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親会社もアセットの一つ
ロジスティクス・プランナー(以下、ロジ
プラン)は二〇〇〇年十一月に設立された。
それまでニチレイの低温物流企画部が展開し
ていた3PL(サードパーティ・ロジスティ
クス)サービスを、本格的に事業化する目的
で機能分社したもの。 同社の資本金七億円の
うち、ニチレイが六六%、NTTデータが三
四%を出資している。
親会社のニチレイは、国内に約七〇カ所の
低温物流拠点を擁する日本最大の冷蔵倉庫
業者だ。 倉庫での保管業務の他にも、大手量
販店向けの共配センター事業や、子会社の日
本低温流通(NTR)を通じた輸配送事業、大
手との業務提携による宅配事業などを展開し
ている。 グループ全体の低温物流事業の売り
上げは国内だけでも一〇〇〇億円を超え、日
本有数のネットワークを誇っている。
そのニチレイグループのインフラをバック
ボーンに持ちながら、ロジプランはあえて資
産を持たない?ノンアセット型〞の3PLを
志向している。 この事業コンセプトは、ニチ
レイの低温物流企画部が3PLサービスをス
タートした時から掲げていたもので、これを
実現するためにロジプランとして事業体を分
離したと理解すると分かりやすい。
ロジプランのビジネスは、物流改善や再構
築を進める荷主企業にソリューションサービ
スを提供することで成り立っている。 拠点配
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ニチレイ子会社のノンアセット3PL
洋菓子メーカー3社の共配事業を運営
冷蔵倉庫業で日本最大手のニチレイを親会
社に持ちながら、本格的な「ノンアセット型
3PL」を志向するロジスティクス・プラン
ナー。 荷主への改善提案だけでなく導入・運
営にも携わり、その成果に対して報酬を得る
という事業コンセプトで市場を開拓している。
昨年夏には中部地区で洋菓子メーカー3社の共
同配送事業を軌道に乗せた。
ロジスティクス・プランナー
――3PL
置から在庫計画、輸配送ルートなどの物流シ
ステム全体を、顧客とともに見直して効率化
する。 そのための最適な仕組みを構築するの
が、ロジプランの3PL事業だ。
倉庫や車両を保有する「アセット型」の事
業者が同様のサービスを提供しようとすると、
どうしても保有資産の有効活用を前提に仕組
みを考えてしまう。 このため、必ずしも?最
適〞な拠点やルートを設定できない。 資産の
制約を受けない「ノンアセット型」の方が、
最適サービスを提供するうえで適していると
ロジプランは判断したわけだ。
だが一方で、3PLビジネスは、物流拠点
と輸配送ネットワークなくしては成り立たな
い。 その点ロジプランは、「ノンアセット型」
として資産の最適な組み合わせによるサービ
スを提供できると同時に、ニチレイの有力な
ネットワークをアセットの一つとして選択す
ることも可能だ。 それが同社のユニークなと
ころであり、最大の強みでもある。
効率化が進むほど収益が増える
そのノンアセット志向は、同社の掲げるも
27 JULY 2003
う一つの事業コンセプトとも密接に関連している。 ニチレイとともにNTTデータがロジプラ
ンに出資していることからも分かるように、
同社は低温物流技術と情報技術を組み合わせ
ることで、ロジスティクス分野における新た
な需要を開拓しようとしている。 顧客に対し
て単に物流改善の提案を行うだけでなく、荷
主と倉庫業者や運送業者の間を調整するとい
う形で、提案した仕組みの導入・運営にまで
携わる。 そして実際の改善によって荷主企業
が得た成果に対して報酬を得る、いわゆるゲ
イン・シェアリング(成果報酬)の考え方をと
っている。
提案した仕組みを顧客が導入したことによ
って物流効率化が進み、前年よりもコストが
下がった場合に、ロジプランは新たに発生し
た利益をユーザーと分け合う。 つまり導入効
果が実際にでなければ、ロジプランも収益を
得ることができなくなってしまう。
一般的な物流事業では、荷主企業の効率化
が進めば事業者の収益は減る。 ロジプランの
収益構造はこれとは逆で、効率化が進むほど
収益が増える。 この収益構造のもとでは、コ
スト削減に取り組むスタンスが荷主と同じに
なり、顧客と一心同体の関係を築くことが可
能になる。
