ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2013年10号
中国鉄道コンテナ輸送
第4回 港湾サイドから見た「海鉄連運」の現況 小島末夫 国士舘大学 21世紀アジア学部 教授

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

OCTOBER 2013  92  うち輸出向けは五二・二万TEUから八 八・三万TEUへと六九・二%伸び、輸入 向けは三九・三万TEUから七四・四万TE Uへ八九・三%の伸びを示した。
伸び率の点 では輸入が輸出を大きく上回ったものの、数 量的には逆に輸出が輸入をコンスタントに上 回る不均衡状態にある。
 同一期間の鉄道全路線のコンテナ総輸送量 に占める海鉄連運方式のコンテナ輸送量の比 率は、二八・九%から三九・二%へと一〇ポ イント余り急上昇した(呉強主編〔二〇一一〕 『鉄路集装箱運輸』中国鉄道出版社、一九三 頁)。
 だが、中国全港湾のコンテナ総取扱量に対 しての海鉄連運量の比率は、同じ期間内に 〇・九八%から一・一二%に微増しただけで ほとんど変わっていない。
一一年でも、全港 湾のコンテナ総取扱量一億六四〇〇万TEU に対して海鉄連運量は一九四万TEUで、シ ェアは一・一八%にすぎない。
米国並みの広 大な国土を抱えながら、米国の同比率三〇% 程度に比べて相当に低い水準である。
 とはいえ、見方を変えれば、それだけ中国 における海鉄連運の発展の余地は大きいとも 言えよう。
 ちなみに、海鉄連運量が全国で相対的に多 い東北地区においては、一一年のそれが六三 万TEUで、同地区全港湾のコンテナ取扱量 の五・七%を数えるに至っている。
同地区の 海鉄連運量は、〇五年以来、年平均二〇% 海鉄連運の発展スピード  海運と鉄道はともに大量の物資を長距離輸 送するのに適し、コストが安いという共通の 特性を備えている。
この二つの輸送モードの 連携によるコンテナ輸送が、以下で取り上げ る「海鉄連運」と一般に呼ばれるものである。
鉄道を主体にとらえるならば、「鉄水連運」と も言う。
 中国には二〇一二年現在、全国に合計四 〇四にも上る港湾(うち沿海部に一五〇余り) が存在するとされ、近年来、港湾能力は全体 的に供給が需要を上回る過剰状態にある。
そ のために全ての沿海港湾が、さらなる貨物の 発掘・獲得に向けて後背地の内陸地域へ一段 と延伸する必要性に迫られている。
 他方、鉄道に関しては、資源や穀物などの 大宗貨物(主要貨物)を中心に同輸送量の 伸びが一貫して高いことから、むしろ慢性的 な輸送能力不足に陥っているのが現状である。
こうした状況の下で、海鉄連運方式に基づく コンテナ輸送サービスの向上が、にわかにク ローズアップされるようになってきた。
 海鉄連運による鉄道コンテナ輸送は、これ まで比較的速い発展を遂げてきた。
例えば、 第十一次五カ年計画(二〇〇六〜一〇年)の 期間中、同輸送量は〇六年時点の九一・四 万TEUから一〇年には一六二・七万TEU へと大幅に拡大し、五年間の増加率は七八・ 〇%(年平均一五・五%増)に達した。
小島末夫 国士舘大学 21世紀アジア学部 教授 港湾サイドから見た「海鉄連運」の現況 中国鉄道コンテナ輸送 《第4回》  近年来、中国の港湾は取扱能力を持て余す供給 過剰状態にある。
一方、鉄道輸送は慢性的な輸送 能力不足に陥っている。
この2つの課題を解決する ため、中国政府は海運と鉄道を連携させたコンテナ 輸送「海鉄連運」の促進を図っている。
港湾サイ ドから見た、その現状と今後の展望を解説する。
93  OCTOBER 2013  そうした点を踏まえ改めて当該資料を見る と、中国主要港湾(上記三港を除く)にお ける全国四九公司の一一年の海鉄連運量合計 は四一・二万TEU(注:一〇年のそれは二 六・〇万TEU)であった。
これは同年の全 国港湾の海鉄連運総量一九四万TEUの二 割程度であり、その捕捉率は極めて低いと言 わざるを得ない。
