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特別積み合わせ輸送(路線便)をメーンとする
第一貨物では、輸送トラブルを「異常」と「事故」
の二つに分けて管理している。 荷物の紛失や破損
はもちろん、外箱のわずかな汚損・濡損など、現
場で少しでも「異常」に気付いたら、三〇分以内
にそれを荷主に報告する。 そのうち約四五%が最
終的にクレームとなり「事故」としてカウントさ
れる。 異常の過半数は?お咎めナシ?で済むのだ
が、どんな小さなトラブルも包み隠さず事前に報
告することで信頼の向上に努めている。
路線便は宅配便と同様、複数の荷主から荷物を
集めてハブ・アンド・スポークのネットワークに乗
せる混載輸送だ。 同じドライバーが荷物の積み込み
から納品まで担当するチャーター便と違って、荷物
が各工程をバトンタッチされていく。 そのため「路
線便の品質は各工程の作業員一人ひとりに掛かっ
ている。 その向上には社員全員の『人の質』の底
上げが必要だ」と、同社で輸送品質の管理を担当
する営業本部業務第二部の沓沢晋主査は言う。
二〇〇九年度に発生した路線便の「異常」を同
社で分析したところ、六八・八%がターミナル上
の作業に原因のあることが分かった。 それ以降、
ターミナル作業に重点を置いた事故防止活動を行
っている。 過去一〇年間にわたる「異常」の原因
を調べ上げて、保管時の防護板の導入や台車の改
良、監視カメラの設置など、ハードを見直した。
それとともに、長尺モノや袋モノなどの荷姿ごと
に荷扱い作業の方法を標準化した。 順守徹底には
マニュアルだけでは足りないと、一二年二月には
DVDを制作して全事業所に配布した。
全国七二の事業所では、それぞれ毎月「輸送品
質改善委員会」を開催している。 上からの押し付
け教育を避けるため、座長には三〇代の若手社員
を起用。 現場のリーダー格と輸送品質に関わる問
題点を議論して、PDCAを回している。
「特積業界ナンバーワンの品質」を目指し、一二
年度は異常貨物・事故件数の前年比一〇%削減と
いう数値目標を掲げている。 各事業所には、年間
の削減目標件数とその日までの異常発生件数を示
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した「異常貨物件数明示ボード」を所属員の目に
見えやすい場所に掲示している。
一方、ドライバー教育には「積付指導員」の専
任者を置いている。 様々な荷物を同じ車両に混載
する路線便の積み付けは、輸送品質を大きく左右
する。 そのノウハウは従来、長距離トラックを二
人のドライバーが交代で運転する?ダブルマン運
行?によって先輩から後輩に伝承されていた。 し
かし近年は運賃の値下げ圧力の影響から、長距離
でもワンマン運行が増えている。
そこで新人ドライバーに対する研修を徹底する
と同時に、ベテランドライバーから積付指導員を
選び、全国の事業所を巡回指導させている。 評価
基準は「手本になるほど素晴らしい」、「並以上」、
「まずまず」、「継続指導が必要」の四段階。 この
うち「まずまず」は全体の〇・九%、「継続指導
が必要」は〇・四%にすぎないが、そこを「並以
上」に持っていければ異常件数を抑制できる。
他にもモデル事業所による改善活動を通じたノ
ウハウの横展開、ゼッケンの着用による作業管理、
朝礼等での改善事例発表など、あらゆるレベルで
品質向上に取り組んでいる。 しかし、異常件数の
削減は満足できるほど進んでいない。
「輸入貨物の増加による段ボール箱の品質劣化が
大きい。 また納品先の現場作業に外部委託が増え
たことで、荷主の自社運営の時なら許されていた
小さな?異常?も?事故?扱いになってしまう。
つまり従来の管理レベルを維持しているだけでは
クレームの件数は増えてしまう。 それを何とか横
ばいで抑えているのが現状だ。 件数を減らすには、
さらに取り組みを深化させる必要がある」と沓沢
主査は覚悟している。 (大矢昌浩)
──特積業界ナンバーワンの品質目指す
第一貨物トラック輸送
《悪い積付》
《良い積付》
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