このためロジプランは、荷主の立場に立っ
て効率化を考えることができる。 そのうえで
長年にわたる低温物流事業の運営で培ったプ
ロの目で最適な拠点やルートを選択し、さら
にはコスト競争力のある協力物流業者の選定
まで行う。 「ノンアセット型」と「成果報酬」
という事業コンセプトをとっているからこそ、
こうした姿勢で事業に取り組める。
二〇〇〇年十一月に発足してからロジプラ
ンが初めて手掛けた3PL事業は、健康飲料
などを全国に販売する冷凍食品メーカーの物
流再構築だった。
この冷食メーカーは九州の博多工場で作っ
た製品を、販売代理店を通じて全国の消費者
に届けている。 従来は、工場近くの倉庫と、
東日本に設置したデポ(在庫拠点)の二つの
拠点から、それぞれ西日本と東日本の販売代
理店に製品を配送していた。 このため各拠点
のカバーする配送エリアが広く、物流費に占
める配送コストのウエートが高かった。
そこでロジプランは、拠点数と物流フロー
の見直しを行った。 ブロック単位で全国に九
カ所のデポを設置し、各デポでエリア内の配
送をカバーするシミュレーションを実施。 そ
の結果、トータルで年間の物流費を三億円減
らせることが分かった。 デポの数が増えるた
めに幹線輸送はコストアップになるものの、
デポからの配送距離が短くなることで配送費
が大幅に減るのが大きかった。 しかも保管料
は従来とほぼ変わらない。
この案件はニチレイの低温物流企画部の時
代に着手し、ロジプランが引き継いだものだ。
にもかかわらず実際に選定した九カ所のデポ
ロジプランの石川善三常務
テーマ〞を探し出し、その解決策を提供し続けなければならない。 だからこそ新たな仕組
みが動き出した後も、ロジプランは荷主企業
と物流事業者を交えた会合を定期的に開いて
いる。 計画通りコストが減っているかを検証
すると同時に、各種データをもとに新たな課
題探しを行っているのである。
別に手掛けたあるアイスクリームメーカー
の物流改善では、物流システムを提案した後
の物流管理業務までロジプランが代行してい
る。 ロジプランの東京のオフィスにアイスク
リームメーカーの端末を置き、群馬県にある
メーカーの物流拠点の在庫を管理しながら、
入出庫の指示や車両の手配を行っている。
こうして日常業務の運用を通じて実態を把
握しながら、改善のネタも探す。 そして毎年、
テーマを決めて継続的な改善に取り組む。 こ
れがロジプランのソリューションサービスの
基本スタイルとなっている。
共同化で二割のコスト減を実現
設立二年目の二〇〇二年夏、ロジプランは
中部地区で洋菓子メーカー三社(不二家、コ
ンフェクショナリーコトブキ、タカラブネ)の
チェーン店向け共同配送事業をスタートした。
ロジプランにとってこの事業は、ノンアセッ
ト型3PL業者としての実力を問われる試金
石ともいうべきものだった。
洋菓子メーカー三社は従来、個別に物流改
善を試みていた。 ここに各社単独での改善は
限界と見たロジプランが共同化を提案。 一昨
年の春に共同化の研究会を立ち上げ、三社の
配送先が最も多い中部地区の四県(愛知・岐
阜・三重・静岡)を舞台に検証を行った。 そ
の結果、充分なコスト削減が見込めるという
確信を得られたため、一年近くに渡るプロジ
ェクトを通じて新たな仕組みを構築した。
以前の中部地区での三社の配送体制は、コ
トブキが小牧に、不二家が名古屋に配送セン
ターを設け、タカラブネは愛知県内の工場を
拠点に、それぞれのチェーン店に製品を納品
していた。 これを三社の配送先などのデータ
を基に、拠点配置と配送ルートをシミュレー
ションして最適化。 配送拠点を、不二家の名
古屋配送センターとタカラブネの工場内拠点
の二カ所に集約して、三社の配送業務を再構
築することにした。
新たな仕組みでは、関西地区にあるコトブ
キと不二家の各工場から、いったん不二家の
名古屋配送センターへ全製品を搬入してしま
う。 その後、もう一つの共配基地であるタカ
ラブネの工場拠点との間で各配送エリアの製
品を転送し合い、二つの拠点から三社の製品
を共同配送する。
この共配事業では、夜間から早朝にかけて
の短いリードタイムで、出荷から、二拠点間
の転送、クロスドッキング、顧客配送までを
行う必要がある。 オペレーションのタイミン
グをいかに合わせるかが、運営面の重要なポ
イントになる。
