ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2004年5号
CLM報告
拡大EUがもたらす ロジスティクス業界の発展と課題

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MAY 2004 74 1 . はじめに 新たにEU(ヨーロッパ連合)加 盟候補となった国々のロジスティク ス市場は、ここ数年大きく変化して いる。
ロジスティクス戦略の採用は いまだに外資系企業が圧倒的だとは 言え、コスト削減や競争力強化を目 的とし、多くの地元企業もロジステ ィクスという考え方を受け入れはじ めている。
小売りと卸しの再編が進んで最新 の配送センターが増える一方、自社 で配送をまかなう企業の数は減りつ づけている。
アウトソーシングの利 点が評価されはじめて3PLプロバ イダーの起用が一般的となり、まさ にEUスタンダードが急速に普及し つつある。
そして二〇〇四年に一〇 カ国が新規加盟するEUの拡大が、 この流れを加速することはまちがい ない。
当レポートの目的は、EU拡 大に伴うロジスティクスサービス市 場の変化と、その課題を見定めるこ とにある。
昨年のレポートで報告したように、 パイプライン輸送以外にこの一〇年 間で取扱量が増えた輸送形態は自動 車輸送のみである。
モーダルシフト こそが、物流マーケットにおけるも っとも重要な変化である。
鉄道輸送 のシェアは低下し、その分自動車輸 送が伸びた。
そこで、拡大EU成立 にともなうモーダルシフトの動向が ここでの問題となる。
それに答える前に、次の二つの事 実を指摘しておきたい。
まず一つめ は、EUの物流政策は一九八五年の 白書(当時はEC)に明記されてお り、この分野での自由化・規制緩 和・民営化の推進が謳われているこ とである。
この政策方針とロジステ ィクス業界のトレンドという二つの 追い風を受け、自動車輸送は発展し た。
EUは九○年代、経済・行政の 両面から鉄道輸送の促進と自動車輸 送の抑制政策を推進したが、一○年 が経過した現在、その政策の限界が 明らかとなっている。
鉄道輸送のマ ーケットシェアは年々低下し続け、鉄 道輸送の中で複合輸送が占める割合 もわずか五%に過ぎない。
二つめは、一九九五年以降の加盟 国とそれ以前の加盟国との間の取引 が、著しく増加したことである。
オ ーストリアを例にとると、EU加盟 以前からドイツが主な貿易相手国で はあったが、九五年の加盟後はその 額が飛躍的に増加した。
以上から導かれる結論は次の通り だ。
ポーランドとドイツ、チェコとド イツ、スロバキアとオーストリア、ハンガリーとオーストリア、スロベニア とオーストリア、エストニアとフィン ランドといった、新旧加盟各国間の 貿易が大幅に増える。
その主な部分 はコンテナで運ばれる加工品であり、 自動車輸送がそれを担うことになろ う。
現在でもポーランド全貨物量の 八割は自動車輸送が占めるが、ポー ランド加盟後にはその割合がさらに 増えることは間違いない。
拡大EUがもたらす ロジスティクス業界の発展と課題 ――ポーランドを中心に 今年、新たにハンガリーやポーランドなど一〇カ国がEUに新規加盟する。
これに伴い新旧加盟国間の物流は確実に増加する。
同時にロジスティクス企 業同士の国際競争が激化するのも必至だ。
具体的に各国のロジスティクス事 業者はどのような影響を受けるのか。
ポーランドを中心に検証する。
W . ルイツコフスキー教授 グダニスク大学 交通政策学科 75 MAY 2004 2 . インフラの整備 新規加盟各国の道路事情は、それ ほど急激なトラック輸送の増加に対 応できるであろうか? 答えは否で ある。
一九八九年以前、中東欧諸国 の主要貿易相手国は当時のソビエト 連邦であり、その多くは国営鉄道が 担っていた。
道路網自体は相当発達 していたが状態はよくなかった。
一 九九○年以降は利用が頻繁になり、 道路の状態はさらに悪化した。
新規 加盟国のなかで高速自動車道路網が 発達している国は皆無である。
ポーランドでは九○年代、インフ ラ整備に二二億ユーロが投入され、 その資金はヨーロッパの各種の支援 基金や金融機関の融資によって賄わ れた。
ところがそれは鉄道の敷設や 都市の環状道路に費やされ、道路・ 高速自動車道の整備は後回しとなっ た。
