ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年12号
特集
欧米先進事例の真実 伊・電力機器メーカーのAPS導入事例

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DECEMBER 2005 28 BTicino社のサプライチェーン フランスの大手電気メーカー、ルグラン・グル ープに属するイタリアのBTicinoは、低圧 機器の分野においてヨーロッパを代表するメーカ ーだ。
低圧制御装置、安全装置、配電盤などを生 産しており、イタリア国内六カ所に高い技術を誇 る生産ラインを持つ( 図1)。
従業員は五四〇〇人(うち二一〇〇人はイタリ ア国外)で、イタリアだけでなく中東、南米、ア フリカ、ヨーロッパでも自社のネットワークを通 じて製品を販売している。
また、ルグランのブラ ンド名を冠する製品の販売については、ルグラン・ グループの流通網を利用している。
BTicinoは、同社とルグランのDRP(物 流所要量計画)システムおよび同社の営業部を通 じて、様々な流通経路から年間二〇〇万件を受注 する( 図2)。
注文はその後、物流センターに集約 される。
■売上高の七五%は卸売業者(複数の仲介業者を 含む)への販売によるものである。
製品の供給 量は卸売業者とBTicinoの営業部それぞれ の商業戦略によって決まる。
■大・中規模販売店(取引先数一五〇店)につい ては、受注量が少なく需要を予測することが難 しいため、卸売業者に比べて優先度の低い市場 である。
また、梱包を担当する下請け業者は一 定量がまとまるのを待って作業を行っていたた め、納期遅れが生じていた。
こうした事情によ り、在庫レベルの把握が困難となっていた。
■ENEL(イタリア電力公社)からは、年間契 約として大口の受注がある。
サプライヤー五〇〇社から直接納入される原材 料は一五〇〇種類。
二万二〇〇〇種に及ぶ完成品 が、流通網を通じて主要顧客七五〇社へと販売さ れる。
これら完成品と三万種に及ぶ部品について、 七万五〇〇〇の生産工程を管理している。
BTicinoでは、サプライチェーン・マネジ メントのために、各分野において最も適した情報 システムを選択する「ベスト・オブ・ブリード」の アプローチを採用した( 図3)。
APSの導入を決めた理由 BTicinoは、一九九七年から九九年にか けて以下の三点に重点を置いた顧客サービス改善 プログラムを実施した。
■完成品専用物流センターの設立■リードタイムの短縮 ■各注文に応じた管理 その結果、イタリア市場における製品の納期は 十一日から五・五日に短縮したが、一方でこれに よって内部処理が複雑になった。
■アイテム数の増加 ■手持ち在庫による注文への対応可能日数の増加 (完成品については三〇日間可能) ■製品の売れ残り率増加 ■卸売業者からの注文の変化 ――卸売業者サイドがストック管理するアイテ ム数の減少 伊・電力機器メーカーのAPS導入事例 イタリアのミラノに本社を置く電力機器メーカーの BTicino社は、APS(Advanced Planning System= 先進的スケジューリング)という手法を使って、これ まで週単位だった部材の在庫管理を1日単位に見直す ことで、在庫の大幅削減に成功した。
本稿では、同社 が従来型の生産計画からAPSへと移行しながら、どの ようにサプライチェーンの最適化を実現しようとして いるのかを紹介する。
(本誌編集部) ■フランチェスカ・コンパニョーニ氏 BTicino社プランニング改善責任者 ■ロベルト・クリッパ氏 BTicino社オペレーション管理責任者 ■パトリック・ジェナン氏 プロコンセイユ社(パリ)と仏国立パリ高等鉱業学校のコン ピュータ支援設計・ロボット工学センター(CAOR)に勤務 ■サミール・ラムーリ氏 機械システム・資材工学研究所(LISMMA)と資材・機械製 造高等学院の産業技術高等研究センター(ISMCM-CESTI)、 仏国立パリ高等鉱業学校のコンピュータ支援設計・ロボット 工学センター(CAOR)に勤務 《欧州レポート》寄稿 29 DECEMBER 2005 ――Bクラス、Cクラスの品目に対するサービス の必然的な高まり ――注文品の一括配達の要請増加 長期的な企業戦略の改善(フローの単純化、「社 内処理」「アウトソーシング」に関する方策の見直 し、モジュール化の規格統一と開発、内部作業の 簡易化など)は短期間で実施することはできない。