 しかも、同年鑑では各省別の港湾に関する 直近の動きが別掲で毎年詳しく紹介されてい るものの、海鉄連運の状況については必ずし も一律に言及されているわけではない。
その ため、同年鑑から港湾別の海鉄連運のデータ を一括して得ることは困難である。
 一方、月刊の業界専門誌『中国港口』には、 中国港口協会港口鉄道分会の作成による公司 別の同統計表が毎号掲載されている。
その内 容としては、全国港湾の鉄道輸送に関わるコ ンテナ取扱量が、主要一〇公司(上位一〇で はなく選択の基準は不明)についてそれぞれ 当月の鉄道出港と入港の数量および年初から の累計値の形で暫定的にまとめられ、提供さ れている。
しかし、この資料は数値と増減率 の間に齟齬があり、整合性が十分取れていな い箇所もある点に留意することが肝要である。
四大ハブ港湾の一つ「営口港」  以上のような点を考慮に入れつつさまざま なソースから断片情報を集めながら、海鉄連 運による鉄道コンテナ取扱量の過去三年間に 以上の高い伸びを実現しているという(中国 鉄道科学研究院『鉄道貨運』二〇一二年第五 期、五三頁)。
 ここで、上述した海鉄連運のコンテナ輸送 データについて簡単に説明しておくと次の通 りになる。
 中国の主要港湾における公司ごとの海鉄連 運量のデータは、基本的に中国港口(港湾) 協会編集部編の『中国港口年鑑』各年版から 入手可能である。
しかし、同巻末の統計表に は、海鉄連運の規模がかなり大きいとみられ る大連港、連雲港港や青島港関連の公司デー タが全く記載されていない。
わたる推移を主要港湾および公司別に示した のが表1である。
 同表を見ると、まず一二年は中国対外貿易 総額の伸びの大幅な落ち込み(一一年の前年比 二二・五%増から一二年は同六・二%増へ) を如実に反映し、全国港湾の海鉄連運量が前 年より四万TEU増の一九八万TEU(前年 比二・一%増)と相対的に伸び悩んだことが 読み取れる。
 次に港湾ごとの海鉄連運量では、大連、営 口、天津、連雲港の四港が、いずれも約三〇 万TEU(一一年実績)を記録して上位にラ ンクされ、合計すると中国全体の三分の二程 度にまで達しているのが特徴的である。
その うち連雲港を除けば、中国北部の環渤海地区 の港湾(五大沿海地区港湾群の一つ)で占め られていることになる。
 これら四港は、後述する三大鉄道コンテナ 輸送ルートの起点にそれぞれなっている。
こ の事実からも明らかなように、四港は文字通 り海鉄連運のハブ港湾として中心的な存在と なっている。
 紙幅の関係もあり、以下ではこれら四大ハ ブ港の中で最多の取扱量を誇る営口港に絞っ て、その海鉄連運の動向について明らかにし たい。
 営口港では、海鉄連運の業務が〇五年から 開始された。
初年度の同実績は一・六万TE Uにすぎなかったが、その後、〇七〜〇九年 の三年間には倍増ペースで伸びていき、〇九 表1 主要公司・港湾別「海鉄連運」コンテナ量の推移 (単位:万TEU) 営口港務集団 大連港鉄路公司 連雲港鉄路運輸公司 大連港 連雲港港 天津新港 全国港湾 公司・港湾名 30.08 16.25 12.29 29.1 23 16.59 162.7 2010 年 29.18 31.40 14.98 36.2 30.6 29.45 194 2011 年 30.16 15.26 12.83 - - - 198 2012 年 (出所)中国港口協会編『中国港口』2011 年、2012 年、2013 年各第1 期および 中国鉄道科学研究院編『中国鉄路』2012 年第7 期、他に中国港口年鑑編集部 編『中国港口年鑑』各年版などより筆者作成。
中国鉄道コンテナ輸送 年時点で一八・六万TEUまで上昇した。
 営口港務集団が発表した「二〇〇九年度集 装箱工作総結及二〇一〇年度工作安排」によ ると、同港で海鉄連運の業務を展開している 海運会社は〇九年末現在七社を数えるという。
