ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年2号
keyperson
中田信哉 神奈川大学 教授

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

1 FEBRUARY 2005KEYPERSON 日本でも大企業の経営層がロジステ クス経営を口にするようにな てきました ただし今日 ロジステ クスが注目されているのは 在庫投資やキ シ フロ の観点からだけです 経営層は財務諸表の数値を見て在庫を削減しろと言うものの モノとしての在庫という意識がない 物流管理という視点が抜け落ちている それではいずれ逆戻りしてしまうのではないかと危惧しています 逆戻りというのは? その昔 物流は第三の収益源と言われ 産業界に物流コストを削減しようという機運の盛り上が た時代がありました しかし結局 掛け声だけで終わ てしま た 経営層には 物流コストは把握できても 物る会社など聞いたことがありません 在庫を減らしたり増やしたりすることの影響が 数値として把握できない状態にあります また営業マンにと て在庫が潤沢にあるということ 小売りの店頭において陳列在庫が大であるということは販売心理学 消費者心理学では大きな意味を持 ています 俗にいうなら 売る方に安心感が生まれる 在庫の適正水準はそうしたマ ケテ ング的アプロ チからも検討されるべきです いまだ定石はない 在庫管理の方法は まだ確立されているとは言えないのでし うか 少なくともアカデミズムの世界では まだ確立されているとは言えません もちろん在庫の問題は 会計学や物流論に出てくるし オペレ シ ン・リサ チ OR を始めとした経営工学でも扱います しかし いずれも在庫のマネジメントに正面から取り組んだものとは言えません ましてやサプライチ ン全体の在庫量をどうや て最適化するかという話ともなると 学問的蓄積はほとんどないし それを教えられる人もいないというのが現状です 方法論は確立されていなくても 企業は実際に日々の在庫管理を行わざるを得ません もちろんです 各社がそれぞれ自ら正しいと思うやり方で管理しているわけですが その方法論があまり表面に出てこないのは 一般論化できない段階だからでし う 実際には担当者の経験や過去の実績を元に管理しているのだと思います も とも かつては物流論も同じような状況にありました 何もなか たところに マ ケテ ングや会計 交通とい た隣接分野の専門家が知識を集結する形で 新しい体系を作 た 今では日本でも多くの大学が物流論をマネジメント論のカリキ ラムに組み込んでいます 同じことが今後 在庫管理論の領域でも起こ てくるのでし う 流管理は分からない 本来 物流コストは減らせばいいというものではありません 適正な水準を把握しないまま むやみにコストを減らせば そのしわ寄せが他のところに及びます 在庫問題も同じです 在庫をどこまで減らせば適正なのか 具体的な指示ができていない それでも多くの企業が現在 在庫の大幅な削減を経営課題に掲げています 経営者が本気になれば在庫はいくらでも減らせます 生産を止めればいいわけですから ただし そのためには在庫を減らしたことによる販売機会ロスを計算しなければならない それがロジステ クスの基本的な考え方です しかし 実際には日本で機会ロスを管理会計に組み込んでい中田信哉神奈川大学 教授THEME 経営者は在庫を金額だけで見ている 在庫問題は今や経営上の最重要課題の一つとして扱われている しかし経営者の多くは在庫を資産としてしか認識していない そこにはモノとしての在庫という視点が抜け落ちている 物流管理の裏付けを欠いた在庫削減は いずれ揺り戻しを招く 聞き手 大矢昌浩

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