しかし、顧客サービスの改善を先送りすることも できないため、まずはサプライチェーン・マネジメ ントのプロジェクトから手を付けた。
プロジェクトは以下の三つのフェーズに区分さ れる。
?社 内:APSへの移行(i2テクノロジー ズ社のソフトウェアの導入:モジュ ールSCP(注1)とFP(注2)) ?調達物流:サプライヤーとの共同管理の推進「C ―logistics」 (Namenポータルの導入) ?販売物流:CPFR(協働生産計画、需要予測 および補充活動) (マニュジスティッ クス社のソフト) の導入準備 プロジェクトは、 この原稿を書いて いる時点で第二フ ェーズに入ったと ころである。
当初、プロジェ クト実施による芳 しい成果は得られず、プランニング時間はこれま での三倍、費用は二倍かかってしまった。
これは、 主に中期用プランニングモジュールであるSCP がシステムとして十分に成熟していなかったことに起因する。
一方、短期用モジュールのFPは十 分な完成度を示していた。
効果的なSCMのための基盤 APS導入前に実施したMRP?(製造資源計 画)クラスAのプロジェクトでは、組織系統を再 構築し、運営上のカギとなるプロセスを導入して いた( 図4)。
調達に関する業務は以下の二つの業務に分けて 整理した。
■購買部は、調達先サプライヤーの選定および年間 契約締結など、主に業務戦略に関する部分を担 当する。
■ロジスティクス運営部は資材の調達を担当する。
営業業務も同じく二つの業務に分けて整理した。
■ 営業部は、顧客対策を担当する。
そのため、営 業区域や流通経路を考慮するなど、客先との関 係構築に最も適した方法により組織されている。
また、マーケティング部(新製品開発)と協力 して長期的展望に基づく運営を行う。
■需要・サービス管理部はロジスティクス運営部に 直属し、短期間の受注管理を行うとともにロジ スティクス運営部、営業(短期予測の構築)お よび顧客(納期回答)の間に立つ仲介的役割を 果たす。
DECEMBER 2005 30 オペレーションプランニング管理部は、経営資 源にばらつきがないよう技術面を軸とした組織編 成にする。
この組織改革では、社内においてBT icino社特有の複雑な組織構成を維持しつつ、 顧客とのインターフェースについてはこれを一本 化することに主眼を置いた。
ロジスティクス運営部が主導する販売事業計画 (SOP:Sales and Operations Planning)の工 程は、毎月見直し、製品ファミリーごとに一八カ 月計画で設計を行う( 図5)。
SOPはさらに、以下に示すような一連の工程 に分けることができる。
?プレSOP営業計画:製品需要量の見直し。
こ の会議は毎月第一週に需要・サービス管理部の 主導で開催する。
プランニング、営業および原 料調達の責任者も参加する。
?プレSOP生産計画:将来に向けた人員数と生 産能力の予測をここで確定する。
この会議はプ ランニング責任者と各工場の責任者が指揮する。
テクノロジー・セグメントのプランニング担当セ クションであるDASが、i2/TPW(注3) を参照しながら準備する。
SOP会議の準備段 階にあたる。
?プレSOP原料調達計画:原材料サプライヤー や中間業者からの原料調達量予測をここで確定 する。
これはプレSOP生産計画の段階に組み 込むこともできるもので、SOP会議の準備段 階となる。
?SOP:プレSOP会議の段階で未解決の問題 を取り上げる。
ロジスティクス運営部の主導で 実施し、各部の部長が出席する。
BTicinoでは、SOPが定着するまでに三 カ月を要するとみているが、最終的には一カ月単 位で実施したいと考えている。
プランニングソフ ト(i2/TPW)によって関連する諸要因が通 知される。
MPS(基準生産計画)は、毎週更新する。
計 画の対象となるのは、製品ファミリー(方針や決 定の面で同質なもの)のほか、より効果的なプロ グラムの実施にはネックとなりうる完成品や部品、 原料も含まれる。
十二カ月間を対象としたプラン ニングの生産計画メッシュは、週単位である。
31 DECEMBER 2005 i2テクノロジーズ社のSCPモジュールはM PS構築の補助的役割を担う。
SCPによるプランニングの責任者が、TPW (注4)を通じて製品ファミリーごとに生産総量を 決定し、需要タイプに応じてそれに優先順位をつ ける。
製品はここで四〇〇種にグループ分けされ る。
このプランニングは制約となる工程の処理能 力を反映した有限負荷山積み方式で策定されるた め、生産工程に関する正確な情報が必要不可欠で ある。
