*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。
FEBRUARY 2012 26
アイ・ロジック
──食品容器の共同物流で急成長
親会社のエフピコをはじめメーカー約350社の食品容
器や包装資材、消耗品などを全国約6000の小売店に直
接一括納品している。 2000年に設立し、3年目に黒字化。
その後は、事業規模を拡大させながら7〜8 %の経常利
益率を維持している。 (聞き手・石鍋 圭)
問屋支援の発想からスタート
──エフピコにはアイ・ロジックのほかに、一〇〇%
子会社のエフピコ物流があります。 棲み分けは?
「エフピコ物流の社長も私が兼務しているのです
が、エフピコ物流は親会社のエフピコが生産した食
品トレーやフードパックといった食品容器を全国六
カ所の在庫型センター(DC)に保管し、そこから
各エリアの問屋にケース単位で納めるのが業務です。
それに対してアイ・ロジックは製品をピッキングし、
エンドユーザーであるスーパーやコンビニなどの各店
舗に最小ロットで直接納品しています」
「まずエフピコ物流のDCからアイ・ロジックが管
理運営するピッキングセンター(PC)にケース単位
で製品を入れて、そこから店舗別に小分け梱包し、
各店舗に届ける。 エフピコの売上高約一四〇〇億円
のうち、約二〇〇億円分の製品がこのPC経由で出
荷されています」
「PCではエフピコグループの製品のほかにも、メー
カー約三七〇社の製品を取り扱っています。 シール、
フィルム、割り箸といった包装資材や消耗品などです。
エフピコの食品容器と関連性の高い商材を一緒に取
り扱い、各店舗に一括で納品することで店側の荷受
け負担は少なくなる。 メーカーにとっても、複数の
問屋に持ち込むより当社のPCに一括で納入した方
が負担は減るというメリットがあります」
──売り上げの構成比を教えて下さい。
「六五%が親会社であるエフピコ向けで、残りの
三五%は問屋向けです」
──外販の直接の荷主はメーカーではなく問屋?
「もともとこのサービスは問屋支援の発想からス
タートしています。 一九九〇年代から小売りチェー
ンの巨大化が顕著になり、それに伴って加工食品や
日用雑貨の卸業界は大再編が進みました。 ところが、
我々の食品容器や包装資材の業界ではそれが起きな
かった。 いまだに中小零細規模の問屋が無数に存在
しています。 大手小売りと零細問屋ではビジネスの
スケールが違いすぎて、互いに齟齬をきたしていた」
「そこで、九五年頃にエフピコが主導してメーカー
と問屋による共同配送センター事業の構想を打ち立
てたのです。 商流はそのまま問屋に残し、物流だけ
を共同化すればスケールメリットが生まれる。 問屋
は小分け・納品業務から解放され、販路の拡大など
に力を注げるようになる。 小売りも食品容器のセン
ターが巨大化することで安定的なビジネスをしやす
い環境になるという青写真でした」
──エフピコにとってのメリットは?
「今でこそエフピコは食品容器のトップメーカーと
して認知されていますが、当時はまだ中央化学さん
やシーピー化成さんを追いかける立場にあった。 物
流やサプライチェーンを武器に、ライバルと差別化を
図りたいという狙いが当時の経営陣にあったのだと
思います」
──大手小売りには大型専用センターがあります。
そこに納品せずに店舗配送する理由は?
「食品容器や包装資材は非常にかさばります。 し
かも商品自体の付加価値は低いため、在庫をすれば
するほどスペースの採算性は悪化していく。 小売り
にとって食品容器類は店舗まで配送してもらうこと
が望ましいのです」
──すぐに軌道に乗ったのですか。
「私はまだその当時は関与していなかったのですが、
なかなかうまくいかなかったようです。 四、五年ほ
ど続けたものの結果が出ず、エフピコの内部でも経
小泉哲 社長
注目企業 トップが語る強さの秘訣
第19位
27 FEBRUARY 2012
営課題の一つになっていた。 そういった折りに私が
エフピコから依頼を受け、指揮を執ることになった。
初めてビジネスモデルを聞いたとき、狙い自体は絶
対に間違っていないと感じて依頼を受けることにし
ました。 再スタートを切るということで、新たに法
人を設立することになり、〇〇年にアイ・ロジック
が誕生しました」
──なぜ小泉社長に白羽の矢が?
