ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2012年9号
メディア批評
幼稚な政治家たちは集団的自衛権見直しへ市民たちが受け継いでゆく戦争批判の系譜

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高 信 経済評論家 SEPTEMBER 2012  86  自民党左派といわれた元首相、三木武夫の 夫人、睦子が亡くなった。
護憲運動の「九条 の会」および「憲法行脚の会」の呼びかけ人 となった彼女は、二〇〇三年一月五日付の『朝 日新聞』で、アメリカのマリコ・テラサキ・ミ ラーと対談し、  「今の日本の首相は幼すぎて戦争とは何かわ かっていない」と怒っている。
 マリコも、これに、  「ブッシュ大統領も同じよ」  と応じているが、この傾向はますますひど くなっているのだろう。
 この記事につけられた見出しが「戦争の無 残さ知る私たちこそ反戦を」。
 大正生まれの三木睦子の遺志を受け継ぐよ うに、昭和八年生まれの新田嘉一(平田牧場 会長、東北公益文科大学理事長)が『潮』の 七月号で、「日中友好の歴史の重み」につい て語っている。
山形県酒田市にユニークな平 牧三元豚の会社を設立した新田は「九条の会」 にも参加しているが、ほぼ四五年の中国との 交流経験から、中国の人々の「スケールの大 きさや豊かな人間性の虜になってしまった」 と述べ、次のように続ける。
 「とくにハルビンでは、多くの日本人も戦 争で犠牲になりました。
彼の地の人々は、日 本人の遺骨を集めては埋葬してくれたのです。
その史実を聞いた時は、なんと温かい民族な んだと、感動で涙が止まりませんでした」  戦争に行った新田の父親は、生前いつも、  「日本の兵隊は中国でさんざん悪いことをし ていた」  と辛そうに語っていたという。
 「私にとっては、あの戦争はどう考えても日 本が悪い」  こう思う新田は、尖閣列島について徒らに 刺激的な発言を繰り返す石原慎太郎を直接指 してではないが、中国を蔑視する日本の政治 家やマスコミを次のように批判する。
 「彼らは中国に対し威勢のよいことを言って は、中国から反発を食っていますが、無責任 極まりない。
球を投げた人間は、その球を拾 う度量がなくてはなりません。
拾うというこ とは、うまく収めるということです。
投げた 責任は自分がちゃんと拾う。
そういう度量の ない人間は、最初から球を投げるなと言いたい」  わざわざ、アメリカに行って、尖閣列島を 都が買うなどと、なぜ言う必要があるのか。
 もし石原が本当に度量のある人間なら、北 京に行って、そう発言するだろう。
そんな覚 悟は最初から石原にはないのだ。
 寄付を募ったら、たくさんのそれが寄せら れたらしいが、応じた人は、石原が主唱して メチャクチャになった「新銀行東京」の問題 は忘れたのだろうか。
 『世界』に連載されている田中伸尚の「未 完の戦時下抵抗」は、九月号では、山形県小 国の山奥で非戦を説いた鈴木弼 すけよし 美を取り上げ ている。
 「国家の巨大な嘘の集積である戦争の本質を 見抜き、騙されず、戦争を批判した無教会主 義のキリスト者が、奥深い雪国にいた」と田 中は書いているが、その基督教独立学園の創 設者、鈴木弼美のことは、もっともっと広め なければならないだろう。
 考え方において自民党タカ派とまったく 同じ野田佳彦は、集団的自衛権の見直しを 行おうとしている。
『世界』の同じ九月号 の「メディア批評」が、そのお先棒をかつご うとしている国家戦略会議フロンティア分科 会の委員名簿を記しているが、それによれ ば、『丸山眞男』(岩波新書)などを書いて いる東大教授の苅部直や京大教授の中西寛 などが加わっている。
事務局長がPHP研究 所代表取締役専務の永久寿夫。
PHPは言 うまでもなく、松下政経塾ならぬ松下未熟 塾をつくった松下幸之助の始めた出版社。
幼 稚で無恥な野田佳彦や前原誠司は未熟塾の ?留年生?である。
幼稚な政治家たちは集団的自衛権見直しへ 市民たちが受け継いでゆく戦争批判の系譜 ・ ・

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