ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2013年12号
物流不動産Biz日記
第9回 倉庫類似行為に気を付けろ

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

89  DECEMBER 2013  倉庫業の免許を持たずに荷物を預かって収 益を挙げている「倉庫類似行為」が問題にな っています。
物流不動産への投資が活発なの を背景に、空いた土地や建物を使って早くお 金を稼ぎたいと考える物流ベンチャーなどと コスト重視の荷主ニーズが合致して、無免許 で手っ取り早く事業化してしまうというケー スが見られます。
 立ち上げまでに時間が掛かりませんから、 コスト重視の荷主には都合が良さそうに見え ますが注意が必要です。
こうした無免許行為 によって、荷主が思わぬ形で火の粉をかぶる こともあるのです。
 荷主が倉庫業の免許を持っていない所に荷 物を預けた場合は、いわゆる場所貸し行為と なり法律上は不動産業に分類されます。
この ため保管する荷物に対して法的な管理責任は 問われません。
 では、もし預けていた荷物が傷んだまま出 荷されて消費者に届けられたら、その責任は 一体誰が取るのでしょうか。
 答えは荷主です。
荷主は供給者として安全 な製品を消費者に届ける責任があります。
そ の荷主が無免許の物流業者に保管を任せた結 果、傷んだ荷物が出荷されたわけです。
つ まり荷主は無免許の物流業者を選んだ時点で、 既にコンプライアンス違反を犯しているのです。
 倉庫類似行為が増えているのはなぜでしょ うか? これには監督省庁である国土交通省 の組織的な事情とも無関係ではないようです。
省庁再編前は倉庫業が旧運輸省、不動産業は 旧建設省の管轄でした。
この名残が今も国交 省に存在するといわれ、省内での法的な解釈 や整合性、組織間の連携には限界があり、結 果として倉庫業と不動産業の定義・区分があ いまいになっているからです。
 近年では法律や規制の強化・緩和が頻繁に 行われ、その解釈も年々分かりにくくなって います。
これまでも企業と消費者をめぐりさ まざまな訴訟が行われてきました。
その多く で荷主が責任を取らされています。
 私が見てきた事例でこのようなことがあり ました。
ある不動産会社が地主から販売の仲 介を任されました。
不動産会社はブローカー を通じて買い手を押さえましたが、実はその 物件は相続問題を抱えていることが後になっ て分かりました。
買い手はてっきり全部の土 地を購入できるものと思って事業計画を進め ていたところ、地主の意向で半分しか購入で きなくなってしまい、結局その事業を計画半 ばであきらめるほかありませんでした。
 計画が頓挫した買い手は訴訟を起こしまし た。
問題はここからです。
訴えられたのは無 免許のブローカーではなく、社会的に信用の ある不動産会社だったのです。
相続問題がま とまっていない物件を販売した責任があると いうのが理由でした。
 訴訟では社会的に地位があって、たくさん のお金を持っているところが一番のターゲッ トにされます。
訴訟は「取れるところから取 る」というのが鉄則なのです。
 被害や問題を起こせば、その企業は厳しい 大谷巌一(おおたに・いわかず) 1957 年生まれ。
高千穂商科 大学卒。
81年東京倉庫運輸入 社。
同社物流部門、不動産部 門を経て2003 年イーソーコ副 社長就任(現職)。
2010年イ ーソーコドットコム会長に就任。
現在に至る。
著書に『これから は倉庫で儲ける!! 物流不動 産ビジネスのすすめ』(日刊工 業新聞社)など。
PROFILE 第9回 倉庫類似行為に気を付けろ 批判や社会的制裁を受けることになります。
行政処分や出荷した製品の回収、売り上げの 減少、営業機会の喪失──など。
これに伴う 企業イメージのダウンや経済的な損失は、著 名な企業であればあるほど大きなものとなっ ていきます。
 このようなトラブルに巻き込まれないため にも、荷主は倉庫などの外注先がちゃんと免 許を取得しているかどうかを確認するととも に、場合によっては免許を取得させることも 考えなければなりません。
受託する企業も免 許や許認可を取得して、法的な責任をしっか り取れる体制を整えるべきでしょう。
 当たり前のことを怠って大きな代償を払う より、時間やお金が掛かっても事業に必要な 免許を取得したり、社員の資格取得を支援 するといった先行投資を惜しまない姿勢や取 り組みがもっと必要なのではないでしょうか。
阪急阪神ホテルズのメニュー表示偽装、ヤマ ト運輸の「クール宅急便」が常温で仕分けら れていた問題などを見ると、企業は今一度、 コンプライアンスについて考える時が来てい ると私は思います。

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