「私はもともとセブン-イレブン・ジャパンの物流管
理本部にいて、米飯や惣菜の共同配送センターの構
築経験がありました。 セブン-イレブンを退社後、物
流コンサルタントとして一年ほど色々なメーカーや卸
の物流を見て回っていたのですが、その時の一社が
エフピコだったのです」
誤納率一〇〇万分の二
──まず何から着手をしたのですか。
「拠点の統廃合です。 当時は全国に二六カ所もの
共同配送センターを作っていたのですが、素人が片
手間でやっていたために立地や規模などの拠点政策
がめちゃくちゃだった。 地場の運送会社に適当に小
規模倉庫を借りてもらい、そこを拠点としていた」
「一定規模以上の倉庫を自社で作り、ネットワーク
を組み直すことにしました。 投資は親会社によるも
のですが、サプライチェーンを武器にするという政
策のもと力強く支援してくれました。 現在の十一の
PCは全て新規投資したもので、当時の二六拠点は
すべて廃止しました。 拠点の呼称も“ピッキングセ
ンター”に統一しました」
──庫内作業に関しては?
「設立当初のピッキング作業には標準化や効率化と
いった視点は無く、とにかく人海戦術で乗り切ろう
というレベルでした。 ミス率も高かった。 現在では
入庫から出荷までの各工程で三回、四回とハンディ
スキャナでバーコードを読み込み、厳しくチェックを
する体制を整えています。 現在、ミス率は一〇〇万
分の二という水準にまで高まっています」
──業績も好調です。
「設立から二年間は苦境が続きましたが、小売り
チェーンに当社のビジネスが認知されるようになり、
徐々に規模が拡大してきました。 利益率も堅調で、
直近五年の経常利益率は約七〜八%で推移していま
す。 ただし、この数字は来期以降あえて落とすかも
知れません。 料率改定などで親会社に貢献し、ビジ
ネス拡大の原資にしてもらう。 そうなればさらに物
量は増え、当社の仕事も増えるという好循環が生ま
れることを期待しています」
──〇八年度から一〇年度にかけて売り上げが五〇%
以上アップしている要因は?
「エフピコ物流が行っていたPC内のエフピコ製品
のピッキングを、アイ・ロジックが行うようになっ
たためです。 それまでは拠点の統廃合で手一杯だっ
たため、他社メーカーのピッキングしかやっていなかっ
た。 〇八年に統廃合が一区切りついたので、必要な
システム投資をしてエフピコ製品のピッキング業務を
アイ・ロジックに移管したのです」
──御社のビジネスモデルは商社を中抜きすること
も可能です。
「時代の趨勢もあって、エフピコとの直接取引を
望む小売りが増えているのは確かです。 我々として
もその要望を断るわけにはいきません。 いずれにし
ても、当社のサービスは他社に真似のできない強み
だと自負しています。 これをさらに高度化して、エ
フピコグループに貢献していくつもりです」
錚々たる顔ぶれの小売りが利用
食品容器メーカー最大手エフピコの物流子会社。 2000年設立。
創業当初はエフピコが80%、小泉社長が10%、問屋約30社が
10 %を出資していたが、東証1部への指定替えなどに伴ってエフピ
コが完全子会社化している。
同社のピッキングセンター(PC)は現在、札幌から福岡まで全国
に11拠点。 総延べ床面積は3万1000坪。 その多くはエフピコ物流
のDCと同じ建物に併設されていたり、近距離に位置している。
アイテム数はエフピコ製品が約6500アイテム、他社商品が約2万
5000アイテムだが、出荷額ベースでは65%をエフピコ製品が占める。
PCからの納品先数は約1600社、6000店舗にのぼる。 その中には
イオン、平和堂、イズミヤ、成城石井、小田急OXなど錚々たる顔
ぶれが並んでいる。 ピッキング作業のミス率は100万分の2という
水準にまで高度化されている。
足下の業績も堅調で、12年3月期も増収増益を達成する見込み。
7〜8 %という高い計常利益率を誇っているが、一層の飛躍への足
がかりを築くために来期以降はあえて比率を落とす可能性もある。
本誌解説
08月
3月期
09月
3月期
10月
3月期
11月
3月期
12月
3月期
5000
4500
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
350
300
250
200
150
100
50
0
単位:百万円
業績推移
(見込み)
経常利益(右軸)
売上高(左軸)
特 集 《平成 24年版》
|