ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年7号
海外論文
貨物輸送ロジスティクス(後編)

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JULY 2003 80 現在の道路、鉄道、航空路、港湾の各インフラは、 大きな圧力下にある。
ヨーロッパの航空貨物輸送の多 くは、新騒音規制に合わせて新規投資を余儀なくされ るだろう。
鉄道ネットワークでは、乗客量も増大する 中で、一度により多くの貨物を、主要ルートを使い輸 送できるよう調整するという圧力が強まってきている。
ヨーロッパの一部の道路ネットワーク、特に、主要都 市の中心部と高速道路で能力的に限界にきている。
輸 送部門、特に道路輸送の環境負荷削減圧力は強まりを 見せている。
また同時に、輸送モードのみに基づき優先順位を決 定するのではなく、システム全体的な視点から優先順 位を決定することを重視して、輸送インフラへの投資 に関わる意志決定プロセスを改善する必要性が強まっ ている。
さらに、新たなITS技術への投資を拡大し、 標準化されたシステムを開発し、ひいてはあらゆるイ ンフラ間で統合的に効率性を改善する必要性がある。
4―2 新たな財務・統制計画の必要性 伝統的に輸送システムの開発には民間部門が重要な 役割を果たしてきた。
政府側はインフラに対し、国家 的なレベルで計画化、設計、建設基準、種々の要件に 政策的に強い影響力を持ってきた。
主要インフラに関 しては、歴史的に一貫して、その多くが民間部門の投 資からではなく政府投資によって確立されてきた。
そ こには、インフラは公共財であり、政府が責任を負う べきとする前提がある。
しかしながら、数多くの国家で、民間部門が自ら必 要なインフラへの投資ならびに統制を拡大し、政府に よる借り入れへの依存を大きく低減させる方向への圧 力が強まりつつある。
この点に関しては、事業活動と 商業的に直接的なつながりがあることを考えて、ロジ 第4章 ロジスティクス インフラの整備 4―1 ロジスティクス・インフラ 開発の必要性 eコマースの急速な成長は、配送面での素早い対応 を求める。
企業側も顧客の要求に直接応えうる、洗練 された短ライフサイクルのカスタム化された製造工程 の維持に一層の拍車が掛かる。
効率的なロジスティク ス・システムを実現しうるのであれば、貨物輸送活動 の国際化には政府間での活動の調整が求められる。
し かしながら、民間部門のキャリアと荷主側から、短期 間かつジャスト・イン・タイムでの配送スケジュール で貨物輸送するための施設改善要求が強まる中で、政 府にとって輸送インフラへの融資はますます困難な状 況にある。
このような傾向は、サプライチェーンの機能と要件 を急速かつ絶え間なく変化させている。
この変化には 柔軟性が要求されるが、そのコストはインフラ提供コ ストに反映される必要があるだろう。
アジア太平洋、ヨーロッパ、アメリカ 地域を超えて共有される課題と解決 経済協力開発機構(OECD)TRILOGプロジェクト報告 訳 福山平成大学門田清 助教授 政府はロジスティクス・インフラのニーズを 把握し、民間の資金を使ってこれを効率的に充足する必要がある。
また変化する人的資源ニー ズの支援には公平と効率のパラダイムに基づい た訓練・資格体系の整備が求められる。
OEC Dレポートの後編では、 環境面等での対策に 続き、グローバルな社会的最適化に向けて政府 が採るべき政策と、その効果性測定のための指 標の開発を解説している。
81 JULY 2003 スティクス・インフラの提 供が鍵を握る標的分野であ る。
ロジスティクス・インフ ラに関わる新たな計画が必 要となるのは、主として次 の四つの理由からである。
まず、道路に関して特にそ うであるが、輸送インフラ への政府支出は他の部門か らの監視圧力が一層強まっ てきていることがある。
そ の結果、新たなロジスティ クス・システムに対する需 要が拡大している中で、そ れに見合うだけの公的資金 を確保できない場合が多い。
次に公的資金では、効率 性は確保できないというこ とがあろう。