民間が出資して有料の高速自動 車道を建設する計画も頓挫した。
ISPA(加盟前構造政策制度= 新規加盟十カ国が加盟にあたり、環 境・運輸面でEUの条件に適合でき るよう支援する欧州委員会のプログ ラム)基金は、二○○六年までに構 造基金(Structural Fund )から五 五億ユーロを新規加盟各国に投入す る予定だ。
この資金は輸送基盤の近代化に充 てられるが、その際しかるべき計画 立案をすることが重要となる。
なぜ ならEUからの財政的援助は、東西 ヨーロッパ間の主要輸送ルートとな る道路と鉄道網といった、EU自身 の利益にかなうものに割当てられる からである。
各地方や南北を結ぶ道 路は国内で資金を調達しなければな らない。
EUの各種支援基金の援助を受け るには、同時に国内からの出資がな ければならないのだが、その条件を 満たすことはなかなか難しい。
IS P A 基 金 は 二 五 % 、 結 束 基 金 ( Cohesion Fund )の場合は一五%を 国内から調達する必要があり、しか も申請手続は非常に煩雑である。
た とえば三○万ユーロを超えるプロジ ェクトだと、審査には九カ月かかる。
ひとつのISPAプロジェクトには、 およそ一○○件を超える申請が必要 となる。
契約相手の選定から契約書 の締結、建設の開始に至るまでの期 間が必要以上に長くなる一方、プロ ジェクトを実際に運営する時間は削 られることになる。
3 . 自動車輸送 貿易の活性化によってどのキャリ アがもっとも得をするか、という議 論をしばしば耳にする。
だがEUの 自動車輸送市場への参入自由化によ って市場が不安定化するとのEU諸 国(とりわけドイツ、オーストリア) の懸念は、杞憂にすぎないと思われ る。
新規加盟各国におけるドライバーの賃金やオペレーティングコスト の安さとともに、車両の質の低さを ドイツのフォワーダー各社は指摘し ている。
法律(一九九一年ポーランドで発 効)により、ポーランド国境をまた ぐキャリアには、国際市場での営業 許可取得が義務づけられた。
そのた め専門知識や車両についての厳密な 基準を満たさなければならなくなっ た。
車両については、しばしばEU RO1やEURO2スタンダードへ の準拠を求められ、国内物流は同国 籍の車両に限るというような制約が ある。
しかし車両の多くは長期契約 に縛られていて、国内用に随時レン タルできる余地があまりない。
そう した不定期のサービスを提供するに は、効果的なマーケティング戦略ば かりではなく、確固たる顧客層とネ ットワークが不可欠だからである。
新規加盟各国のキャリアは、いま のところこの分野には進出していな い。
また、新規加盟国のオペレーテ ィングコストが低いという議論には、 これらの国々の物流効率の悪さが考 慮に入っていない。
EU諸国と比較 して、燃料費はほんの少し安いだけ であり、エネルギーと通信費はほぼ 同等である。
ドライバーの賃金は安 いが、その一方資金調達コストは高 い。
新規加盟各国のキャリアに言わ せれば、トータルコストはEU諸国 と変わらない。
しかしながらこうした議論はフォ ワーダーやキャリアばかりか、EU の担当官たちにさえ認識されていな い。
したがって物流に関する交渉に おいては、五年で不定期の車両サー ビスを始めなければならないというEUの条件が足かせとなっている。
自 分たちの物流市場がEU諸国の企業 に取って代わられる、という新規加 盟国のキャリア各社が抱いている危 惧は説得力を持つようだ。
新規加盟各国には過去一○年間、 外国資本によるロジスティクスセン ターや配送倉庫が作られてきた。
外 MAY 2004 76 資系企業は通常、進出先の国籍をも つ車両を使用する。
したがって進出 先の国々で合法的に国内物流を行う ことができ、わざわざ前述の車両サ ービスの発展を期待する理由がない。
つまり国内物流を担っている新規加 盟各国の業者の立場は、EU諸国の 業者よりはるかに弱いのである。
大方の議論はヨーロッパの市場統 合によるビジネスチャンスより、脅 威の方に重点がある。
チャンスが生 まれるまでには相応の時間がかかる のはもちろんだが、いずれにせよE Uへの加盟によって規模の小さなキ ャリアは淘汰されることになるだろ うという意見が大勢を占める。