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のうち、ニチレイの運営による拠点は九州の
デポだけ。 「ノンアセット型」というスタンス
が、すでに確立していたと言っていい。
そして、この冷食メーカーとの取り組みは、
ニチレイが本格的に3PL事業を展開するき
っかけになった。 いまロジプランが掲げてい
る「効率化の
成果に対して
報酬を得る」
という事業コ
ンセプトへの自
信も、このとき
の経験を通じ
て生まれた。
一般に物流
改善の効果は、
取り組みの初
年度には大き
くても二年目
以降は小さく
なる。 また、物
流を取り巻く
環境が変われば
?最適化〞の与
件も変わる。
ロジプランが
企業として成
長するためには、
常に収入源で
ある?効率化の
東日本デポ
A社生産工場
図1 冷凍食品メーカーA社の「在庫拠点・物流フローの見直し」
首都圏に3カ所
名古屋
仙台
大阪
愛媛
広島
札幌
A社生産工場
改善前 改善後
N N
これを滞りなく実現するため、ロジプラン
が元請けとして共配事業全体の運営にあたっ
ている。 ただし商品特性や配送形態から専門
性の高い配送業務については、従来の運送業
者に引き続き業務を委託。 運賃単価は変更せ
ずに、ルートや仕組みを見直すことで車両台
数や走行距離を減らして、コストを削減する
ことを狙った。
中部地区のメーカー三社の配送先店舗数は
三〇二カ所。 従来は三社合わせて二八台の車
両で配送していた。 各社のチェーン店が配送
先のため、共同化しても配送する店舗数に変
わりはないが、ルートを見直すことによって
台数を二〇台まで削減できた。 また総走行距
離も、月間で一五〇〇キロメートル減った。
ロジプランは当初、店舗数の少ない地域の
方が共同化の効果を期待できると予想してい
た。 だが現実には、名古屋市内のように店舗
の密集する地域の方が、店舗間の距離が短く
なるため共同化による効果は大きかった。 結
果として三社合計で年間七〇〇〇万円の配送
コストを削減できる見通しが立った。 従来よ
りも二割近く下げられる計算だ。
共配事業は、洋菓子需要のピークとなる昨
年暮れのクリスマスシーズンを乗りきったこ
とで軌道に乗った。 現在、ロジプランは、三
社の共同配送に外食産業などの異業種・異業
態の企業を組み合わせた新たな仕組みを検討
している。 参加企業を増やすことでさらにコ
スト削減を進め、その成果を先行三社にも還
元していきたい考えだ。
また中部地区以外の地域で、別の共同化プ
ロジェクトも進めている。 中部で実践してい
るような、同じ時間帯に、同じエリア内の配
送を共同化するという方法にはこだわらず、
店舗配送の時間帯を昼間と夜間に分けること
で車両を有効活用する共同化なども検討して
いる。 「共同化は物流効率化の効果も大きい。
バリエーションを増やしながら、事業の大き
な柱にしていきたい」とロジプランの石川善
三常務は言う。
この中部地区での共配事業で、同社は保管
や配送にニチレイグループのアセットをまっ
たく使っていない。 これはロジプランの手掛
ける3PL事業のなかでも初めてのことだっ
た。 石川常務は「ノンアセット型と言いなが
ら、ニチレイグループ以外のアセットを開拓す
るのは決して容易ではなかった」と振り返る。
当初は、協力物流業者に見積もりだけの当
て馬と警戒されるのを恐れて、自分たちの方
が必要以上に慎重になっていた面もあったと
いう。 だが、具体的に案件を進めるにつれて、
予想以上に新たな協力物流業者を開拓する余
地があるという感触をつかんだ。
「我々のビジネスは、アセットを拡大するこ
とでメニューをどれだけ増やしていけるかが
勝負。 荷主企業と同様に、アセットを提供し
ていただく物流事業者さんも我々にとって大
切なパートナーだ。 両方から信頼されないと
長続きしない」(同)
ASPで物流を一元管理ロジプランでは情報システムの基盤整備も
進めてきた。 在庫管理や入出庫依頼などの倉
庫管理情報を顧客に提供する情報システム
「LMS(ロジスティクス・マネジメント・
システム)」を開発(図2)。 昨年一〇月にA
SP(アプリケーション・サービス・プロバ
イダー)サービスによる顧客へのテスト導入
を開始し、今年一月から本格展開している。
これまでに食品メーカーなど一〇社に対して
サービスを提供した実績を持つ。
複数の物流業者を組み合わせることで業務
を最適化する3PL事業では、倉庫管理シス