インセンティ ブがあまり働かない構造で は、資源と財務リスクのど ちらの管理にも失敗してし まいがちである。
第三に、 公的部門では、公的サービ スの提供に掛かるフルコス トをその利用者からの徴収 で賄うことはほとんど期待 できない点、第四に、自動 料金収受システムのような 新技術を利用できるように なり、専ら民間部門だけで サービス提供が可能となっ ている点を指摘できる。
4―3 公的部門と民間部門との パートナーシップ 独立した民間企業、ビルド・オペレート・トランス ファー(BOT)を含むプライベート・ファイナンス・ イニシアティブ等の公的部門と民間部門の合弁事業と いうように、革新的な投資計画には多様なものが考え られる。
4―3―1 政府から独立した民間企業 コスト最小化、開発の非効率性の低減、利用者への より高い価値の提供に対するインセンティブが、民間 部門の関与によって高まりを見せている。
しかしなが ら、民間投資の利点を相殺してしまいかねない問題も いくつか存在する。
民間部門の利潤目標は、コスト削 減の結果もたらされるプロジェクトの負の側面(例え ば、渋滞、環境の漸次的破壊)を軽視する傾向にある だろう。
また、空間的文脈での独占的価格付けの危険は考慮されなければならない。
民間部門の関与が魅力的であることから、政府側は、 民間部門に重要インフラのプロジェクト、プログラム、 サービスを任せる姿勢を強めている。
これは、政府側 の統制を少なくし、公共サービスの管理コスト低減に つながるだろう。
一つの組織的戦略として考えられるのは、公的企業 の確立だろう。
こうした独立した政府の代理機関であ れば、民間の資金を使って、環境に対し健全な輸送プ ロジェクトを識別、促進、支援する役割を果たし得る だろう。
このような代理機関は、公共部門と民間部門 との架け橋となる。
しかしながら、その設立のための 適正な認可要件を明確にし、(他の)民間企業による開 発と重ならないようにしなければならない。
要 約 共通の調査結果と推奨政策措置 第1章 グローバル貨物輸送ロジスティクス 1 ― 1 貿易ネットワークの発展 1 ― 2 ロジスティクスにおける趨勢 1 ― 3 推奨政策措置 第2章 ロジスティクスを支援する情報通信技術 (ICT)の開発 2 ― 1 情報社会におけるロジスティクスの進展 2 ― 2 先進の情報技術と技術革新がロジスティクスに及ぼす効果 2 ― 3 推奨政策措置 第3章 マルチモーダル輸送とロジスティクス 3 ― 1 持続可能な輸送の必要性 3 ― 2 マルチモーダルの特徴 3 ― 3 ロジスティクスとモード間輸送 3 ― 4 マルチモーダル輸送に対する障害 3 ― 5 推奨政策措置 第4章 ロジスティクス・インフラの整備 4 ― 1 ロジスティクス・インフラ開発の必要性 4 ― 2 新たな財務・統制計画の必要性 4 ― 3 公共部門と民間部門とのパートナーシップ 4 ― 4 インフラ・プロジェクトにおけるコスト最小化 4 ― 5 コストの配分 4 ― 6 地域的課題 4 ― 7 推奨政策措置 第5章 技能と訓練に対する要件 5―1 ロジスティクス産業における労働市場の特徴 5―2 ロジスティクス産業における変化 5―3 ロジスティクス産業における変化が人的資源に及ぼす影響 5―4 推奨政策措置 第6章 ロジスティクス・システムの評価     ――指標の開発 6―1 ロジスティクス成果指標の開発目的 6―2 新指標の必要性 6―3 新指標開発に向けた推奨措置 後編 中編 前編 JULY 2003 82 4―3―2 プライベート・ファイナンス・ イニシアティブ(PFI) PFIの概念は、公的部門、民間部門の両方に新規 機会を生み出してきた。
輸送インフラに関する民間部 門からの投資には、公的部門と民間部門との間のパー トナーシップが考えられるべきである。
国内、国際両 市場で拡大を見せる民間資本の潜在能力は、投資家が 輸送インフラへの投資から生み出されるキャッシュフ ローに対する企業期待を正当に形成できるような、明 確なルールを導く政策改革を行うことで高めうる。
