ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2013年10号
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「リート上場は日本へのコミットメント」 プロロジス 山田御酒 社長

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

OCTOBER 2013  6 ん。
二割も三割も空いている施設を複 数抱えているのに次から次へと新規開 発をスタートするというのはリスクが 高過ぎる」 ──大量供給で空室率が上がった後、 どうなると見ていますか。
 「よく言われている通り、ECや3 PLの拡大は今後も続くでしょう。
加 えてこれからは、古い倉庫を新しい倉 庫に更新していくニーズがますます強 くなる。
私自身は、これが物流不動産 市場拡大の一番のドライバーになると 考えています。
当社が提供するような 最新型の物流施設は、日本の倉庫スト ック全体に対してほんの数%にしかす ぎません。
既存の倉庫の大半は七〇年 代、八〇年代に作られた施設です。
そ れを使い勝手が良く、災害に強く、環 境に優しい施設に置き換える動きが、 間もなく一斉に顕在化する。
そこに事 業機会が存在します」 ──直近のプロロジスの動きを見ると、 埼玉県の川島など、いわゆる “物流一 等地” ではないエリアにもマルチテナ ント型の大型施設を開発しています。
 「確かに当社が川島に土地を買ったと きは、『そんなところにテナントが付く のか』と危ぶむ声もありました。
しか し自信はありました。
キーポイントは 圏央道です。
まだ圏央道がつながって いないタイミングで土地を購入し、圏 建て替え需要が本格化する ──物流リート(REIT:不動産投資信 託)の上場が続いています。
今年一〜 三月にリート全体が新規に取得した資 産の約半分が物流施設だったという統 計も出ています。
さすがに加熱し過ぎ では?  「これまで私募で動いていたものが、 リートの上場によって表面化したとい うことだと思います。
米国ではリー ト市場全体の一五%から二〇%が物 流施設を中心とする『インダストリア ル』で占められています。
専業リート だけで六〜七社あり、インダストリア ルをオフィスや商業施設と組み合わせ て投資するハイブリッド型も相当数あ る。
物流不動産はオフィスや住宅に比 べて地味ではあるけれど、景気変動の 影響を受けにくい資産だという評価が 一般の投資家に広く定着しています」  「それに対して日本の物流不動産は これまでニッチな存在でした、専業リ ートも二社しかなかった。
しかし、昨 年から今年にかけて専業リートが相次 いで新規上場したことで物流施設への 注目度が格段に上がりました。
物件の 取引金額やテナントなど詳細な情報が 全て開示されるようになり、日本の一 般投資家が投資しやすくなった。
リー ト市場に占める物流不動産のシェアも 米国並みに一気に高まりました」 ──物流リートの上場は続きますか。
 「三井不動産さんと三菱地所さんとい う二大プレーヤーが今後資産を公開す るとなると、マーケットサイズはさらに 一段拡大することになります。
ただし、 主だったリートはそれでほぼ出揃う」 ──リートと同様にプライベートファン ドの動きも活発です。
それまで含める と相当な資金が物流不動産市場に流れ 込んでいるのでは。
 「確かに投資は活発ですが、最近の 主だった新規開発施設のほとんどはリ ートに組み込まれています。
プライベ ートな資金を動かしている有力プレー ヤーもいますが、その規模が?リート の何倍も?ということはない」 ──そろそろ市場規模拡大も限界では。
 「結局は需給バランスの問題です。
現在は非常にタイトですが、来年の中 ごろあたりまで大型施設の供給が続く ため、瞬間的に空室率が上がることも あるでしょう。
ポイントはそこから先 です。
その後も空室が順調に消化され ていくようなら、また一気に供給が増 える。
そうでなければ、当社も含めて 各社はしばらく開発を控え、市場は静 かになるはずです。
物流施設の空室率 は一割以下でないと安定運用できませ プロロジス 山田御酒 社長 「リート上場は日本へのコミットメント」  今年二月、日本プロロジスリート投資法人を上場させた。
資産 売却で手に入れた資金は全額を日本国内の物流不動産に再投資す る計画だ。
ファンドの出口戦略としてリート上場は必ずしも便利な 手段ではない。
それでも日本に対してコミットメントを表明する意 味は大きいと判断している。
       (聞き手・大矢昌浩) 7  OCTOBER 2013 央道の整備と並行して施設の開発を進 めました。
開発が終わるころには圏央 道も開通し、立派な物流適地になった。
川島というエリアを物流用地として開 拓し、テナントの需要を掘り起こすこ とができたと自負しています。