テムが倉庫業者ごとにまちまちになってしま
う。 顧客の利便性を高めるためには、複数の
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図2 物流を一元管理する「LMS」の基本機能
LMS
在庫管理
配送
ベンダー
配送業社
補充示唆
(物流情報)
物流拠点
小売業
配送指示情報
入出庫指示
入出庫指示
物流情報
発注
物流情報
在庫管理
受注
倉庫管理
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事業者の拠点を選択しても管理を一元化でき
るような仕掛けが要る。 その役割を「LMS」
が担う。
「LMS」を倉庫業者の固有の情報システ
ムとインタフェース(接続)することによっ
て、業者ごとのシステムがバラバラでも、荷
主サイドでは在庫や入出庫管理を一律に行う
ことが可能になる。 すでに全国のニチレイの
拠点七〇カ所との接続を終えており、今後は
ニチレイ以外の事業者に積極的に接続を働きかけていく方針だ。 昨今、小売りチェーンの間では、店頭の販
売状況を見ながら必要な分だけ商品を仕入れ
る傾向が強まっている。 このためメーカーや
卸の多くは、小売りチェーンの指定する物流
センターに在庫を持って発注時に欠品を起こ
さないように管理している。 こうした仕入れ
形態が増えてきた結果、メーカーや卸などの
ベンダーの在庫拠点は分散化して、管理負担
が大きくなるという状況が生まれている。
複数の拠点の物流管理を一元化できる「L
MS」は、こうした悩みを抱えるメーカーや
卸の管理業務の負担軽減も狙っている。 ユー
ザーはインターネット経由で「LMS」にア
クセスし、その画面上で拠点ごとに商品別在
庫数・入庫予定・入出庫履歴などを検索し、
入出庫指示を出すことができる。 製造ロット
や賞味期限を指定した対応も可能だ。
3PL事業のポータルサイトともいうべき
このソフトの目玉の一つが、バーチャルに在
庫設定を行う「割り当て機能」だ。 ベンダー
が一つの倉庫で複数の取引先向けの商品を管
理する場合、通常は同じ商品でもロケーショ
ンを分けている。 このため管理は煩雑で、保
管効率も悪くなってしまいがちだ。
こうした事例に「LMS」の「割り当て機
能」を使えば、かなりの効率化が見込める。
現場では一つのロケーションにまとめて商品
を保管しながら、情報システム上では取引先
別に管理し、出荷状況に応じて自在に在庫を
振り替えるといったことも可能になる。
例えば図3のように、ある商品を取引先A、
B、C社向けに出庫したとする。 このときシ
ステム上(バーチャル)では自社枠の在庫か
ら補充しておき、実際には在庫数全体のバラ
ンスを考えながら最小限の数だけ補充するこ
とができる。 同じ商品でも取引先ごとに出荷
量のバラツキがある場合などは、最適な総在
庫数の設定に有効な機能といえる。
さらに「LMS」を使えば、こうして在庫の
振り替えを行った結果をリアルタイムで取引
先と共有できる。 また荷主からの「出庫依頼
情報」を、運送業者側がダウンロードして「配
送指示情報」として活用することも可能だ。 このソフトはロジプランにとっても欠かせ
ない役割を担っている。 「LMS」に蓄積さ
れたデータから、同社は新たな改善提案のヒ
ントを探ることができる。 データ分析を基本
とするソリューションビジネスにとっては有
効なツールであり、今後の事業展開に大きな
意味を持ってくるはずだ。
現在、ニチレイグループは業務提携や資本
提携による低温物流ネットワークの強化を急
いでいる。 そのなかにあって「ノンアセット
型」で独自の3PL市場を開拓する同社の存
在は、物流業がネットワークとソリューショ
ンという二つの軸で展開するビジネスである
ことを改めて示唆している。
(フリージャーナリスト・内田三知代)
図3 LMSの割り当て機能
出 庫
自社 A社 B社 C社 自社 A社 B社 C社 自社 A社 B社 C社
自社 A社 B社 C社
自社向け
A社向け
B社向け
C社向け
合計
LMSシステム内
ベンダー在庫管理
200ケース
200ケース
150ケース
100ケース
650ケース
割当変更 入 庫
倉庫内は一山で
管理。 顧客別に
山を分ける必要
はない
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