4―4 インフラ・プロジェクトにおける コスト最小化 ロジスティクス・インフラに投資する際の目標は、効 率的によく管理されたプロジェクトを創出しコスト最 小化を図りつつ、インフラへの投資から得られる報酬 を最大化することにある。
投資から期待される報酬は、 リスク水準を反映している。
従って、適正なリスクの 識別、配分、管理が、最もコスト効果的で効率的な財 務構造とするうえで重要となる。
リスクを適正に識別できない場合、特有のコストを 過小評価する結果となるだろう。
例えば、納税者が関 連リスクを引き受けているということを考えれば、こ の点からのみ、公的資金は安価なものと考えられる。
効果的なリスク管理は、投資提案を行う際の重要な 要素である。
契約の際、予測可能なあらゆるリスクを カバーしようと努めるが、インフラ・プロジェクトには 常に変化がつきまとうという性質がある。
これは元来、 インフラ・プロジェクトがその計画化から、完成、操 業まで長期的規模でなされるという性質からきている。
ロジスティクス・インフラには、その開発と操業の両 段階で変化する必要性があろう、建設リスクと操業リ スクが存在する。
また、需給面での変化、マクロ経済 的変化、収用の脅威を含む政策上の変化が起こる可能 性がある。
変化する環境にプロジェクトを適応させるための管 理努力がこれまでなされてきた。
例えば、民営化され た公道プロジェクトに対する政策調整には次のものが ある。
a)まず、有効性に疑問の出てきた建設計画は、 優先順位を下げ建設期間を延ばすことを認めるための 建設計画の再調整、b)輸送需要のある場合のみ高度 化が正当化される、車道の段階的建設、c)輸送需要 の低いインターチェンジ建設の差異化である。
リスク配分に責任を持つものは、問題の改善をでき る限り素早く行い、遅延のリスクを最小化し、特に、重 要な問題には素早く識別、解決を図るためにも、諸問 題に対する反応をよくする必要がある。
最小のコスト と遅れで変化に順応するためにも、再交渉が可能でな ければならない。
統制が再交渉に影響するのは明らか である。
従って、統制に従い、最も効率的に交渉でき る状況にある者たちが投資に関わるべきである。
最もリスク管理能力を持つ者たちが、そのためのイ ンセンティブを与えられるべきである。
インセンティブ を基礎にして成果を求めることで、計画を成功させリ スクを管理できた者には、適正な報酬が確実に与えら れることになろう。
プロジェクトの出資パートナーは、 単に出資比率を抑えリスクを分担し合うだけでなく、真 の公・民間のパートナーシップ協定を成功させること による利益を共有すべきである。
報酬の配分比率は、当 初のリスク配分に関係づけられるべきである。
どのパ ートナーにも適正に配分し得ないリスクは、できる限 り広く分散させるべきである。
多くの輸送プロジェクトは、政府保証を求める相当 の商業的、政策的リスクを伴う。
リスクに対する政府 保証は、民間投資と公・民間パートナーシップにおけ る主要課題である。
政府がリスクのほとんどを背負う のであれば、民間部門はコスト最小化に対するインセ ンティブを失うことになる。
他方で、政府側がリスク を負わないのであれば、プロジェクトはリスクが高すぎ て、民間部門の投資の誘因にはなり得ないだろう。
こ の協定には、微妙なバランスを維持することが要求さ れる。
主たる環境保護努力と保証とを一致させることが特 に重要である。
例えば、民間の道路通行料徴収権者は、 他の民間輸送モードや公共輸送機関からの競争を阻害 してしまう、輸送量に対する保証は与えられるべきで ない。
そうした保証は、乗用車の利用増大に拍車を掛 け公共輸送機関にとっての問題を生じさせることで、反 生産的なものとなるだろう。
4―5 コストの配分 コストと利益の公平な配分は、受益者負担の原則 (BPP)に基づきフルコストを受益者に負担させ、汚染者負担の原則に基づき外部コストを内部化させる(例 えば、渋滞税)ことで達成されるだろう。
市民は、施 設(例えば、空港、道路、港湾、ターミナル、鉄道網) の活用から便益を得られると感じる場合に、それを活 用し支払いをするということを前提として、BPPは 正当化される。
