ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年2号
素朴な疑問
ERPで何が変わったのか?

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

83 FEBRUARY 2003 ERP(Enterprise Resource Planning:統合業 務パッケージソフト)が本格的に日本で普及したの は90年代の中頃のことでしたが、最も先進的な企業 では80年代末には既に実質的なERPの導入に着手し ていました。
ただし日本企業の場合は国内向けでは なく、海外の現地法人が最初です。
そうした先進企 業が基幹業務にパッケージソフトの導入を進めた結 果、それがどうも上手く動かないということに気づ き出したのが93〜94年ぐらいです。
その頃になってようやく世間でERPが騒がれ始め ました。
それまでのソフトウェアは経理、製造、物 流など機能別に種類が分かれていて、お互いの接続、 情報交換が容易ではありませんでした。
これに対し てERPは「オール・イン・ワン」。
一本のソフトで 全ての基幹業務をカバ ーする。
つまりERPは 何でもできる、という のがうたい文句でした。
もっとも、実情を知っている先進企業は当時、か なり冷めた目でそうしたERPベンダーのプロモーシ ョン活動を眺めていたようです。
それだけ先進企業 と一般企業にはタイムラグがあったのです。
実際、90年代の後半になると、ERPと呼ばれるパ ッケージソフトにも、それぞれ得意分野があること がハッキリしてきました。
そのためオール・イン・ ワンのパッケージとしてではなく、得意分野だけが 利用される形にERPの性格が変わっていきました。
こうして当初のコンセプトは崩れてしまったけれど、 パッケージの普及自体は進んでいきました。
その結果、何が起こったのか。
まずユーザー側に 業務パッケージソフトに対する抵抗感がなくなりま した。
“自社開発よりパッケージ”という流れが出 てきたわけです。
その影響は物流ITにも及びました。
物流分野でも80年代の初頭から、特定のオペレーシ ョン・システム(OS)の上だけで動く在庫管理や 運輸管理の小さなソフトは販売されていました。
数 十万円という値段のソフトです。
これに対してERPが普及した後には、より大規模 な物流ソフトがパッケージとして提供されるように なっていきました。
その代表がWMS(Warehouse Management System) とTMS( Transport Management System)です。
ここで言う大きい、 小さいとは、値段だけのことではなく、従来のパッ ケージが台帳レベルの身近なものだったのに対し、 今日のWMSが「製・販・物の統合」といった新し いコンセプトに基づいているというほどの意味です。
そんな「大きい」ソフトウェアを、自社開発するの ではなくパッケージとして導入しようというニーズ が、ユーザー側に生まれました。
同時にERPの普及は、ERPに対応した実行系ソフ トウェアのニーズを産みました。
もともと全てカバ ーするというのがERPの売り文句だったわけですか ら、そこには物流向けの機能もメニューとしては用 意されています。
しかし最近の統計を見ると、ERP を導入した企業の8 割は物流分野につい ては別の専用システ ムを利用しています。
日本に限れば、さらにその割合は高くなります。
ただし日本の場合は、パッケージではなく自社開 発した物流システムが主流です。
そのためERPを導 入するに当たって、レガシーの物流システムとERP との接続に大変な手間とコストが発生しています。
それによって物流システムの機能が強化されるわけ ではないので、もったいない投資と言えます。
これに対して今日のWMSパッケージはもともと 標準化されたインターフェースを採用しているため ERPとの接続が容易です。
インターフェースにかか るコストを、機能の強化に回すことができるわけで す。
そのためERPを導入した企業の多くが結果とし て、レガシーの物流システムを捨て、WMSやTM Sなどのパッケージを導入するという流れになって います。
ERPで何が変わったのか? 接続の手間からレガシーの利用を断念 物流パッケージへの切り替えが進む たなか・すみお 物流企業系シス テムハウスを経て、91年に独立。
エ クゼを設立し、社長に就任。
製造・ 販売・物流を統合するサプライチェ ーンシステムのソリューションプロ バイダーとして活動。
2001年10月 に「フレームワークス」に社名変更 フレームワークス 田中純夫社長

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