアップを目指 している彼女たちは現在、どのようなキャンパスライフを送って いるのでしょうか。
そもそも彼女たちがロジスティクスに興味を 持つようになったきっかけとは何だったのでしょうか。
2人のメ ールのやり取りを少しだけ覗かせてもらうことにしました。
(本誌編集部) 突然ですが…… ユキちゃん、お久しぶり。
元気にしていますか? 突然だけ ど、日本の会社を退社し、今年9月からアメリカの大学院に通 っているの。
以前に通っていたオハイオ州立大学(Ohio State University=OSU)の大学院で、「ビジネスロジスティクス工学 修士課程」(Master in Business Logistics Engineering= MBLE)に籍を置いているんだ。
ビックリしたよ。
入学おめでとう。
しばらく音沙汰がないと 思っていたら、アメリカに渡っていたんだね。
OSUといえば、ミ シガン州立大学などとともに、ロジスティクス教育に力を入れ ている大学として有名だよね。
さすがに詳しいね。
「U.S. News」という雑誌の2006年度用 MBA大学院ランキングでは、「サプライチェーンおよびロジステ ィクス」という分野において第1位がマサチューセッツ工科大 学大学院(MIT)、2位はミシガン州立大学大学院(MSU)、3 位がOSUという結果になっていて、ロジスティクス教育に力を 入れているのは確かだよ。
ところで、どうしてロジスティクスの大学院、しかもアメリ カの大学院に通うことにしたの? 実は、大学の先生になりたいの。
OSUの学部在学中に、日本 人学校の中等部、高等部で社会科を教えた経験から、教育に興 味を持つようになったんだ。
ロジスティクスを選んだのは、ロジ 第1 回 オハイオ州立大学フィッシャーカレッ ジ・オブ・ビジネスのキャンパス Sawako Sawako Sawako Yuki Yuki 41 DECEMBER 2005 スティクス教育が日本でもポテンシャルのある分野になりつつ あるからかな。
大学の先生? アメリカのロジスティクス大学院で修士号を 取り、しかも日本の大学で教壇に立っている女性となると、こ れまでに前例がないのでは? すごいね。
頑張ってね。
ありがとう。
ところで、ユキちゃんは? たしかこの春から 社会人大学院である多摩大学大学院のロジスティクスコースに 通っていたよね。
私の場合はアメリカでの駐在経験が大学院に通うきっかけに なったの。
アメリカのロジスティクス先進国としてのロジスティ クスのあり方や、CSCMPのような産学連携、ベンチマークの 充実ぶりに衝撃を受けて、日本でのロジスティクスの実務と学 問の連携を考えてみたくなったの。
さわちゃんは、日本の大学を卒業した後、百貨店に勤めてい たけど、アメリカの、しかもロジスティクスに興味を持ったきっ かけは? 百貨店での販売活動を通じて、モノやサービスに付随するマ ーケティングや、顧客が選ぶ、選ばないという基準をどのよう に設定しているのかということに興味を持ったんだ。
日本の大 学からアメリカの大学に編入したのは、アメリカのリテイラー の業態などについて学びたいと思ったから。
つまり、最初に渡米した際にはロジスティクスを勉強しよう としていたわけではないんだね。
うん。
マーケティングリサーチなどの科学的手法は共通でも、 例えば陳列方法などは文化に根ざすものであり、全体としての プリンシプルを日本に持ち帰るのは難しいな、と思っていたと ころで、ロジスティクスに出会ったんだ。
授業でディストリビ ューションの講義があり、これが私のロジスティクスへの興味 のスタート。
ロジスティクス発祥の地で、輸送や需要予測分析 などが体系化された学問に新鮮さを感じたの。
また、日本の生 産管理手法がロジスティクスの一部として講義された際には、 異国の地で平準化や、カンバン方式などを勉強するのもおもし ろいと純粋に惹かれたの。
マーケティングからロジスティクスへ興味がシフトしたんだね。
CSCMP(Council of Supply Chain Manage ment Professionals)=米国に本部を置くサプ ライチェーンおよびロジスティクスの研究団体。
2005年にCLM( Council of Logistics Management)から改称した MBLEコースの授業の様子 Yuki Yuki Yuki Yuki Sawako Sawako Sawako DECEMBER 2005 42 ユキちゃんは大学卒業後、日本通運に入社したわけだけど、 最初からロジスティクスに興味があったの? 私は、世界の様々な国とやりとりのできる貿易の仕事に興味を もったのがきっかけ。
小、中学生の時に5年間、父親の仕事の関 係でイギリスにいたことも、世界の色々な国に興味を持つように なった背景の1つかな。
輸出入からロジスティクスに範囲に広が ったのは、入社して様々な企業の物流をみて、マーケティングに も繋がっているロジスティクスの面白さを知ってから。