新規 加盟国の無数の零細業者にとり、市 場の変化に対応するのはきわめて困 難である。
新規加盟国の市場には従業員が数 人といった零細企業がひしめいてお り、一人でやっているケースも多い。
そうした企業がEU加盟後に生き残 るには、下請けかあるいは限られた 地域に徹するしかない。
もっとも収 益性の良い国内外の物流市場にサー ビスを提供できるのは、一部の大企 業のみとなろう。
ポーランドの自動車運送業者は現 在数万社を数えるが、そのうち従業 員九名以上の企業は一五○○社であ り、おそよ九割の車両保有台数は一 台から一○台である。
一○○台以上 保有するのは二○社にも満たず、し かもそのうちのほとんどに外国資本 が入っており、主に外資系企業にサ ービスを提供している。
二○○一年、ポーランドでは自動 車輸送に関する包括的な法律が成立 した。
それによると、業者には特別 な資格試験とともに、一台目には九 千ユーロ、二台目以降は一台あたり 五千ユーロの保証金を用意すること が義務づけられている。
家族経営の 小さな企業にはとても厳しい条件で ある。
しかも全部が前記の試験に合格し て免許を受けられるわけではない。
法 律で定められた項目を満たすのに二 年の猶予期間が設けられているとは いえ、近来の経済状況を考慮に入れ れば、条件をクリアできるのはごく 一部の業者に限られるであろう。
新規加盟各国にEUの規制が適用 されることで、キャリアには新たな 負担が増える。
前述の保証金が一台 ごとに必要となるうえ、国道にトラ ックを走らせることに対する課税も なされる。
新たな規制で必然的にキ ャリアの淘汰が進むが、それは主に ふたつの分野で展開するだろう。
一つめがメーカーとロジスティク ス・オペレーターとの関係で、メー カーはますます総合的なロジスティ クスサービスに関心をもつようにな ってきている。
二つめが業者同士、つまり大手による零細業者の吸収合併 である。
完備したインフラの利用が 可能になることと、クライアントを 探す必要がなくなるという点で、大 手と提携契約を結ぶことは、零細業 者の利益になると指摘する専門家が 多い。
また、中小規模の企業同士が 資本と組織を統合するのも選択肢で はあるが、ネットワークとインフラに かかるコストは大きくなる。
EU諸国の企業との競争より、む しろ景気後退からくる需要の落ち込 みの方がより深刻で、実際その傾向 は一年以上も続いている。
メーカー や貿易会社の物流部門との密接な関 係のおかげでこれまでやってきた零 細業者とっては、収入の道を絶たれ ることにもなりかねない。
一方、市 場が比較的安定している(食品関係 など)ことから、B to BとB to Cを 扱う業者の状況はそれほど悪くない。
4 . ロジスティクスサービス EU統合によりすべての分野で競 争が激しくなるが、そのうちのひと つがアウトソーシング市場である。
ポ ーランドでは全貨物量の六割以上が いまだに自社手配だが、ロジスティ クスサービス市場は急速に伸びてい る。
ポーランドにおけるロジスティク スオペレーターの売上げの伸びは、二 ○○○年が五三%、二○○一年では 二三%である。
その結果新規参入が 相次いだが、なかには年間売上げが 数百万から一千万ズロチ程度の企業 も多く、一九九九年にはこの規模の 企業の数が業界全体の四四%を占め た(一ズロチ=約二七円)。
しかしながら、市場の動向は年間 売上げが一億ズロチを超える大手企業が鍵を握る。
そのほとんどが外国 資本の援助で設立されたものであり、 多くはヨーロッパ系大手物流会社の 支社として活動を行っている。
こう した大手の数は十三%にすぎないが、 売上高は全体の六割以上を占める。
ポーランド市場で展開する外資系企 業が幅の広いサービスを提供する(平 均九種類)一方、ポーランド企業の サービスは通常七種類に限られる。
因 77 MAY 2004 みにポーランド市場で活動する上位 五七社のうち三五社は、一部に外資 が入っているかあるいは完全な外国 企業である。
ロジスティクスオペレーターはも ともとトラック運送会社であるケー スが大半である。
九六%のオペレー ターがこのタイプのサービスを提供 し、半数以上が倉庫サービスも行っ ている。
大手による配送倉庫の新設 はきわめて新しい動きであり、彼ら はフルレンジのサービスメニューを揃 えている。
