ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2004年6号
特集
ロジスティクスの手引き 本誌お薦め「使える物流本」12冊

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JUNE 2004 12 本誌お薦め「使える物流本」12冊 日本語で書かれたロジスティクスの教科書に決定版は いまだ存在しない。
それでも、実用書や先進企業のケー ススタディのなかには、実務家の役に立つ名著も少なく ない。
日頃、本誌編集部のスタッフがこっそりと紐解い ているロジスティクスの“ネタ本”を紹介する。
本誌編集部 A 新しく物流部門に配属された人や物流会社に就 職した人に薦められるようなロジスティクスの入門書 がなかなか見当たらない。
何かあるだろうか。
B SCMの本としては、やはりエリヤフ・ゴールド ラット「ザ・ゴール」(ダイヤモンド社)なのだろう。
同じように物流企業の経営本では、「小倉昌男 経営 学」(日本経済新聞社)は外せないところだ。
A しかし、両方とも実務にそのまま使えるような内 容ではない。
C 入門書として一つ挙げるとすれば、湯浅和夫「物 流管理ハンドブック」(PHP研究所)はどうか。
湯浅 さんの本で一番売れたのは「手にとるようにIT物流 が分かる本」(かんき出版)だろうが、タイトルから も分かるように内容はITに偏っている。
入門書とし ては「ハンドブック」のほうが適している。
新書判な ので持ち歩けるし、値段も税込み一三〇〇円と手頃 で、文章も読みやすい。
A 先日、阿保栄司ロジスティクス・マネジメント研 究所所長から今年三月に日本語の翻訳が出版された D . J . バワーソックス「サプライチェーン・ロジスティ クス」(朝倉書店)を紹介された。
バワーソックスと言 えばロジスティクスで有名な米ミシガン州立大学の教 授で学会の最高権威。
原書は米国の大学のロジステ ィクス学部で代表的な教科書として使用されているら しい。
B しかし税抜きで四八〇〇円は高過ぎるな。
文章 も読みやすくはない。
同書の原書が出たとき、編集長 はネット書店で取り寄せたものの結局、資料の山に埋 もれたままになっているのを私は知っている。
しかも 支払いは会社の経費だった。
A 最初は読破する気だったけれど、英語では…。
実 は阿保先生が同書を薦めた理由は、教科書として優 れているというより、米国の大学でロジスティクスを どう教えているかを知るのにちょうどいいということ だった。
といっても、言い訳にならないか。
まあ一回 は読んでおいていいはずだが、高いし、とっつきづら いのは確かだ。
B それよりも一般書籍ではないけれど日本ロジステ ィクスシステム協会監修「基本ロジスティクス用語辞 典」(白桃書房)。
あれを読む。
私自身、記者の仕事に 就いて最初の年にそれをやって随分助かった。
A さすが物流オタク。
C 中田信哉/重田靖男「物流部」(日本能率協会マ ネジメントセンター)はどうだろう。
物流部の役割を ブレークダウンして細かく羅列してある。
他にはない タイプの本で、物流部の仕事を一通り網羅している。
それと在庫管理の教科書としては平野裕之「在庫管理 の実際」(日本経済新聞社)が分かりやすい。
A 在庫管理の本には、実務には全く使えない?とん でも本〞も多いらしいな。
私なら勝呂隆男「適正在庫 の進め方・求め方」(日刊工業新聞社)を薦める。
実 務家向けに書かれた本だが、大学の教科書としても使 用されているそうだ。
また物流ではないけれど、やは り大学の教科書として使われている矢作敏行「現代流 通」(有斐閣アルマ)は、日本の流通問題が的確に整 理されている。
C 物流を含めたサプライチェーン全体の視野からと らえるにはうってつけだ。
A 教科書ではなくても、例えば「かんばん方式」の 本などはどうだろう。
C トヨタ本は大野耐一「トヨタ生産方式」(ダイヤモ ンド社)に尽きる。
しかし、普通の人がこの本を読ん でトヨタ生産方式を本当に理解できるかと言えば疑問 だ。
文章自体は読みやすいし、難しいことが書いてあ 解説 13 JUNE 2004 るわけではないが、あまりにも特殊な世界の話なので 頭にすんなりとは入らない。
実際、数あるトヨタ本の ほとんどは「トヨタ生産方式」の解説書か副読本のよ うなものだ。
A 解説書の中でお勧めは? C 最近のものでは山田日登志「ムダとり」(幻冬舎) が売れているようだ。
またトヨタ以外でも、例えば山 崎康司「P&Gに見るECR革命」(ダイヤモンド社) など、先進企業のケーススタディは参考になる。
A ケーススタディ中心の本としては、廃刊になった 日経ロジスティクス編集部編の「ロジスティクス経営」 (日本経済新聞社)があったが、今は手に入らない。