そうし たことを、当社は他のエリアでもくり 返しています」  「首都圏湾岸エリアなど一等地に対 するニーズが根強いのは事実ですが、 『坪当たり四〇〇〇〜五〇〇〇円もの 家賃は払えない。
少し郊外でも良いか ら、その分、安い施設がいい』という 声は常にある」 ──今年二月にJリート「日本プロロ ジスリート投資法人」を立ち上げまし た。
役割としては、プロロジス本体が 開発した施設の売却先、いわゆる “出 口” の機能を果たすのでしょうか。
 「半分は正解、半分は不正解です。
売却先の問題だけなら何もJリートで ある必要はありません。
私募ファンド だって十分その機能を果たせます。
む しろ、行政との折衝や各種手続き、情 報の公開義務などが伴うJリートより も、私募ファンドの方が機敏に動ける。
手間やコストも抑えられます」  「それでも我々がJリートという選択 肢を選んだのは、日本市場に対するコ ミットメントを鮮明に打ち出すためで す。
上場によって日本の投資家に広く ですが、あえてその六〜七割程度に抑 える。
無理な価格で開発用地を取得し たり、需要とかけ離れた物件を建てて しまうことは避けたい。
市場の参加者 が増えたことで、再び用地価格が高騰 しています。
経験のない会社が入札で 無茶な価格を付けるようになってきた。
我々はそれには付き合わず、相対で用 地を仕入れていきます。
時間は掛かっ ても、確実な物件だけを手掛けていき ます」 ──プロロジスの戦略に合わない物件 でも、買い手は見つかるのですか。
 「もちろんです。
我々が売却する施 設は、現在のエリア展開と合っていな いというだけで、むしろ新しく開発す る施設よりずっと利回りがいい。
その 多くは償却の済んだ築二〇年程度の施 設ですが、まだまだ使えて賃料収入も 下がらない。
むしろ上がることが多い。
投資物件としては非常に魅力的で欲し がる人はいくらでもいます」 参加していただく。
そして顧客や投資 家、従業員に対して、当社は日本に根 を張ってビジネスを継続していくこと をお約束する。
それが今回の上場の一 番の目的です。
実際、今回リートに売 却した資金は、そのまま日本のビジネ スに再投資する方針です。
一円も海外 に持ち出すつもりはありません」 日本の比重を大幅に増やす ──日本でビジネスを展開する上で、 外資であることはマイナスですか。
 「メディアから?黒船? ?ハゲタカ?と 揶揄されて、『どうせ状況が悪くなっ たら引き上げてしまうんだろう』と突 き上げられたこともありましたからね。
我々は外資系物流不動産会社として最 も早い時期に日本でビジネスをスター トし、市場の開拓に汗をかいてきまし た。
しかし、これまでは運用する資金 の大半が海外からのものでした。
日本 の土地を使わせてもらって商売をして いるのに、『これでいいのか』という 思いは常に私の中にはありました」  「また上場は人材採用の面でも大き な効果が期待できます。
日本に根を張 って質の高いビジネスを継続するため には、今後も優秀な人材を確保し続け る必要がある。
そうした部分でも、公 器であるリートをグループに持つこと は有利に働くはずです」 ──プロロジスのグローバル戦略および 日本市場の位置付けを教えて下さい。
 「リーマンショック以前までのプロロ ジスグループは、規模の拡大を前面に 押し出していました。
現在はこれを改 め、資産の入れ替えによってポートフ ォリオの質の向上を進めています。
当 社はグローバルで五〇〇〇万?以上の 施設を運営しており、その内訳はお よそ六五%が米国、三〇%弱が欧州、 残りがアジアを含むその他の地域です。
これを全体の規模は大きく変えずに、 米国の比率を落として、欧州の比率は そのまま、アジアを伸ばしていく」  「主に米国の資産を売却することにな りますが、米国の中でも地域によって は撤退し、その資金を別の地域に回す という入れ替えを行う。
アジアの中で もメリハリを付けます。
韓国からは撤 退して、日本や中国を伸ばす。
全世界 で年間二五〇〇億円から三〇〇〇億円 規模の新規開発を行っていく計画です が、そのうち四分の一を日本でやりた いと米国本社のCEOは話しています」 ──年間七〇〇億円程度の投資という ことになります。
 「日本の我々としては年間四〇〇億 〜五〇〇億円、今後三年で一二〇〇 億〜一五〇〇億円を目途に開発を進め ていく方針です。
能力的には年間七〇 〇億〜八〇〇億円の開発も可能なの 山田御酒(やまだ・みき) 1953年生まれ。
76年早稲 田大学商学部部卒。
フジタ入 社。
2002年プロロジス入社。
04年シニアバイスプレジデント 兼日本代表。
09年3月プレジ デント兼CEO。
2011年6月、 AMBプロパティーコーポレー ションとの経営統合に伴い代表 取締役社長に就任。
現在に至る。

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