ポーランドには設備の整 った公共の配送センターが存在しな いため、自前のセンターをもつ企業 の競争力と優位性には確固たるもの がある。
いまひとつの競争力の源泉 が通信インフラである。
eコマース に着目すると、ポーランド企業と外 国企業との技術的格差がはっきりと浮かび上がる。
eコマースを提供で きるのは、外国企業の場合四社に一 社の割合であるのに、ポーランド企 業は十一社につき一社、そして国営 企業には一社もない。
EU拡大はロジスティクスサービ スのさらなる発達を促すであろう。
貿 易取引額の増加で、より専門的で総 合的なサポートの必要性が高まる。
し かし、新たに創出される需要を取り 込むのは、新規加盟各国で展開する 外国企業であろう。
EU拡大後急速に発展すると予想 される市場は、クーリエサービスで ある。
新規加盟国のクーリエ市場は 多岐にわたり、外資系企業や国内の 大企業だけでなく、数多くの国営企 業や各地元の企業がひしめきあって いる。
クーリエサービスに対する旺 盛な需要は、こうした企業の急激な 増加が証明している。
ポーランドに おけるクーリエサービスの需要は、九 ○年代に年率四○%から五○%成長 した。
周辺各国も同様の伸びを示し ている。
二○○○年現在、ポーランド国内 で営業するクーリエは二二社あり、そ のほとんどが全ヨーロッパや世界に ネットワークを持つ外資系の大企業 である。
ポーランドのクーリエ市場 は一億七千五百万から一億九千五百 万ドルほどの規模であるため、まだ 発展の余地が大きく、今後数年間の 成長率は一五%から二○%と予想さ れる。
成長の主な要因はEUへの加 盟であるが、もっとも大きい伸びが 予想されるのは国内のクーリエサー ビスである。
国際クーリエサービス の占める割合は、現時点では金額ベ ースで二五%を占めるに過ぎない。
その結果Servisco や Stolica のような国 内専門の企業ばかりではなく、UP S、Masterlink 、TNTといった国 際的な大企業も国内クーリエサービ ス市場に参入している。
国際クーリエサービス市場への進 出に際し、いままで国内専門だった 企業には、より幅の広い補足的サー ポーランドにおける主な物流会社 持株会社 売上高2001年 (単位:100万ズロチ) 従業員数 倉庫面積 (?) 保有車両 台数 Raben Logistics Poiska Therab B.V. オランダ ―100% BLT AB, スウェーデン ―69.5% Deutsche Post AG ドイツ ―60% Polish Enterprise Fund IV, USA ―40% OY Schenker East AB, フィンランド ―87.75% FM Logistic, フランス ―100% Giraud, フランス ―100% Kosciuszko Inc., USA ―98.75% Kuehne&Nagel AG, ドイツ ―100% osoby fizyczne ポーランド/ドイツ P&O Transport Services NA B.V., オランダ ―100% Grupa Pekaes, ポーランド ―100% Spedpol Servisco Messenger Service Stolica Schenker FM Logistic Giraud Polska Euroad Kuehne &Nagel Delta Trans P&O Trans European Polska Pekaes Multispedyto 388.8 1250 100000 585 295.0 920 7500 1560 280.0 2600 32000 1542 200.0 2500 19000 1600 150.0 360 19400 441 137.0 1100 190000 730 130.0 390 96000 165 118.0 170 3790 234 111.5 360 44303 120 109.6 695 8500 284 300 70000 485 410 845 35000 808 MAY 2004 78 ビスが求められる。
この分野での競 争は、より総合的・包括的なサービ スを生み出すだけではなく、サービ スプロジェクト需要の増大をももた らす。