しかし、新製品の生産工程について十分な 情報が得られるケースは稀であるため、プランニ ングの中に品質面における不測の要素についても 織り込むこととした。
DRPは毎日更新する。
新規注文はSCPシン クロによって処理されるが、このソフトはSCP/ TPWよりも短いサイクル(六カ月)で各工場か らの需要をアップデートする。
データ量が多いこと に加えてフローが複雑で一つの工場が同時に他の 工場のサプライヤーであり顧客であるということが 起こるため、日々データをアップデートしながら一 年単位のプランニングを立てることが難しくなって いる。
そこで、より短い期間を対象とした第二のプ ランニングモデルが作られることとなり、これによ り一日単位の予測も考慮することが可能となった。
この短期プランニングは、五カ月計画として策 定され、生産計画メッシュは一日単位である。
こ れは、各工場単位で計画され、i2テクノロジー ズ社のモジュール、ファクトリー・プランナー(F P)によって処理される。
FPは、SCPシンク ロが算出した純需要から、生産オーダーを決定、実 施することを目的とする。
FPプランニング責任者は、まず無限負荷山積 み方式のMRPによって資材所要量を分析。
生産 責任者は、データベースに蓄積された情報に基づ き、現在庫と有効在庫を把握し、資材調達責任者 に対してオーダーを出す。
次に、資材についての有 限負荷山積み方式に基づく生産プランを実現する。
的確なAPSプロジェクトの推進手法 このようなタイプのプロジェクトは複雑でコス トもかかるため、厳格な姿勢で運営に臨むことが 大前提となる。
成功のカギとなる要因 BTicinoでは、プロジェクト成功に必要な ファクターを以下に述べる五つの柱にまとめた( 図 6 )。
■ビジョン:プロジェクトは流行に左右されるべき ものではなく、当社の企業戦略や企業発展のカ ギとなるファクターとの関連性がなければならな い。
■テクノロジー:ハードウエア(過小評価すべから ず!)、ソフトウエア(複雑かつ高度な最新技術)、 「メインフレーム」とクライアント・サーバの統 合。
■組織改革:APS導入に伴う、組織構造上、ま たプロセス上の変化について考慮すること。
■社内におけるプロジェクトの周知徹底(コミュ ニケーション):新製品を顧客に売り込むように社内においてプロジェクトの売り込みをかける 必要がある。
■変化に対応する姿勢:このツール導入によって 新たな作業方式がもたらされる。
インターフェー スの変化に対応するため、社員研修はもとより 行動規範についても見直さなければならない。
プロジェクト成功のポイントは以下の通りである。
■MRP?そしてAPSの各プロジェクトに対す る経営サイドの取り組み ■厳格なプロジェクト運営。
これは企業の本来業務 とは別のものである。
DECEMBER 2005 32 ■プロジェクト運営に必要なスキルを有し、かつ 現場事情に明るいメンバーから成るワーキング・ グループの編成 ■効率的な所要資源の活用:一〇〜一五のプロジ ェクトがAPSプロジェクトと並行して実施さ れているため、APSプロジェクト用に利用可 能な希少リソース(特に情報処理関係)のフォ ローが不可欠 ■理想的な最終成果を描いた明解なプロジェクト 概念図 ■アプリケーション間の情報伝達に関する明確な アーキテクチャー ■プロジェクトの社内マーケティングを後押しする 試験プロジェクト(コントロール可能な社内の 一部の部署で実施)。
■〈ロールアウト〉と呼ばれる新システムの運用展 開と〈カットオーバー〉と呼ばれる旧生産計画 システムの使用中止についての詳細なプラン構 築。
APSは企業内の複数のシステムや機能に 関係するアプリケーションであり、正確な運用 展開プランの構築が不可欠である。
■変化の対象となるプロセスにおける責任の明確 化:APSプロジェクトはこの点についてISO 二〇〇〇シリーズ関連プロジェクトと協力した。
■変化への組織的対応:技術的問題が重要視され る半面、社内の根回しがおろそかになる傾向が ある( 図7)。
■各プレイヤーの実態に合わせた研修プラン。
■社内での徹底したプロジェクト周知(「社内マー ケティング」)。
プロジェクトチームの考案により、 顧客向けパンフレットを参考にした小冊子を社 内向けに作成した。
ここでは、このシステムを複 数の楽器を同時に演奏するオーケストラに例え て説明している。
■データクオリティとその正確な計算結果の入手: 有限負荷山積み方式のプランニングでは、生産 工程および担当部署に関する情報が極めて重要 である。
