ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年12号
特集
Interview 「ナショナルチェーンに局地戦で挑む」 エコス 平邦雄 社長

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

DECEMBER 2012  24 コンビニが最大のライバルに ──地域スーパーの業績が振るいません。
 「統計を見る限り、食品スーパー全体の市場はまだ 伸びているんです。
しかし、利益を出しにくくなっ ている。
これまで地域スーパーの競争相手だった総合 スーパー(GMS)は店舗数が減ってきました。
今 は新規出店より閉鎖する店のほうが多い。
ところが、 今度はコンビニがものすごい勢いで出店攻勢をかけて きた。
しかも彼等は総菜や日配品など、我々の主力 商品の取り扱いを増やしています。
競争相手が変わ ってきました。
今やコンビニが地域スーパーにとって 一番の競争相手です」 ──業績の低迷は景気の影響ではない?  「食品スーパーの基本は安売りです。
不景気は本来 であれば追い風のはずなんです」 ──コンビニは割安なPBを新たな武器にしていま す。
 「大変な脅威です。
昔はいくらPBが割安でも、消 費者のブランド志向が強くて、圧倒的にNBのほうが 売れていた。
NBのブランド力は今も衰えているとは 思いませんが、格安のPBに流れるお客様が増えて いる。
景気の低迷が続く限り、この流れは止まらな い。
PB開発はどんどん進むでしょう」 ──地域スーパーとしてどう対応していきますか。
 「販売量の点では逆立ちしたって大手チェーンには 敵いません。
そこで当社も二〇〇七年にニチリウグ ループ(日本流通産業。
全国の地域スーパー一七社、 生協三社が集まり共同仕入れやPB開発を行ってい る)に加盟しました。
(ニチリウ加盟企業の)平和堂 さん、オークワさん、イズミさんたちと共同でPBを 開発しています」  「それと並行して当社がターゲットとするお客様の ニーズに合った商品を、?留め型商品?(メーカー名が 出ているが市販品と違って特定のスーパーなどでしか 扱わない)として自社開発しています。
例えば『モ ーニングリッチ』というパンは山崎製パンさんの商品 ですが、エコスグループでしか販売していません。
そ うやってアイテムごとに、他社と共同開発したほうが 良いか、エコスグループ単独で作るか、一つひとつ判 断しています」 ──エコスグループのターゲットとは?  「中高年層に的を絞った店作りを進めています。
柔 らかくて食べやすい総菜の開発や、日用雑貨品も高 齢者向けを厚く品揃えしたりすることで差別化を図 っています。
そうした取り組みの成果が昨年あたり から、少しずつ結果にも現れてきました」 ──チェーン展開の点では? エコスグループは首都 圏で出店を積極化する一方、傘下にあった静岡県浜 松市の老舗食品スーパー、松菱商事(現シーズンセレ クト)を〇八年にマックスバリュ東海に売却し、静岡 から撤退しました。
ドミナントエリアを見直している 理由は。
 「残念ながら浜松では当社のマーチャンダイジング が全く発揮できませんでした。
私自身、現地に乗り 込んで一年近く頑張ったのですが、我々が地盤とす る関東とは売れるモノが大きく違ってノウハウを活か せなかった。
日本は電車で二、三時間走っただけで、 食文化がガラリと変わります。
同じ関東の中でさえ、 場所によって味覚も違えば家族構成も違うので売れる モノが違う。
とりわけ青果や鮮魚、精肉、総菜、日 配品は地域性が出やすい」  「そのことを思い知ったので、得意とする関東圏に 改めてエリアを絞りました。
今後出店エリアを拡げよ 「ナショナルチェーンに局地戦で挑む」  グループで関東圏に約100 店舗の食品スーパーを展 開すると同時に、地域スーパー56 社で構成するボラン タリーチェーン、セルコグループの中核企業として活動 している。
物流の共同化を主導して効率化を進めると 同時に、地域密着を徹底してナショナルチェーンに局 地戦を挑んでいる。
(聞き手・大矢昌浩、藤原秀行) エコス 平邦雄 社長 Interview 25  DECEMBER 2012 うとは思いません。
自分のエリアで密度を高めてい きます。
どの地域でも消費者は地元の食材を好みま す。
そういう部分できっちりと品揃えしていく。
地 域の市場やベンダーと取引を深め、鮮度が高い地元 の食材を積極的に仕入れていきます。
その結果、例 えば、今日釣れた魚をその日のうちに売り場に並べ ることが、店舗によってはできるようになりました。
普通のスーパーは一日寝ている。
それだけウチは鮮度 がいい」  「やはり地域に密着して地元のお客様の冷蔵庫代わ りに使っていただくことが、地域スーパーの基本戦略 です。
実際、勝っている地域スーパーは、どこもドミ ナント戦略を徹底しています。
いくらナショナルチェ ーンの売り上げが大きいといっても、滋賀県に行け ば平和堂さんより売り上げているところはない。
和 歌山ならオークラさん、広島ならイズミさんが、それ ぞれ圧倒的なシェアを握っている」 ──物流面での取り組みは?  「当社の物流センターを、ボランタリーチェーンのセ ルコグループの加盟企業と共同化することで効率化に 取り組んで来ました。
また最近は回転の良い売れ筋 商品に関して、自社センターに一定の在庫を持つこと を進めています。
卸の委託在庫をセンターに置くとい うことではなく、当社が買い切った在庫です。
まと めて購入することで安く仕入れて売価を抑えること が狙いです。
ただし、売れ残りのリスクを抱えること になりますから、在庫品を増やしていくには、それ だけ在庫コントロールの精度を高めていかなくてはな りません」 関東圏をさらに掘り下げる ──足下ではネットスーパーが拡大しています。
食品 スーパーにとっての影響はコンビニ以上に大きいので は。
 「私もかつてはネットビジネスの普及によって食品 スーパーは大きな転換期を迎えることになるだろうと 考えていました。
そのために一時は当社自身もネッ トスーパーに手を出した。
しかし、今は手を引いてい ます。
時期尚早だと分かったからです。
少なくとも 当社がメーンのターゲットとする高齢者は、当面ネッ トは使わない」  「ネットスーパーが伸びているとは言っても今のと ころニッチの域を出ていません。
ネットで一兆円売っ ているスーパーはないし、利益もほとんど出ていない はずです。
当社だけでなく、地域スーパーでネットか ら撤退したところは、実はかなりあります」  「もちろん将来は分かりません。
今後インターネッ トが衰退することなど考えられないし、いったんは 日本から撤退した流通外資も改めて?黒船?として 日本市場に本格参入してくるとも見ています。
スー パー同士のM&Aや中間流通の系列化も進むでしょ う。
寡占化は避けられません」  「それでも当社がエリアとする関東圏は日本市場全 体の三分の一を占めています。
そこでコンビニに負け ない強固な地盤を作ることで、規模の点でも大きく 飛躍することは不可能ではないと考えています。
私 は若い頃、ダイエーで食材のバイヤーとして働きまし た。
当時のダイエーの販売力は圧倒的でした。
まさ か十数年後にイオンに追い抜かれることになるとは、 誰も想像さえしていなかったはずです。
流通業界と いうのは、それだけ変化が激しい。
地域スーパーがピ ンチに立たされているのは事実です。
しかし、それ をチャンスに変えることはできるはずです。
我々にも 十分チャンスはあると考えています」 エコスの各店舗では現在、従業員の効率的なシフト配置など、オペレーショ ンの改善に重点的に取り組んでいる(写真は東京・昭島市の中神店) 勝つのは誰だ 食品SCM 特集

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