ま た、かなり古い本になるけれど物流業の経営には、米 国市場の規制緩和の影響を分析した野尻俊明「USフ レイト・インダストリーズ」(白桃書房)と、物流業を マーケティングの視点からとらえた中田信哉「運輸業 のマーケティング」(白桃書房)は名著だ。
ところがこ れも両方とも絶版らしい。
B 本誌が実際にネタ元として使っているのは、英語 だ け れ ど 米 C L M の 「 Journal of Business Logistics 」。
3PLのことならArmstrong & associates 、データはCass Information というところだな。
良く引用もしている。
ただし、専門用語を日本語に翻 訳する時に使える英和辞典がないので、いつも苦労す る。
専門辞書も欲しいところだ。
C 結局、書籍だけでは充分ではないので熱心な実務 家はツテを頼って先進企業を訪問したり、競合企業の 物流部門の人たちと意見交換するなどして勉強してい るのが実情のようだ。
A 日本ではロジスティクスの方法論が、まだ確立さ れていない。
いわゆる暗黙知の段階だということなの だろう。
エリヤフ・ゴールドラット 「ザ・ゴール」 (ダイヤモンド社) 税込み1680円  世界中でベストセラーとな ったSCMのバイブル。
サプラ イチェーン上の最も弱いプロ セスを制約として、制約に集中 して改善を行うことで全体の 生産性を向上させようとする「制 約理論」はここから始まった。
平野裕之 「在庫管理の実際」 (日本経済新聞社) 税込み872円  トヨタ生産方式、なかでもJ ITに関する本を50冊以上書 いている平野氏の入門本。
在 庫管理理論のほか、なぜ在庫 が悪いのかなどを平易に解 説している。
山崎康司 「P&Gに見るECR革命」 (ダイヤモンド社) 税込み1890円  著者はコンサルタントとし て米P&Gに深く食い込んだ いわばインサイダー。
ECRと いうバタくさいコンセプトを 抽象論に陥ることなく、実際 の業務に落とし込んだ形で分 かりやすく解説している。
小倉昌男 「小倉昌男 経営学」 (日本経済新聞社) 税込み1470円 「宅急便」の生みの親である ヤマト運輸の小倉昌男氏が自 らの経営経験を振り返った回 顧録。
そこで披露された小倉 氏の経営哲学と実践能力は 物流業界のみならず、広く産 業界全般から支持を得ている。
D.J.バワーソックスほか 「サプライチェーン・ロジス ティクス」(朝倉書店) 税込み5040円  現在、米国の大学で使用さ れている最も代表的な教科 書の一つ。
原書が大著である ため、翻訳版では割愛されて いる章もあるが、日本語で読 めるロジスティクスの教科書 としては貴重。
日本ロジスティクスシステム協会監修 「基本ロジスティクス用語辞典」 (白桃書房) 定価2730円  市販本としては日本で恐ら く唯一のロジスティクス専門 用語辞典。
97年に初版が発 行されて現在は第2版が販売 されている。
編集委員長は北 沢博前長野大学学長。
湯浅和夫 「物流管理ハンドブック」 (PHP研究所) 税込み1300円  本誌の読者にはお馴染みの 湯浅節をコンパクトにまとめた ハンドブック。
新書サイズで内 容もテーマ別に完結している ため、通読しなくても、デスク に常備して必要になった箇所 だけ読むという使い方ができる。
中田信哉/重田靖男著 「物流部」 (日本能率協会マネジメントセンター) 税込み1575円  神奈川大学で物流論の教 鞭を執る中田教授と資生堂 の物流部門責任者として活 躍した重田氏の二人が、物流 部の仕事とその役割を解説。
物流部門の仕事の概要を知 るのに便利。
大野耐一 「トヨタ生産方式」 (ダイヤモンド社) 税込み1470円  著者は日本が世界に誇るト ヨタ生産方式の生みの親とさ れる伝説のエンジニア。
副題 は「脱規模の経営をめざして」。
1978年の初版発行から現在 まで、色あせることなく読み継 がれているバイブル。
勝呂隆男 「適正在庫の進め方・求め方」 (日刊工業新聞社) 税込み1995円  実務家のほとんどが在庫理 論を信用していないし、使っ てもいない。
その理由を解説し、 実務に耐える適正在庫の計算 方法を提案している。
一部の 大学では在庫理論の教科書と しても使用されている。
矢作敏行 「現代流通」 (有斐閣アルマ) 税込み2100円  大学の専門課程および大 学院下級生向けに書かれた 流通論の教科書。
豊富な事例 を引きながら、日本市場の流 通を詳しく解説すると同時に、 流通理論を体系的に理解す ることができる。
山田日登志 「ムダとり」 (幻冬舎) 税込み1400円  トヨタの大野耐一氏に直接、 師事したコンサルタントの本。
トヨタ生産方式の考え方や、 具体的に現場で何をやるか がよく分かる。
右の「トヨタ生 産方式」と併読するといい。
ロジスティクスの手引き 特 集

購読案内広告案内