それが正確でなければ、負荷や納期計 算を誤ることになる。
■システム運用開始の際の人的サポート、稼動後 の「ホットライン」の維持。
プロジェクトを推進するための組織 プロジェクトを推進するための組織をつくるに あたっては、斬新ではないが効果的な方法を採用 した( 図8)。
■プログラム管理責任者は、社内の他のプロジェ クトとの整合性をとる。
■プロジェクト・リーダーは、段取り、予算および スムーズなプロジェクト運営の責任者となる。
■プロジェクト・エンジニアは、情報処理分野を 担当する。
■プロジェクト検査員は、プロジェクト実施のフォ ローアップを行う。
■プロジェクトチームは、ロジスティクス関係者 (工程改善)、外部のコンサルタントおよびソフト ウエア関連のコンサルタントによって構成される。
ドキュメント管理 プロジェクト関連のドキュメントは電子データ化 し、全て整理番号を付した上で厳密なツリー型分類 を行うとともに、ペーパー資料についても保管する。
全体的なアーキテクチャーは次の通りである。
〇〇 オリジナル・ドキュメント 〇一 プロジェクトのディレクトリ 〇二 処理中 〇三 転送 各ディレクトリには、以下のような下層ディレ クトリがある。
33 DECEMBER 2005 〇一〇 初期需要 〇二〇 プロジェクト準備 〇三〇 KPI(重要目標達成指標) 〇四〇 モデル化 〇五〇 変更対応 〇六〇 テクニカル・ソリューションと情報処 理インフラ 〇七〇 意思決定 〇八〇 プロトタイプ 〇九〇 ポスト・インプリメンテーション 一〇〇 プロジェクトの品質保証 一一〇 ドキュメント管理 一二〇 管理・経営関連ドキュメント 一三〇 社内外プレゼンテーション 一四〇 ストラクチャー/方法論 一五〇 品質保証 プロジェクトのフォローアップ プロジェクトに要した費用のフォローアップを 実施した。
プロジェクトの各フェーズにかかる費用は、以 下の三つのカテゴリーに分けて算出した。
■投資 ■購買 ■社内リソース プロジェクト全体の費用をできるだけ忠実に見 積もるために、担当社員の当プロジェクトに要し た労働時間に見合う人件費を算出し、これを社内 リソースのカテゴリーに計上する。
SCPモジュールの導入は、いくつかの段階を 経て行われるようプランニングした( 図9)。
その第一段階は、旧システムがカバーしていた のと全く同じ機能を踏襲するかたちで実施した。
有 限負荷山積み方式の計画に移行後は、プランニン グの頻度を増やした。
短期用モジュールであるFPの工場への導入も、 規格を統一して同時に実施した( 図 10 )。
注意すべき点は、プロジェクトと並行して、旧 システムについて詳しい分析を行ったことである。
それは、既存のレファレンス(「カーネル」)に対 して各工場がそれぞれ有する特質が、以前から存 在するものであったのか、それは本当に必要なも のであったのかという点を理解するためである。
そ して、それが不可欠と判断した部分に限り、実際に調整を行った。
変化への対応 以下のような点において、システム変更に対応 した。
■ APSシステムの適用に向け、これをオーケス トラの演奏に例えて説明した小冊子の編集 ■研修活動 ■ソフト使用に関わる特別指導 ■原料サプライヤーとの連携 ■品質管理システムのプロセス見直し(ISOプ ロジェクトと並行) ■KPIの見直し DECEMBER 2005 34 社員研修は、系統立てた三つのブロックに分け て実施した。
参加者は、各々のプロジェクトにお ける役割に合ったコースを受講した。
■S1:企業およびサプライチェーンの統合プラ ンニングモデル ■S2:中長期プランニングとサプライチェーン 管理(需要/供給両面において) ■S3:短期プランニングとサプライチェーンの 業務管理 APS推進チームは全てのプログラムコースを 受講し、工場のインストラクターには追加研修を 行った。
研修時間は合計五〇〇〇時間に上った。
APS導入による変化 計画の同期化 MRP?では、MPS(基準生産計画)・MR P(資材所要量計画)と、スケジューリング・工 場でのフォローアップの間には時差があった。
こ れら二つのレベルではアップデートのサイクルが異 なるため、ずれが生じるのを避けることはできない。
APSでは、このサイクルが一日単位となる(S CPシンクロは各工場における需要を日々アップ デートする)。
これにより二つのレベルにおけるプ ランニングの同期化が保証され、スケジューリン グとMPSの間のずれは消滅することとなった。
有限負荷山積み方式による計画 MRP?による生産計画には、二つのレベルが 存在する。