そうしたプロジェクトでは単なる 配送だけではなく、貨物に関するあ らゆる情報の提供が前提となる。
気 象衛星やWAP(ワイアレス・アプ リケーション・プロトコル)を利用 したインターネットによる貨物の追 跡は、今では常識となっている。
最 近の傾向では、eコマース決済の簡 易化に焦点が当たっている。
EU諸国との競争に巻き込まれる 結果、新規加盟各国のクーリエサー ビス市場は発展し、新たなセグメン トのサービスも出現するだろう。
総 合的なロジスティクスサービスを提 供するには、適切なテクノロジーと インフラが欠かせないが、これらへ の投資は高度に資本集約的であるた め、さまざまなアライアンスが模索 されている。
いくつかの国営の巨大 郵便事業体が新規加盟各国の市場に 興味を示し、独占体制の続く郵便サ ービスへの食い込みを狙っている。
さまざまなチャンスや脅威に加え、 いくつかの課題もある。
ひとつが自 動車輸送に関する法律の定める要件 を満たすこと、もうひとつが環境基 準の遵守である。
複合輸送の割合は、 経済構造進化の指標と見なしうるの かもしれない。
複合輸送にはコスト がかかるが、環境への負荷は小さく なるからである。
複合輸送が全鉄道輸送に占める割 合はポーランドではわずか一%だが、 EU諸国では五%にものぼる。
ポー ランドにおける環境意識の低さ、企 業の財務基盤の弱さ、さらには国か らの援助が乏しいことなどを考慮に 入れると、ポーランドで複合輸送が 飛躍的に伸びる可能性は低いと言わ ざるをえない。
複合輸送の発達を阻むもうひとつ の障害が、鉄道の状況である。
鉄道 需要の低迷と自動車輸送との激しい 競合のため、鉄道各社は深刻な財政 危機に直面しており、ほとんどの会 社がリストラを余儀なくされている。
そうした状況にありながら、各国政 府からの実質的援助を取り付けるこ とにも失敗した。
したがって、加盟 前の予備交渉において、ポーランド 側は三年の移行期間を、すなわちポ ーランドの鉄道網利用の完全自由化 の三年延期を求めた。
倉庫サービス市場はEU拡大の恩 恵をこうむると思われる。
市場の重 要な要素のひとつが配送センターで、 新たに建設されるセンターはヨーロ ピアン・スタンダードに合致してお り、市場自体も順調に成長している。
拡大EU発足後、自国が東西ヨーロ ッパ貿易の中継点として重要な役割を担うことを倉庫会社は望んでおり、 それは同時にロジスティクスサービ ス全体の需要増も意味する。
しかしながらEU統合で、あらゆ るレベルでの最新のITシステム導 入が必要条件となる。
もはやいかな る業種であれ、スムーズなオペレー ションにはITシステムが欠かせな い。
配送センターを運営するうえで は、顧客と事業のための情報を収集 することが決定的に重要なことにな っている。
最新の情報技術の導入で 通関手続きが迅速化し、カスタマー サービスの質が向上する。
拡大EU が発足すれば保税倉庫と通関業者は 存在しなくなる。
EUへの加盟で消 滅するのはこれらの市場だけである。
5 . 流通業界 新規加盟各国において最初に民営 化が進んだ分野が小売業界である。
いまだに主流は零細企業だが、スー パーマーケットのシェアは徐々に増 え続けており、しかも大部分のスー パーの少なくとも一部には外国資本 が入っている。
九○年代末、ポーラ ンドには四五万軒の小売店があり、 スペインはその二倍、イギリスでは 六倍にも及んだ。
ポーランドでは人 口八六人に一軒の割合であり、店舗 面積五○?以下の店が大多数を占め (九一・八%)、九八・七%は支店を 持たない単独店舗である。
近年、外 国企業の参入によって四○○?以上 の大型店が増えているが、そのシェ アは依然として微々たるものに過ぎ ない(〇・七%)。
eコマースに関し ては、端緒に付いたばかりであるた め、コメントは差し控えたい。
膨大な店舗が散在する状況下、配送の効率化はなかなか進まない。
市 場はそれぞれ独立した数多くのメー カー・卸売り・小売りからなる旧来 のシステムに依存しており、配送セ ンターを中心とする総合的サプライ チェーンの利用はまだごく一部であ る。
EU加盟を考慮に入れなくても、 段階的な小売網の統合が期待される ところである。
小売店の数が減れば それに応じたロジスティクスシステ 79 MAY 2004 ムが求められ、結果としてコストも 減るであろう。
