ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2011年3号
特集
共同物流の手引き第1部 事例に学ぶ成功のポイント解説1 コーディネーターが成否を握る

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2011  16 事例に学ぶ成功のポイント (文責= 本誌編集部、編集協力= 日本通運 プリンター業界で国内シェアを二分するエプソン販売とキヤノンマーケティ ングジャパン(キヤノンMJ)が本格的な共同物流を軌道に乗せている。
日 本通運がそのオペレーションを担当し、日通総合研究所がコンサルタントとし てプロジェクトの推進を支援している。
2008 年12月のプロジェクト開始から 今日まで、積み上げてきた運用資料は既に1000頁を超えている。
 日通総研で同案件を担当する井上浩志経営コンサルティング部主任コンサ ルタントは「ここまで体系だって物流共同化に取り組み、かつ成功させた事 例はそう多くはないはずだ。
少なくとも我々は、この取り組みから多くの知見 とノウハウを得ることができた」という。
同プロジェクトに参画した各社の協 力を得て、そのエッセンスを本特集で紹介する。
(文責= 本誌編集部、編集協力= 日通総合研究所) 第1部 最初に目的を明確にする  共同物流の直接的なメリットとして、日通総研 では?物流コスト削減、?環境への貢献(CO2削 減)、?企業イメージの三つを挙げている。
副次的 なメリットも少なくない。
共同物流の導入に伴い、 品質やサービスの強化、運賃の変動費化、ビジネス ネットワークの広がり、他社ノウハウの取り込み、 新しい改善施策の開発などの効果が期待できる。
 しかし、共同物流を軌道に乗せ、長期間運営を 継続しているケースは稀だ。
これまで多くの取り組 みが“総論賛成・各論反対”の壁に阻まれ、日の 目を見ることなく頓挫してきた。
いったんは実現 した取り組みも環境の変化によって継続を断念せ ざるを得なくなることが多い。
 共同物流で何を得ようとしているのか。
目的は 何なのか。
それを最初に明確にしておくことが取 り組みを成功に導く最初のポイントになる。
目的 が明確であれば、それを達成するために何が必要 か、どのようなステップを踏むべきかが見えてく る。
優先順位が定まり致命的な判断ミスを避けら れる。
物流パートナーの選択基準も明確になる。
 共同物流には信頼できるコーディネーターが必要 だ。
競合関係にある荷主企業同士の直接交渉では ?各論反対?を乗り切ることは難しい。
それが物流 事業者であれ、物流コンサルタントであれ、第三者 的な立場から取り組み全体を調整する推進役なく しては成功は覚束ない。
逆に信頼できるコーディネ ーターを見つけ出すことができれば、成功の確率 は格段に高まる。
 ここでいう“信頼”とは何か。
「提案力、分析 力、調整力、推進力など、コーディネーターには多 解説1 コーディネーターが成否を握る 17  MARCH 2011 特 集 くの能力が求められるが、最も大切なのはやはり “真摯”であることに尽きる。
抽象的に聞こえるか も知れないが、すべてに対して真摯な姿勢で取り 組むことが信頼の基礎となる。
それが我々が経験 から学んだ教訓の一つだ」と日通総研の井上主任 コンサルタントはいう。
 具体策の検討段階においては、荷主はもちろん 物流事業者まで含めた全てのプレーヤーの利益享受 に配慮することが大事になってくる。
 それでもプレーヤーの利益が相反する場面はどう しても出てくる。
そこで枝葉末節にこだわり過ぎ るプレーヤーが一人でも出てくると全体がストップ してしまう。
問題に直面した場合には最初に明確 化した目的に立ち戻り、各プレーヤーが大局的な見 地から判断を下すことが求められる。
プロジェクト管理の留意点  プロジェクトの推進はコーディネーターが主導し、 荷主はそれを支援する体制をとるのが有効だ。
た だし、コーディネーターに丸投げは出来ない。