SCMの範 囲は広いので、まだまだ知らないことがたくさんあるよ。
高校時代の同級生である私たち2人が、まさか同じようにロ ジスティクスに興味を持つとは思ってもみなかったよね。
本当にその通りだね。
そして2人とも同じ分野で大学院に通 っているなんてびっくりだよ。
ロジスティクス工学という分野 も、日本にはない、興味深い新設学部だね。
カリキュラムの相違点 MBLEというコースは初耳だよ。
MBLEは、経営学修士であ るMBAとは何が違うの? MBLEを一言でいうならば、「マネジメントとしてのロジステ ィクスと、手法である工学の融合を可能にした学位」といった ところかな。
もう少し簡単に言うと、ビジネススクールとエン ジニアリングスクールが合体したようなもの。
MBLEは今年新 設されたコースで、私はその1期生なんだ。
MBLEというと、MBAの一種と思うかもしれないけれど、BA (Business Administration)の中のL(Logistics)に特化し、 E(Engineering)とうまくブレンドさせるという点で、MBA とは厳密に言えば異なっている。
実際、MBLEは、MBAでは通 常2年のうち、1年ほどかけて行われるビジネスコアコースの 履修(ファイナンス、アカウンティング、HR、マーケティング など)を最小限にとどめ、ロジスティクスコースをより多くコ アコース(必修科目)に組み込んでいる。
さらにエンジニアリ ングからの数理的アプローチを融合させている点においても、 MBAとは異なっている。
ここまで専門性の高い大学院は、全米 の総合大学では珍しいアプローチのようだよ。
それは楽しみだね。
多摩大学大学院の品川校舎(品川インター シティ内) MBLEのホームページ http://fisher.osu.edu/ Sawako Sawako Sawako Yuki Yuki Yuki Yuki 43 DECEMBER 2005 MBLEではOSUのMBAプログラムの良い点をバランスよくミ ックスさせて、専門性に特化した即戦力のある生徒を育成する ことが可能であるという強みがある。
実際にクラスの構成を見 てみると、MBAやエンジニアリングの大学院プログラムなど、 他プログラムで既に存在するクラスと、独自に新設されるクラ スの双方が、MBLEの必修科目として用意されているようだね。
クラス構成の詳細については授業が本格的にスタートしてから 再び紹介するね。
日本のロジスティクス大学院、例えばユキちゃんが通ってい る多摩大学大学院のカリキュラムはどんな感じなの? まず多摩大学大学院は社会人のための大学院なので、アメリ カで言う大学や大学院とはだいぶ違う。
平日は品川校舎(品川 インターシティ内)、土曜は多摩校舎で授業が行われ、スタート は午後6時半。
私が入学したのは、経営情報学研究課修士課程 (MBA)の中のロジスティクス(CLO)コース。
日本の会社は忙しいため、社会人学生たちは時間調整にとて も苦労している。
忙しい合間を縫って授業に顔を出すくらいだ から、各学生ともモチベーションはとても高いよ。
学生の平均 年齢は37歳くらいみたい。
客員教授や講師として招かれているロジスティクスの実務家 たちが授業を担当している点も特徴の1つ。
ゲストスピーチも たくさんある。
企業で実際に起きていることや、現場の生の声 や、経営という視点でみた話を聞くことができるため、話がと てもリアルで、参考になるよ。
授業はどのように進んでいくの? ディベートが中心。
学生たちは自分が所属している組織の中 で抱えている問題などを出し合って、それについてプレゼンテ ーションしたり、議論を重ねたりしている。
様々な業界から学 生が集まっているから、色々な意見が聞ける。
授業は異業種交 流会といった雰囲気がある。
もちろん、毎週の授業で課題の本 が1冊、2冊アサインされることもある。
授業の様子などはこれ から少しずつ紹介していくね。
(以下、次号に続く) CLOコースではディベートを中心とした 授業が展開されている 日本の大学に在学中、米国ワシントン州ゴンザガ 大学、中国北京大学に短期留学。
大学卒業後、日 本通運に入社。
通関士を取得。
米国・サンフラン シスコ支店で1年間研修。
帰国後、メーカー物流 に携わる傍ら、今年4月、多摩大学大学院経営情 報学修士課程ロジスティクスコースに入学。
小林由季(こばやし・ゆき) オハイオ州立大学マーケティング・ロジスティクス 専攻を卒業後、OTEC, Inc. (米国)、フレームワ ークス(日本)で働いた経験を持つ。
フレームワー クスでは、新工場・倉庫建設プロジェクトにかかわ った。
今年9月、オハイオ州立大学大学院ビジネス 工学修士課程に入学。
岩田佐和子(いわた・さわこ) Sawako Sawako Yuki Yuki

購読案内広告案内