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ん。 二割も三割も空いている施設を複
数抱えているのに次から次へと新規開
発をスタートするというのはリスクが
高過ぎる」
──大量供給で空室率が上がった後、
どうなると見ていますか。
「よく言われている通り、ECや3
PLの拡大は今後も続くでしょう。 加
えてこれからは、古い倉庫を新しい倉
庫に更新していくニーズがますます強
くなる。 私自身は、これが物流不動産
市場拡大の一番のドライバーになると
考えています。 当社が提供するような
最新型の物流施設は、日本の倉庫スト
ック全体に対してほんの数%にしかす
ぎません。 既存の倉庫の大半は七〇年
代、八〇年代に作られた施設です。 そ
れを使い勝手が良く、災害に強く、環
境に優しい施設に置き換える動きが、
間もなく一斉に顕在化する。 そこに事
業機会が存在します」
──直近のプロロジスの動きを見ると、
埼玉県の川島など、いわゆる “物流一
等地” ではないエリアにもマルチテナ
ント型の大型施設を開発しています。
「確かに当社が川島に土地を買ったと
きは、『そんなところにテナントが付く
のか』と危ぶむ声もありました。 しか
し自信はありました。 キーポイントは
圏央道です。 まだ圏央道がつながって
いないタイミングで土地を購入し、圏
建て替え需要が本格化する
──物流リート(REIT:不動産投資信
託)の上場が続いています。 今年一〜
三月にリート全体が新規に取得した資
産の約半分が物流施設だったという統
計も出ています。 さすがに加熱し過ぎ
では?
「これまで私募で動いていたものが、
リートの上場によって表面化したとい
うことだと思います。 米国ではリー
ト市場全体の一五%から二〇%が物
流施設を中心とする『インダストリア
ル』で占められています。 専業リート
だけで六〜七社あり、インダストリア
ルをオフィスや商業施設と組み合わせ
て投資するハイブリッド型も相当数あ
る。 物流不動産はオフィスや住宅に比
べて地味ではあるけれど、景気変動の
影響を受けにくい資産だという評価が
一般の投資家に広く定着しています」
「それに対して日本の物流不動産は
これまでニッチな存在でした、専業リ
ートも二社しかなかった。 しかし、昨
年から今年にかけて専業リートが相次
いで新規上場したことで物流施設への
注目度が格段に上がりました。 物件の
取引金額やテナントなど詳細な情報が
全て開示されるようになり、日本の一
般投資家が投資しやすくなった。 リー
ト市場に占める物流不動産のシェアも
米国並みに一気に高まりました」
──物流リートの上場は続きますか。
「三井不動産さんと三菱地所さんとい
う二大プレーヤーが今後資産を公開す
るとなると、マーケットサイズはさらに
一段拡大することになります。 ただし、
主だったリートはそれでほぼ出揃う」
──リートと同様にプライベートファン
ドの動きも活発です。 それまで含める
と相当な資金が物流不動産市場に流れ
込んでいるのでは。
「確かに投資は活発ですが、最近の
主だった新規開発施設のほとんどはリ
ートに組み込まれています。 プライベ
ートな資金を動かしている有力プレー
ヤーもいますが、その規模が?リート
の何倍も?ということはない」
──そろそろ市場規模拡大も限界では。
「結局は需給バランスの問題です。
現在は非常にタイトですが、来年の中
ごろあたりまで大型施設の供給が続く
ため、瞬間的に空室率が上がることも
あるでしょう。 ポイントはそこから先
です。 その後も空室が順調に消化され
ていくようなら、また一気に供給が増
える。 そうでなければ、当社も含めて
各社はしばらく開発を控え、市場は静
かになるはずです。 物流施設の空室率
は一割以下でないと安定運用できませ
プロロジス 山田御酒 社長
「リート上場は日本へのコミットメント」
今年二月、日本プロロジスリート投資法人を上場させた。 資産
売却で手に入れた資金は全額を日本国内の物流不動産に再投資す
る計画だ。 ファンドの出口戦略としてリート上場は必ずしも便利な
手段ではない。 それでも日本に対してコミットメントを表明する意
味は大きいと判断している。 (聞き手・大矢昌浩)
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央道の整備と並行して施設の開発を進
めました。 開発が終わるころには圏央
道も開通し、立派な物流適地になった。
川島というエリアを物流用地として開
拓し、テナントの需要を掘り起こすこ
とができたと自負しています。 そうし
たことを、当社は他のエリアでもくり
返しています」
「首都圏湾岸エリアなど一等地に対
するニーズが根強いのは事実ですが、