新た な共配候補先の開拓や運用課題の洗い出しなどに は、荷主の関与が不可欠だ。
コーディネーターから 報告を受けるだけでなく、荷主自らも改善を進め ていくことで効果は大きく違ってくる。
 一方、共同物流を事業として運営する物流事業 者もしくはコンサルティング企業側では、コーディ ネーターとして荷主からの信頼を得られるかどうか が成功ポイントになる。
コーディネーターに必要な 提案力や分析力などの能力は短期間に構築できる ものではない。
日々の鍛錬の積み重ねが必要であ り、やはり人材育成がカギを握る。
 コーディネーターは共同物流に参加するプレーヤ ーで唯一の中立的存在であり、プロジェクトの中心 に立って、客観的かつ公平に全体をコントロールし て判断を下す。
 コスト削減だけでなく、共同化を通じた品質面 での貢献もコーディネーターは強く意識する必要が ある。
共配は特殊な納品条件にも対応できる反面、 受け渡し時に他社製品と間違ってしまうといった 特有のミスが発生する恐れもある。
実施に当たっ ては納品条件の確実な引き継ぎはもちろん、コー ディネーターが自らドライバーに同行して各現場の 実態を把握しておくことが望ましい。
台車が足り ない、バースが狭いといった納品先ごとの問題を 見過ごしたままルートを組めば、顧客に対する納 品時間を順守できなくなる。
 本稼働後も荷主のメリットを常に念頭において、 共同化の範囲や対象の拡大を追求していかなくて はならない。
基本的に荷主は物流費の変動費化を 求めている。
変動費化が実現すれば荷主は売上高 に対する物流費比率でコストを管理することが可 能になる。
しかし、何の準備もないまま物流事業 者が変動費化を受け入れてしまえば、物量変動の リスクを自分で背負い込むことになり、事業とし て立ち行かなくなる。
 物流事業者が荷主の要請に応え、かつ物量変動 のリスクを抑制するには、共配に参加する荷主を増 やしていくと同時に、その日の各ルートの物量に応 じて使用する車両のサイズを柔軟に変更できるよう にするといったやり方でオペレーションの自由度を 高めていくことが必要になる。
主な共同化プロセスと期待効果 共同化プロセスパターン主な困り事(荷主) 期待効果パートナーとして望ましい条件 共同配送 共同輸送 共同DC 共同TC 保管・荷役輸配送 共同輸送 【往復】 物流拠点間 【往復】 (工場も含む) 特殊要件 幹線 特定エリア ─ ─ 物流拠点間 (工場も含む) 特殊な付帯作業や夜間・早朝またはピン ポイントの時間指定等があり、やむを得ず 貸切便を仕立てている。
現行の路線便のリードタイムを短縮したい が、貸切だとコストが高い。
リードタイムの 都合上やむを得ず幹線便を仕立てている。
簡易な付帯作業があり専用便を仕立てて いる。
専用便、または、宅配や路線の運 賃を削減したい。
日別波動で低積載となる日が多い。
小ロッ ト生産や輸送により常時低積載または小 型車両での輸送となっている。
帰り荷が確保できていない。
海上コンテナ やJRコンテナ(31ft)の空輸送が発生して いる。
波動による保管ロスが生じている。
日々や 時間帯の波動による荷役ロスが生じてい る。
TC拠点費を負担するほどの余力がないた め、遠方地への貸切輸送は全て直送となっ ている。
同一納品先、同一納品条件 ※小口の場合は、同一の特 定エリア内の配送先 自社と同一方向の輸送ルート かつ近隣の発着地 自社と同一方向の輸送ルート かつ近隣の発着地 自社の輸送ルートと逆の輸送 ルートかつ近隣の発着地 貸切運賃負担の軽減 リードタイムの短縮 (倉庫出庫時間の後ろ倒し) 貸切運賃負担の軽減 年間の在庫量が逆波動 類似した荷役作業内容 同一の特定エリア内の配送先 同一納品先、同一納品条件 簡易な付帯作業の対応 宅配、路線運賃の削減 貸切運賃負担の軽減 貸切運賃負担の軽減 JR 運賃・ドレージ費用の軽減 保管費用の軽減 荷役費用の軽減 輸送費用の軽減 日通総合研究所の井上浩志 主任コンサルタント

購読案内広告案内