各社の海鉄連運量のシェアは、中海集団(チ ャイナ・シッピング)が五九・八%、中遠集 団(COSCO)が三二・七%と、両社で実 に九割以上も押さえているとのことである。
 そして一〇年時点では、海鉄連運量が三 〇・一万TEU(前年比六一・八%増。
同港 のコンテナ総取扱量四〇三万TEUに対して 七・五%のシェア)へと急増し、中国沿海港 湾最大の取扱量を達成した。
 これに伴って、同港は海鉄連運業務で?三 つの全国一?という輝かしい記録を打ち立て ることとなった。
その三つとは、第一が国内 貿易の海鉄連運量、第二が海鉄連運量の増加 率、第三がコンテナ総取扱量に占める海鉄連 運量の比率である。
 翌一一年には二九・二万TEUと前年の規 模を若干割り込んだが、一二年になると前述 したとおり全国港湾の海鉄連運総取扱量が伸 び悩む中で、再び三〇・二万TEUに回復を 遂げた。
特に国際複合輸送の増加が目立って おり、同港の発着総量は数量的にはまだ少な いものの、一万TEUを超えるところまで伸 びてきている。
 このように、海鉄連運の鉄道コンテナ輸送 が近年急速に発展してきた主な要因としては、 における石炭、鉱石、食糧、化学肥料など大 宗バルク(ばら積み)貨物の鉄道輸送の比率 を、一〇年比で五年間に一〇ポイント引き上 げることが決められた。
 さらに同年一〇月には、その「指導意見」 をしっかりと貫徹するため、両部が合同で 「『鉄水連運』によるコンテナ輸送の展開に関 するモデル項目の通達」を発出したのであっ た。
 当通達の中で、次に掲げる六本の鉄道ルー トが、重点モデルの第一弾として選定された。
すなわち、?大連〜東北(旧満州)地区、? 天津〜華北・西北地区、?青島〜鄭州および 隴海線(連雲港〜蘭州間)沿線地区、?連雲 港〜阿拉山口沿線地区、?寧波〜華東地区、 ?深圳〜華南・西南地区──である。
これら 鉄道コンテナ輸送のモデルルートは、いずれ も海鉄連運(または鉄水連運)と呼ばれるS EA&RAIL輸送を、中国で一般に大陸橋 と言われるランドブリッジ輸送や国内コンテナ 輸送などと密接に連動させ、全国的な複合一 貫輸送システムを構築していこうとしている ことがうかがえる。
 こうして海鉄連運量の拡大とともに、今 日では一定規模を擁する上記の主要ハブ港湾 が形成され、そこからの鉄道コンテナ定期路 線も整備されて順次開通し、上述した六本の 鉄道ルートのうち、とりわけ中核的な三大コ ンテナ輸送ルートが次第に確立されつつある。
その流れを個別に示したのが表2である。
所管部門である中国交通運輸部と鉄道部(二 〇一三年三月に解体決定。
三分割されて交通 運輸部に一部統合)の強力な後押しが挙げら れる。
 具体的には、まず一一年五月に両部が連名 で「『鉄水連運』の発展を共同で推進するこ とに関する協力取り決め」に調印した。
次い で同年九月には、両部が「『鉄水連運』の発 展加速に関する指導意見」を公布し、一五年 まで鉄水連運量を年平均二〇%以上の伸び率 で増やすとの目標が提起された。
また、港湾 OCTOBER 2013  94 表2 「海鉄連運」の主要ハブ港湾と三大鉄道コンテナ輸送ルート 1.大連港・営口港(遼寧省) ●東北地区の瀋陽(遼寧省)、長春(吉林省)、ハルビン(黒龍江省)の3省都及び 延吉(吉林省)、通遼・満州里(内モンゴル自治区)などの都市に連結。
2.天津港(天津市) ●華北地区の太原(山西省)、フフホト(内モンゴル自治区)の2省・区都および西 北地区の西安(陝西省)、ウルムチ(新疆ウイグル自治区)、銀川(寧夏回族自治 区)、西寧(青海省)の4省・区都、ならびに侯馬(山西省)、包頭・二連浩特(エ レンホト。
内モンゴル自治区)、阿拉山口(新疆ウイグル自治区)などの都市に連結。
3.連雲港港(江蘇省)、青島港(山東省) ●隴海線(連雲港〜蘭州間)、蘭新線(蘭州〜ウルムチ間)から阿拉山口を経て 中央アジアに至る新ユーラシア・ランドブリッジ。
●中国内では西北地区の西安、蘭州(甘粛省)、ウルムチの3省・区都を経由。
