ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2013年1号
特集
トラック輸送 第一貨物 ──特積業界ナンバーワンの品質目指す

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

 特別積み合わせ輸送(路線便)をメーンとする 第一貨物では、輸送トラブルを「異常」と「事故」 の二つに分けて管理している。
荷物の紛失や破損 はもちろん、外箱のわずかな汚損・濡損など、現 場で少しでも「異常」に気付いたら、三〇分以内 にそれを荷主に報告する。
そのうち約四五%が最 終的にクレームとなり「事故」としてカウントさ れる。
異常の過半数は?お咎めナシ?で済むのだ が、どんな小さなトラブルも包み隠さず事前に報 告することで信頼の向上に努めている。
 路線便は宅配便と同様、複数の荷主から荷物を 集めてハブ・アンド・スポークのネットワークに乗 せる混載輸送だ。
同じドライバーが荷物の積み込み から納品まで担当するチャーター便と違って、荷物 が各工程をバトンタッチされていく。
そのため「路 線便の品質は各工程の作業員一人ひとりに掛かっ ている。
その向上には社員全員の『人の質』の底 上げが必要だ」と、同社で輸送品質の管理を担当 する営業本部業務第二部の沓沢晋主査は言う。
 二〇〇九年度に発生した路線便の「異常」を同 社で分析したところ、六八・八%がターミナル上 の作業に原因のあることが分かった。
それ以降、 ターミナル作業に重点を置いた事故防止活動を行 っている。
過去一〇年間にわたる「異常」の原因 を調べ上げて、保管時の防護板の導入や台車の改 良、監視カメラの設置など、ハードを見直した。
それとともに、長尺モノや袋モノなどの荷姿ごと に荷扱い作業の方法を標準化した。
順守徹底には マニュアルだけでは足りないと、一二年二月には DVDを制作して全事業所に配布した。
 全国七二の事業所では、それぞれ毎月「輸送品 質改善委員会」を開催している。
上からの押し付 け教育を避けるため、座長には三〇代の若手社員 を起用。
現場のリーダー格と輸送品質に関わる問 題点を議論して、PDCAを回している。
 「特積業界ナンバーワンの品質」を目指し、一二 年度は異常貨物・事故件数の前年比一〇%削減と いう数値目標を掲げている。
各事業所には、年間 の削減目標件数とその日までの異常発生件数を示 JANUARY 2013  38 した「異常貨物件数明示ボード」を所属員の目に 見えやすい場所に掲示している。
 一方、ドライバー教育には「積付指導員」の専 任者を置いている。
様々な荷物を同じ車両に混載 する路線便の積み付けは、輸送品質を大きく左右 する。
そのノウハウは従来、長距離トラックを二 人のドライバーが交代で運転する?ダブルマン運 行?によって先輩から後輩に伝承されていた。
し かし近年は運賃の値下げ圧力の影響から、長距離 でもワンマン運行が増えている。
 そこで新人ドライバーに対する研修を徹底する と同時に、ベテランドライバーから積付指導員を 選び、全国の事業所を巡回指導させている。
評価 基準は「手本になるほど素晴らしい」、「並以上」、 「まずまず」、「継続指導が必要」の四段階。
この うち「まずまず」は全体の〇・九%、「継続指導 が必要」は〇・四%にすぎないが、そこを「並以 上」に持っていければ異常件数を抑制できる。
 他にもモデル事業所による改善活動を通じたノ ウハウの横展開、ゼッケンの着用による作業管理、 朝礼等での改善事例発表など、あらゆるレベルで 品質向上に取り組んでいる。
しかし、異常件数の 削減は満足できるほど進んでいない。
 「輸入貨物の増加による段ボール箱の品質劣化が 大きい。
また納品先の現場作業に外部委託が増え たことで、荷主の自社運営の時なら許されていた 小さな?異常?も?事故?扱いになってしまう。
つまり従来の管理レベルを維持しているだけでは クレームの件数は増えてしまう。
それを何とか横 ばいで抑えているのが現状だ。
件数を減らすには、 さらに取り組みを深化させる必要がある」と沓沢 主査は覚悟している。
       (大矢昌浩) ──特積業界ナンバーワンの品質目指す 第一貨物トラック輸送 《悪い積付》 《良い積付》

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