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「BTS七割」のバランス維持
──御社が展開している物流不動産のソリューション
事業『Dプロジェクト』の特徴は何でしょうか。
「もともと当社は一九五五年の創業以来、戸建て住
宅だけでなく事業用施設の建築請負も手掛けてきま
した。 物流施設は三〇〇〇棟以上の実績があります。
二〇〇二年にスタートした『Dプロジェクト』はそう
した設計や工事の経験を生かすだけでなく、最適な
用地の提案から維持・管理までを一貫して手掛ける
のが特徴です。 自社で施設を保有したいという方に
はうちが物件を建てて売却する、ノンアセットで事業
展開したい方には貸し出すといったように、多様なニ
ーズに対応するソリューションを提供しています。 既
に全国約一二〇カ所以上で実績を積んできました」
──ニーズに先行して用地を取得する積極姿勢が目立
ちます。
「企業や地方自治体などがお持ちの不動産の有効
活用をお手伝いするという姿勢で幅広く土地を仕入
れています。 それでも最近は土地の消化が早くなり、
ストックに余裕がなくなってきました。 そのため今、
仕入れを強化していて、今年の四〜八月で首都圏を
中心に新たに七〇〇億〜八〇〇億円ぐらいの用地確
保に目途を付けました。 年間では一〇〇〇億円を超
えそうです」
──用地価格が上昇していると聞きます。
「場所にもよりますが確かに価格は上がっています。
後発で取り組まれているところが結構な高値で応札
されたりしている。 しかし、我々はこの事業を三〇
年、四〇年とロングランでやっていかなければならな
い。 腰砕けにならないよう、絶対に取りに行く案件
とそうでないものを事前に見極める必要があります」
──従来メーンにしてきたBTS(ビルド・トゥ・ス
ーツ)型に加え、新たにマルチテナント型にも参入し
ました。 開発の比率はBTSとマルチで七対三程度
を目指すと説明していますが、その狙いは?
「マルチ型のニーズは確実にあり、そうした需要も
取りこぼさないようにしようという判断です。 全国
五カ所で開発に着手し、その第一号として今年七月
に竣工した埼玉県三郷市の『DPL三郷』は既に
一〇〇%テナントが埋まりました。 企業からの申し
込みは実は一五〇%くらいあった」
「ただし、マルチ型では対応できないニーズもある。
マルチ型はどうしてもテナントの最大公約数的なニー
ズを反映させた設計になります。 しかし、テナント
企業が成長して規模が大きくなってくると、独自の
物流システムを持つようになり、器としてもそれに相
応しいものを希望されるようになる。 そのためマル
チ型からBTS型へ移っていく。 通販をはじめ成長
産業ほど、その傾向が強い」
──マルチ型で対応できないニーズとは具体的には?
「階高があまり高いとむしろ空調の効率が低くなっ
て困るとか、取り扱う商品が軽いので床荷重がそこ
までなくてもいいとか、いろいろなご要望がありま
す。 それに竣工時点では最新鋭だったマルチ型も数年
経てば最新鋭ではなくなる。 物流の規格やレギュレー
ションだって変わってくる。 そうした変化を事前に全
て読み切って設計に反映させることなど不可能です。
汎用性の高いマルチ型だからといって、ずっと通用す
ると考えるのは正しくない」
「一方でBTS型はつぶしが利かない等々いろいろ
と言われます。 しかし、テナントの個別のニーズを細
かく拾い上げて作り込んだ専用施設を適正価格で提
供する代わりに、一五年、二〇年の期間でご契約い
「日本品質の施設を海外にも展開する」
個別企業の専用施設(BTS 型)の開発に軸足を置き、
全国約120 カ所で実績を積み上げてきた。 ニーズに先行
した用地の取得にも積極的で今期の投資額は1000 億円
以上に達するもようだ。 アジア各地の工業団地開発と
連携し、高品質のセンターを海外でも展開していく。
(聞き手・藤原秀行)
大和ハウス工業 浦川竜哉 常務執行役員 建築事業推進部長
第5 部注目プレーヤーの開発戦略
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ただける。 それだけの契約期間があれば建築費を償
却できる。 契約が終わってそのまま貸せない場合は
建て替えればいい。 中長期的に安定した事業運営が
できます。 今後も七対三程度のバランスを崩すつも
りはありません」
アジアの工業団地に高品質センター
──次期中期経営計画(二〇一四〜一六年度)では
不動産開発投資へ四〇〇〇億円をつぎ込む方針です。
その中で物流施設事業はどのような位置付けになり
ますか。
「現在、具体的な数字を固めている最中なのでまだ
明確なことは申し上げられないのですが、投資全体
の中でも物流が重要なセグメントとなることは間違い
ありません」
──開発対象エリアは?
「テナント企業は皆さん、やはり首都圏の湾岸エリ
アや圏央道といったところを注目されています。 し
かし、首都圏はもちろん、我々が今展開している大
阪、名古屋、福岡、仙台の需要も堅調です。 物流施
設のニーズが全国に波及している感じがします」
──しかし、長期的には国内の物量は減っていきそ
うです。
「それでも海外シフトが進んで物流の流れが完成品
を輸入するかたちに変わったことで、これまで国内
工場が果たしてきた生産調整機能を物流拠点が担う
ようになっています。 そうした状況は今後も続くで
しょうから、施設需要はなくならない」
──海外でも物流施設を開発していくようですね。
「当社はゼネコンでもありますから、海外で工業団
地の開発を行っています。 具体的にはベトナム・ホ
ーチミン郊外の『ロンドウック工業団地』と、インド
ネシア・ジャカルタ郊外の『ダイワ・マヌンガル工業
団地』の開発に参画しており、その工業団地と関連
して物流施設を整備し、日系企業などに提供する計
画です。 インドネシアは二〇〇億円規模の案件を作り
ます。 生産の立ち上げから物流に至るまでをサポート
し、アジア進出を加速している日系企業の需要に応
えていきます」
「こうした国の物流施設はまだまだ日本の昭和三〇
年代の倉庫と同じで、平屋で雨露をしのげればいい
といった作りです。 そこに日本の優れた物流施設を持
っていけば一気に受け入れられる可能性がある。 日
本品質の物流センターをどんどん海外でも展開してい
きたい」
「グループ全体で海外売上高を伸ばそうとしている
中、やはり自分の得意な分野で海外に参入しようと
いうことでもあります。 我々は日本国内で物流施設
の建設のほか、工業団地の造成や土地の区画整理事
業を数多く手掛けてきました。 そうしたノウハウは海
外でも発揮できます。 そうしたところが他のデベロッ
パーなどとはちょっと違う点だと思います」
──今年一月に準大手ゼネコンのフジタを買収しまし
た。 フジタは国内の区画整理事業などの経験が豊富
なことに加え、海外売上高は大手に続くほどの水準
です。 国内外の物流施設事業と相乗効果が見込める
のでは。
「物流に限らないのですが、例えばベトナムでは、
フジタとのJV(共同企業体)で既に仕事が取れま
した。 フジタさんが施工を手掛けられるのであれば、
と信用していただけて受注につながったこともあり
ます。 そういった相乗効果は今後さらに出てくると
思います。 両者で協力して何ができるのかを考えて
いきたい」
大和ハウス工業がインドネシア・ジャカルタ郊外で開発に参画している工業団地でレンタル工
場完成予定図(同社ホームページより)。 同社はベトナムで双日などと協力して工業団地開発を
展開し、インドネシアは現地企業に出資。 両国で物流施設の建設などを担当している。
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