(出所)中国交通運輸部水運科学研究院「中国集装箱海鉄連運発展」2013 年2月22 日     訪中時配布資料より作成 区)が約一〇万TEU弱、青島駅(青島旧 港のある老港区)が約八万TEU弱、青島鉄 道コンテナ・センター駅(在膠州)が約二万 TEU弱という構成である。
ちなみに一一年 の場合、山東省済南鉄道局管内のコンテナ輸 送量(発送量のみ)を見ると、青島港関連 では青島駅が五・三万TEU、黄島駅が四・ 九万TEU、青島センター駅(膠州)が一・ 六TEUの取り扱いであった。
同管内の全コ ンテナ発送量(一九・五万TEU、三三七・ 八万トン)に占めるこれら三駅合計(十一・ 八万TEU、一七〇・六万トン)の割合は六 〇%に上っている(前掲『鉄道貨運』二〇一 三年第一期、二二頁)。
 今のところ海鉄連運業務は三駅併用の体 制で、それぞれ運営されているようだ。
ただ、 青島旧港のコンテナ埠頭は閉鎖する予定であ り、同港の取扱分はいずれ鉄道コンテナ・セ ンター駅に移行していくであろうとのことで あった。
 ところで、一一年一月初めに改正された新 たな鉄道ダイヤによれば、海鉄連運専用のコ ンテナ定期列車は全部で五七路線に上り、そ のうち一八ある鉄道局の管内を越えて走行す る定期列車は三一ルート、同管内だけを走る 定期列車は二六ルートとなっている。
なお一 〇年段階においては合計六三路線で、海鉄連 運量は年間六三・九万TEUであった(前掲 呉強主編、一九四頁)。
 いずれにせよ、全国の主要都市一八カ所に 中核的な拠点としての鉄道コンテナ・センタ ー駅(コンテナ物流センターとも言う)を整備 するプロジェクトが引き続き進行中である。
そ のうち上述した青島をはじめ上海、重慶、鄭 州など九カ所の鉄道コンテナ・センター駅が完 成し、〇六年十一月の昆明を皮切りに、一〇 年までの間に順次供用を開始している。
 以来、今日まで一八カ所のうち残り九カ所 の建設状況に関する情報は久しく伝えられて こなかった。
ようやく最近に至り、鉄道コン テナ・センター駅網の建設と運営を担当する 中鉄聯合国際集装箱(コンテナ)有限公司の 話として、一〇番目となる天津センター駅が 着工済みで本年内にも完成し稼働する予定と いうことが明らかになった。
 海上コンテナ輸送と連動した海鉄連運量の 増大も徐々に見られるなど、その効果が現れ てきている。
港湾立地型である天津駅の新た な稼働が実現すれば、名実とも三大輸送ルー トの確立へとつながる。
海鉄連運のさらなる 発展のためにも、当初計画された一八駅体制 の早期実現が待たれるところである。
三大輸送ルートの確立へ  同表の中で青島港の海鉄連運に関しては、 今回の訪中で青島鉄道コンテナ・センター駅 の責任者から直接に現在の情況を聞くことが できた(ヒアリング:一三年二月二六日)。
 それによると、青島発着のコンテナ定期列 車には目下、?青島〜鄭州、?青島〜西安、 ?青島〜阿拉山口間──の三ルートがある。
これに加えて一二年十二月には、青島〜ホル ゴス(新疆ウイグル自治区。
北の阿拉山口と 並んで隣国カザフスタンとの国境鉄道輸送駅) 〜アルマトイ〜ロッテルダムの間でも試験運行 (計一五日間)が実施された。
 また青島経由の海鉄連運量はここ数年、横 ばいの状態が続き、年間一八万〜一九万TE Uの規模という。
内訳は、黄島東駅(前湾港 95  OCTOBER 2013 「海鉄連運」の主要ハブ港湾:営口港コンテナ埠頭 2012年8月13日筆者撮影 小島末夫(コジマ・スエオ)  1946年生。
愛知県出身。
1969 年3月早稲田大学第一商学部卒、 香港大学中文系修了。
1969年4 月に日本貿易振興会(ジェトロ) に入会し調査部に配属、1970年 代後半から主に中国経済を担当。
香港・北京駐在を経て、2002年 4月より現職(国士舘大学21世紀 アジア学部教授)。
2002年4月中 国物流研究会に参加。
PROFILE

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