■ MPSと全体の負荷計算■MRPと部分的な負荷計算APSで必要となるのは、MPSも調達計画も 一つだけである。
これにより、サプライヤーもプラ ンニングのプロセスに組み込まれることとなり、そ の結果彼らはソフトの算出結果に基づき補給計画 を確定したり無効化したりしなければならなくなる。
サプライヤーの取り込み サプライヤーに対して、実績向上のために十分 な能力と意欲を備えているかどうかを測定する調 査を実施した。
これは、以下のような点について アンケート形式で行った。
■社内プロセス: ――中長期計画 ――生産計画 ――流通計画 ――実行プログラミング ■在庫、配送管理 ■サプライヤー側の取引サプライヤー管理 ■コマーシャルマネジメント: ――顧客注文のフォローアップ ――顧客管理 ■CPFR(協働生産計画、需要予測および補充 活動):プランニング、プログラミング、データ 交換 ■パフォーマンス・インジケーター ■情報処理システム この調査を基に、以下の二本の柱を基準として サプライヤーの位置付けを行った。
■組織力と複雑性への対応能力 ■コラボレーションに対する適性 BTicinoは、最も有能なサプライヤー二社 とともにテストを開始し、需要予測、遅延リスト、 納期予測、優先事項の変更について毎週情報を交 換している。
肯定的な結果が得られれば、全サプライヤーに 対してこの手法を適用する予定である。
他社に対 しては、BTicinoが実施プランを設定する。
管理パラメータの見直し ソフト適用後、各部の生産能力、製品ファミリ ー、作業所要時間について見直しを行った。
35 DECEMBER 2005 生産計画策定手順の変更 生産計画の策定については、戦術的プランニン グは〈SCP MPS〉、工場レベルの短期的プラ ンニングはFPモジュールを使用した( 図 11 )。
〈SCP MPS〉による戦術的プランニングは一 年計画として策定し、計画メッシュは週単位とな る。
このレベルでは、完成品、部品、(生産能力の 点で)ネックとなる原材料等が計画の対象となる。
需要と計画のシンクロナイゼーションはSCP シンクロモジュールにより実現され、その計画メ ッシュは週単位、プランニングは六カ月単位であ る。
計画対象となる項目は〈SCP MPS〉と 同様だが、工場間 での部品や需要に ついても考慮する。
〈SCP MPS〉では容量と計算時 間がネックとなり、 それができないので ある。
こうして、アップ デート作業を毎日 実施するようになる と、例外的な処 理・調整事項の発 生がソフトから通知 されることにより、 プランニング変更が 実行される。
プランニングのプ ロセスは、新システ ムに合わせて変更し た( 図 12 ・ 13 )。
調達計算につい ては、データ量が大 きいため〈i2 S CP〉では依然不可能であり(必要とされる計算 能力が大きすぎるため)、旧システムであるMRP がそれを担っている。
FPによって、工場に対して計画精度九五% (当初は六七%)でプランを提供することができる ようになり、これまで週単位だった資材管理は一 日単位となった。
このソフトは生産可能な量だけ を計画する。
BTicinoの対応能力は改善され、 半製品の在庫は圧縮した。
APSのユーザーインターフェースには満足を 得られなかったため、BTicinoは社内でTP Wを開発した。
このツールは、主にAPSの出入力データの転 送・可視化を実現する。
データは、生産プランニ ングごとにまとめられ、これにより生産量を視覚 化し、週当たりの生産割当てを決定する(生産率)。
BTicinoは、生産ライン別に組織されている ため、それぞれのプランニングは生産制約という点において同質である。
このツールには、必要に応じて策定したプラン のチェック機能や報告機能も備わっている。
また、このツールは、特に複数のサプライヤー に対する調達計画の配分などに際し、他のアプリ ケーションとの相互利用が可能でなければならな い。
今のところまだ実現していないが、将来的に はこのソフトのデータベースを中央集中化する予 定である。
新しい生産計画策定手順の特徴を理解するため に、再度生産計画会議を開催した。
販売事業計画(SOP)月例会議では、製品フ ァミリー別生産量、生産能力、直接労働力レベル を決定する。
DECEMBER 2005 36 週の定例会議では、最終完成品に対するプラン 適用についての評価をする。
同時に、サービス率、 生産計画の変更事項、キャパシティの割当て、資 材所要量などを見直す。
毎日の会議では、例外事項に対する調整を行う。
