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コストより安定稼働を重視
インドネシアは資源大国としての顔も持つ。 特
に石炭ではアジア有数の開発・生産量を誇る。 こ
の石炭を狙って、世界中のコンストラクターがイ
ンドネシアへの投資を活発に行っている。 彼らを
主要顧客とする建機メーカー各社にとっても、イ
ンドネシアは重要市場だ。
日立建機は建機三強の中で唯一、販売とアフタ
ーサービスを受け持つ「ヘキシンドアディプルカサ
(以下、ヘキシンド)」を現地子会社として抱えて
いる。 キャタピラーとコマツは、外部の代理店に
委託している。 その理由は、展開する主力商品の
構成にある。 インドネシアの石炭採掘には “マイ
ニング” と呼ばれる超大型の鉱山機械が用いられ
る。 日立建機は鉱山機械の大型油圧ショベルで三
〇%以上のシェアを握っている。
大型油圧ショベルは一台当たりの価格が高く、
機械がストップした時の影響も大きい。 一台の油
圧ショベルが停止した場合、その損失は一時間当
たり数百万円にも上る。 そのため、鉱山機械の顧
客はコストよりも購入後のサービスを重視する。
ヘキシンドの田中大慶シニアゼネラルマネージャ
ーは「外部の代理店任せでは大切なアフターサー
ビスを管理しきれない部分があるが、日立建機の
血が通ったヘキシンドであれば即座に最適のサー
ビスを提供できる。 これがインドネシアでの競争
力につながっている」と説明する。
アフターサービスのポイントは、高度なメンテナ
ンス技術の提供と補修部品の円滑な供給だ。 この
うち、補修部品の供給では在庫および物流管理の
実力が顧客満足度に直結する。 そのため、ヘキシ
ンドではその合理化に力を注いでいる。
同社の補修部品の主要拠点は、ジャカルタおよ
びカリマンタン島のバリクパパンの二カ所にある。
両拠点がそれぞれアジア太平洋エリアを統括する
シンガポールの「日立建機アジア・パシフィック(H
MAP)」に発注を入れ、部品を調達。 そこから、
最前線の採掘現場に供給している。
採掘現場はカリマンタン島の東岸に集中してい
るため、拠点規模はバリクパパンの方が圧倒的に
大きい。 同拠点では四〇〇〇?ほどの倉庫に約一
万アイテム、金額にして約三五〇〇万ドル分の在
庫を常時抱えている。 それでも、これは補修部品
の一部にすぎない。
バリクパパンの拠点に駐在するヘキシンドの大
資源開発現場のパーツ・ロジスティクス
建機メーカー大手3社の中で、日立建機は唯一、販売と
アフターサービスを行う現地子会社をインドネシアに構えて
いる。 日本人スタッフが資源採掘現場の最前線に入り込み、
補修部品の円滑な供給に日々汗をかいている。 突発的な欠
品対応にも当事者意識を持って当たり、顧客のビジネスの
安定稼働に貢献している。 (石鍋 圭)
日本人スタッフが先頭に立ち、サー
ビスパーツの供給と日々のメンテナ
ンスに奔走している
第 5 部 インドネシア──沸き上がる内需
41 MAY 2013
注文で一〇個の部品を要求された場合、一つでも
足りなければ失敗と見なされる。 どの部品をどれ
だけ調達し、在庫しておくのかを緻密に考えなけ
れば目標の達成は難しい。
バリクパパンからシンガポールのHMAPへの発
注は、ほぼ毎日行われている。 補修部品ごとに定
められた発注点まで在庫量が減ると、アラームが
表示されるシステムが導入されている。 その発注
点は、客先で稼働している鉱山機械の部品の寿命
や、過去実績を基に計算されている。 稼働中の機
械を一台単位で “見える化” して保守管理などに
用いる手法はコマツの「コムトラックス」が有名
だが、日立建機グループでも同様の仕組みを以前
から実施している。
発注点には随時見直しを入れている。 いくら部
品の寿命を計算しても、その地域の気候や客先で
の使用環境によって劣化具合は大きく異なる。 単
純平均で発注点を割り出すだけでなく、客先や地
域などの個別事情も計算式やシステムに加味する
取り組みを継続している。 この一〜二年の間で徐々
に発注精度が上がってきたことで、三つのKPI
すべてに好影響が生まれているという。
ただし、いくら発注精度を高めても一〇〇%需
要を読み切ることは不可能だ。 顧客から突発的に
要求された補修部品が手元にないケースもある。 「こ
れが最も緊張を強いられる局面だ。 我々にとって
一番怖いのは顧客
の機械が止まる『マ
シンダウン』。 これ
を防ぐために、あ
らゆる手段を取る
必要がある」と大
城戸勇太パーツサポートマネージャーは「すべての
部品を在庫しておくことはできない。 在庫や物流
を効率化し、最適なコストで円滑な部品供給を実
現することが我々パーツ部隊の役割だ」と語る。
マシンダウンを回避しろ
在庫管理の具体的なKPIとしては「在庫金額」
「在庫月数」「即納率」の三つを採用し、いずれも
高い目標を設定している。 例えば即納率では九〇%
という達成目標を掲げているが、ここでは “一注
文当たり” というルールを徹底。 顧客から一回の
城戸マネージャー。
まず、どこに顧客が求めている在庫があるのか
をシステム上で確認する。 最初にインドネシア国内、
なければシンガポールの在庫を確かめる。 シンガ
ポールに在庫があれば、HMAPに依頼して航空
便でバリクパパンまで緊急輸送する。 この時、本
当に緊急だということをHMAPに伝えるために、
故障個所の画像をメールで送る。 そうすることで、
HMAPも事情を明確に察して優先して輸送手配
を急いでくれる。
世界中の倉庫を探しても引き当てられる在庫が
ないこともある。 その場合は、顧客に対して情報
を徹底的に開示し、調達できるめどなどを随時、
迅速に伝える。 大城戸マネージャーは「外部の代
理店なら『部品はありません』という対応で済ま
せるところだが、我々は当事者意識を持って事に
当たる。 以前、お客さんが乗り込んで来て厳しい
お叱りを受けたこともあるが、最善を尽くした結
果、それまで以上に良好な関係を築くことができた。
これが当社のの存在価値だ」と胸を張る。
調達物流の効率化も積極的に推進している。 従
来はHMAPが日本や第三国から補修部品を調達
し、シンガポールの国内倉庫に集約してからヘキ
シンドに送っていた。 それを、一部の部品につい
てはシンガポールの倉庫に入れず、港で積み替え
てそのままヘキシンドに運ぶように改めた。 その
結果、HMAPの在庫コストが大きく削減し、そ
れに応じてヘキシンドの調達コストも低減した。
大城戸マネージャーは「日本にいる時は分から
なかったが、この最前線では補修部品の重要性を
実感できる。 まだ改善の余地が多くあるので、こ
れからも意欲的に取り組んでいく」と語る。
ヘキシンドの大城戸勇太パ
ーツサポートマネージャー
サービスパーツの調達・供給ルート
シンガポール
ブルネイ
ジャワ島
ジャカルタ
スラウェシ島
マレーシア
インドネシア
バリクパパン スマトラ島
日立建機アジア・ パシフィック
カリマンタン島
輸送
発注
供給
特 集 中国物流
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