以前のレポートで私は、卸売業界 は従業員二○人以下の中小企業が中 心であると報告した。
しかしここ数 年は急速な統合が進み、現在ではE U拡大に伴ういっそう激しい競争に 耐えうる態勢が整いつつある。
ポー ランド卸売業界のマーケットリーダ ーは理論上、上位一〇社の売上合計 額の四五%を占めるMarco Cash& Carry である。
しかし収益から家庭 用品の売上げを差し引くと、食品で はわずか三、四%のシェアとなる。
ポ ーランド全体の食品への支出は年間 一三〇〇億から一四〇〇億ズロチで、 そのうち卸売市場の規模は(大手ス ーパーが生産者から直接仕入れる額 を除く)九〇〇億から一〇〇〇億ズ ロチと推定される。
統合の進展は明らかで、一九九四 年には二万あった卸売業者が二○○ 一年には九五〇〇にまで減少してい る。
全般的な景気の減速にもかかわ らず、確固たる財政基盤・倉庫網・ 顧客を持つ企業は堅実な成長を続け ている。
また与信管理と債権回収能 力によってリスクを回避し、新たな セールスチャネルの模索も行ってい る。
ポーランドの卸売大手はさまざま な方法で資金調達を行っている。
Milo は海外の投資家を見つけ、DL SはM&Aを通じた吸収合併によっ て誕生し、Eldorado はベンチャーキ ャピタルの支援を受け二○○一年下 半期に株式上場した。
オペレーショ ンの方法は各社各様で、たとえば Eldorado は自前の小売チェーンを持 っており、一方のMilo は一九九七年 に国内全域をカバーする配送システ ムを完成させている。
ここで言及し た企業の大部分が、注文から出荷ま で二四時間以内に処理するシステム を持ち、全社がセルフサービスの cash&carry にも対応している。
6 . まとめ EU加盟によってポーランド企業 が直面する事態を分析した結果、大 多数がEU拡大のもたらす帰結には ほとんど無自覚であるとの結論を得 た。
五人以下の従業員をもつ経営者 の六七・九%はポーランドのEU加 盟には何の利点もないと考えている が、これが五○人から二五○人の従 業員を抱える経営者になると、その 割合は四九・八%に減る。
経営者た ちが利点として挙げる主なものは以 下の通り――資金調達方法の多様化、 市場の拡大、国境の消滅、外資系企 業との連携強化、などである。
会社の規模が大きくなるほどEU 加盟を積極的に評価する声も大きく なるが、マイナス面についてはほぼ 全員の意見が一致する。
企業規模の 大小にかかわらず経営者たちがもっ とも恐れているのが、EU諸国籍の企業との競争が激化することであり、 さらには規模の点で劣るポーランド 企業が外資系巨大企業によって市場 から締め出され、市場が外国製品に 席巻されることである。
しかしたとえマイナス面について 大方の意見が一致するとしても、企 業規模が大きくなればなるほど、脅 威論は影をひそめる。
EU加盟とそ の帰結に対するフォワーダーたちの 見解に関しては未調査であるが、私 見では脅威論が優位を占めるものと 思われる。
しかしながらこの分野の 最大手は外国資本であるため、彼ら はEU拡大をそれほど恐れてはいな いことを指摘しておかねばならない だろう。
すべての業務に免許と専門業者と しての認定が必要となる自動車輸送 に対するフォワーダーたちの意見に は、EU統合に対する彼らの態度が 反映しているかもしれない。
彼らの 見解によれば、新たな法律が施行さ れると、EUのキャリアが牛耳る市 場で競合をすることができなるくな る。
自動車輸送が採算に合わなくな ると恐れているのである。
マーケットに対するあらゆる規制 とEU基準の適用は、政府による過 度の干渉と見なされている。
新規加 盟各国におけるロジスティクスサー ビス市場の今後を占うにあたっては、 競争激化とサービス範囲の拡大によ り、ユーザー各社はロジスティクス を外注化して本業に専念できるよう になることを念頭に置く必要がある。
ロジスティクスサービス市場の発展 にはあらゆる要素が影響するが、な かでも特に重要なのは以下の項目で ある。
*輸送・倉庫のインフラ整備 *ロジスティクスセンターと複 合輸送用ターミナルの整備 *EDIを含むITシステムの 普及

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