まとめ APSの導入によって次のような変化がもたら された。
■計画サイクルの短縮 ■マネジメントシステムの「オペレーションスピー ド」向上 ■分析、決定に要する時間の短縮 ■データクオリティに求められる精度の向上 ■サプライチェーン各段階のより緊密なシンクロナ イゼーションと、それによりもたらされる各段階 間の連携 その結果生じた考え方の変化のうち、最も注目 すべき点は以下の通りである。
■生産リードタイムが短期間で変化するため、そ れをしっかり把握する必要がある。
これまで作 業責任者はリードタイムが一定期間変化しない 状況に慣れていた。
■これまで週単位だった作業が一日単位になる(作 業量に変化はないが付加価値はアップする) このシステムの欠点は、それが本質的には単な る計算エンジンにすぎないという点にある。
つま り組織的なサポートがなければ効果を発揮しない。
運営・組織上の変化への積極的対応姿勢 このようなプロジェクトにおいて、管理上重要なことは、古いシステムに後戻りしないことである。
ツールを信頼することが必要である。
製品アイ テム単位でのプランニングはもはや不可能であり、 これはハンググライダーから自動操縦のボーイン グ機を操縦することになったようなものだ。
付加 価値のない作業は、機械が分担することになった。
これには、プランニングと現場の間で、計画のク オリティ、モデルと現実との整合性を常に管理す ることが必要になる。
このツールは、現実のモデル化を行うものであ るが、現実は日々変化するため、それに従いモデ ルも変化しなければならない。
データベースのメンテナンス作業 生産パラメータは、常時チェックしなければな らない。
APSは、ロジスティクス、生産の両部門に関 係する技術である。
そのため以下のような点が必 要となる。
■現場に最も近いところにいること ■より良いプランを策定するために生産情報をこ のツールに反映させること(生産のフォローアッ プは一週間から一日単位に短縮され、在庫は毎 日更新されなければならない。
以前は、この更 新はMRP処理の前段階にのみ実施していた) そのため、新製品販売の際にはデータクオリテ ィーの問題が生じることとなる。
信頼性・正確性 に欠けるデータは、プランニングの妨げとなる。
製造における柔軟性と費用対効果の見極め BTicinoは、ボトルネックとなるようなリ ソースをほとんど抱えていない。
生産計画におい ては、こうしたリソースに対して細心の注意を払 わなければならない。
生産部門は、ここ数年間、Kaizen(改善) やSMED(訳者注)に努めており、工場はその 生産効率や達成度によって評価される。
APSによって柔軟性が増すことで顧客に対し て一定レベルのパフォーマンスを約束することが できるが、コストを考慮した場合、柔軟性を常に 保つことは必ずしも必要ではない。
APSは、多額の経費を投じてプランニング変 更をすることなく十分な将来予測を可能にするソ フトなのである。
( 翻訳 安藤利文・美穂子) (注 1)「サプライチェーン・プランナー」の略で、i2テクノロジー ズ社の戦術的プランニング用モジュール(APO〔先進的計 画最適化〕のSNP〔需給連鎖計画〕モジュールに相当) (注 2)「ファクトリー・プランナーの略で、i2テクノロジーズ社の 生産スケジューリング用モジュール(APO〔先進的計画最 適化〕のPP/DS〔生産計画/詳細計画〕モジュールに相 当) (注 3)プランニング結果を統合的に可視化できるようにBTici no社が独自に開発したインターフェースソフト (注 4)「Ticino・プランニング・ワークプレイス」の略。
SC Pには含まれないプランニング機能を補完するグラフィック・ インターフェースで、社内で開発された。
(訳者注)?Single Minute Exchange of Die〞の略で、一個目の良品が 出るまでに要する時間を一〇分未満にすることを指す。
※本稿は「Logistique & Management 」誌に掲載された記事を、同誌の 許可を得て翻訳した。
同誌はフランスのボルドー・ビジネス・スク ール内にあるサプライチェーン・エクセレンス機構が年二回発行し ているフランス語による専門誌。
英語でも「Supply Chain Forum」を 年二回発行している。
二誌の概要や同機構については、http:// www.isli.bordeaux-bs.edu/ で閲覧可能

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