『坪当たり四〇〇〇〜五〇〇〇円もの
家賃は払えない。 少し郊外でも良いか
ら、その分、安い施設がいい』という
声は常にある」
──今年二月にJリート「日本プロロ
ジスリート投資法人」を立ち上げまし
た。 役割としては、プロロジス本体が
開発した施設の売却先、いわゆる “出
口” の機能を果たすのでしょうか。
「半分は正解、半分は不正解です。
売却先の問題だけなら何もJリートで
ある必要はありません。 私募ファンド
だって十分その機能を果たせます。 む
しろ、行政との折衝や各種手続き、情
報の公開義務などが伴うJリートより
も、私募ファンドの方が機敏に動ける。
手間やコストも抑えられます」
「それでも我々がJリートという選択
肢を選んだのは、日本市場に対するコ
ミットメントを鮮明に打ち出すためで
す。 上場によって日本の投資家に広く
ですが、あえてその六〜七割程度に抑
える。 無理な価格で開発用地を取得し
たり、需要とかけ離れた物件を建てて
しまうことは避けたい。 市場の参加者
が増えたことで、再び用地価格が高騰
しています。 経験のない会社が入札で
無茶な価格を付けるようになってきた。
我々はそれには付き合わず、相対で用
地を仕入れていきます。 時間は掛かっ
ても、確実な物件だけを手掛けていき
ます」
──プロロジスの戦略に合わない物件
でも、買い手は見つかるのですか。
「もちろんです。 我々が売却する施
設は、現在のエリア展開と合っていな
いというだけで、むしろ新しく開発す
る施設よりずっと利回りがいい。 その
多くは償却の済んだ築二〇年程度の施
設ですが、まだまだ使えて賃料収入も
下がらない。 むしろ上がることが多い。
投資物件としては非常に魅力的で欲し
がる人はいくらでもいます」
参加していただく。 そして顧客や投資
家、従業員に対して、当社は日本に根
を張ってビジネスを継続していくこと
をお約束する。 それが今回の上場の一
番の目的です。 実際、今回リートに売
却した資金は、そのまま日本のビジネ
スに再投資する方針です。 一円も海外
に持ち出すつもりはありません」
日本の比重を大幅に増やす
──日本でビジネスを展開する上で、
外資であることはマイナスですか。
「メディアから?黒船? ?ハゲタカ?と
揶揄されて、『どうせ状況が悪くなっ
たら引き上げてしまうんだろう』と突
き上げられたこともありましたからね。
我々は外資系物流不動産会社として最
も早い時期に日本でビジネスをスター
トし、市場の開拓に汗をかいてきまし
た。 しかし、これまでは運用する資金
の大半が海外からのものでした。 日本
の土地を使わせてもらって商売をして
いるのに、『これでいいのか』という
思いは常に私の中にはありました」
「また上場は人材採用の面でも大き
な効果が期待できます。 日本に根を張
って質の高いビジネスを継続するため
には、今後も優秀な人材を確保し続け
る必要がある。 そうした部分でも、公
器であるリートをグループに持つこと
は有利に働くはずです」
──プロロジスのグローバル戦略および
日本市場の位置付けを教えて下さい。
「リーマンショック以前までのプロロ
ジスグループは、規模の拡大を前面に
押し出していました。 現在はこれを改
め、資産の入れ替えによってポートフ
ォリオの質の向上を進めています。 当
社はグローバルで五〇〇〇万?以上の
施設を運営しており、その内訳はお
よそ六五%が米国、三〇%弱が欧州、
残りがアジアを含むその他の地域です。
これを全体の規模は大きく変えずに、
米国の比率を落として、欧州の比率は
そのまま、アジアを伸ばしていく」
「主に米国の資産を売却することにな
りますが、米国の中でも地域によって
は撤退し、その資金を別の地域に回す
という入れ替えを行う。 アジアの中で
もメリハリを付けます。 韓国からは撤
退して、日本や中国を伸ばす。 全世界
で年間二五〇〇億円から三〇〇〇億円
規模の新規開発を行っていく計画です
が、そのうち四分の一を日本でやりた
いと米国本社のCEOは話しています」
──年間七〇〇億円程度の投資という
ことになります。
「日本の我々としては年間四〇〇億
〜五〇〇億円、今後三年で一二〇〇
億〜一五〇〇億円を目途に開発を進め
ていく方針です。 能力的には年間七〇
〇億〜八〇〇億円の開発も可能なの
山田御酒(やまだ・みき)
1953年生まれ。 76年早稲
田大学商学部部卒。 フジタ入
社。 2002年プロロジス入社。
04年シニアバイスプレジデント
兼日本代表。 09年3月プレジ
デント兼CEO。 2011年6月、
AMBプロパティーコーポレー
ションとの経営統合に伴い代表
取締役社長に就任。 現在に至る。
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