汚染者負担の原則には、環境破壊をも たらした汚染者がそれを償うべきだという政治的判断 がある。
例えば、道路輸送では、BPPと汚染者負担の原則 に基づく歳入は、道路・輸送管理支出に対する収支合 わせに貢献しうる。
これにより、受益者と支払い者と の直接的なつながりを作ることができ、投資システム の透明性とアカウンタビリティを高めることができる。
これら原則に従った道路利用者から徴収される料金 には、次のような多様な形態がある。
道路利用料(道 83 JULY 2003 路税と登記料)、特定の連絡道や道路網へのアクセス料 (道路通行料と区域内通行許可料)、道路使用距離料 (燃料税)、道路損傷料(自動車重量料と重量―距離料)、 道路渋滞料(ピーク加算価格や渋滞税)、環境破壊料 (CO 2 排出税)。
道路渋滞料は、これを正しく適用すれば社会に対し て純利益となりうるという理由から多大な関心を集め てきた。
一部の運転者には不利益となっても、インフ ラをより効率的に利用することで渋滞を緩和できれば、 社会全体には利益となる。
さらに、環境汚染が減り、よ り適正に歳入を配分できるといった追加的な利益もあ ろう。
しかしながら、実際に、道路インフラの管理に このようなアプローチを採ったことのある国は数カ国 に限られる。
また、ピーク加算価格を導入すれば、他のロジステ ィクス・インフラも効率的に利用されるようになるだ ろう。
例えば、飛行機の着陸料は、混雑した空港では 差別化される。
新しい対応策が社会的に受け入れられることが重要 である。
例えば、通行料は、国によっては評判が悪く、 強い抵抗にあう可能性がある。
コンセンサスに至るま での過程が、慎重に管理される必要がある。
また、新しく徴収される料金は、社会におけるコス トと利益の配分をより公平なものとすることを目的と しているが、公正の最適化の実現は、不可能でなくと も、困難であろう。
徴収料の導入は、思いがけない、別 の予測不可能な不平等を生む可能性がある。
租税と比 べ、料金の徴収にはより複雑な管理・執行体系が求め られるだろうが、これはフルコスト原理による価格形 成のもう一つの不利な点となりうる。
ITSは、こう した困難を克服し、道路インフラに対する柔軟な価格 形成案を実行する機会を与えてくれる。
例えば、渋滞 料や駐車料は、需要水準に応じて多様なものとなろう。
4―6 地域的課題 グローバルな事業の拡張に応じて、アジア諸国では、 国内的、国際的にロジスティクス・フロー量の急速な 拡大が見られた。
アジア諸国には、ロジスティクス・ インフラの開発が相当に進んでいるところもある。
域 内国家間では距離が大きく、航空路、海上航路、マル チモーダル輸送の開発のインセンティブは高い。
しかしながら、ロジスティクス・インフラと制度的 措置の開発に関して、アジアは北米、ヨーロッパに大 きく遅れをとっている。
道路、港湾、空港の混雑は、ロ ジスティクスの効率性を著しく損ねさせる。
それ故に、 インフラが十分に備わっていないことは、ロジスティク ス活動主体の成果低迷の原因となり、経済発展の障壁 になる可能性がある。
アジア全般に言えることだが、輸送ロジスティクス を非効率なものとしている理由には、インフラ整備の ための十分な資金がない、政府が政策的指揮に欠ける、 政策的優先順位付けが産業部門の成長に偏る、高い経 済成長によって創出された需要に対応できないといっ たものが考えられる。
輸送政策は、効率的なロジステ ィクス・インフラの開発の重要性に理解を示さないと ころがあり、(例えば、週末にトラックの道路乗り入れ を禁止するといったように)乗客輸送が優先されてい る。
こうした政策立案上の不公正さは、ロジスティク ス・インフラの需給バランスに影響する。
アジア太平洋地域に共通するもう一つの特徴は、政 府が公共財としてインフラの改善に重点を置いている 点にある。
しかしながら、アジア地域のほとんどの途 上国が、ロジスティクス・インフラ改善と、ロジステ ィクス問題への制度的解決手段の開発に必要な資金に 欠いている。
公的資金は、新しく改善されたロジスティクスに対 するサービス志向的需要の拡大に十分応えられる状況 にはなく、多様な投資計画が民間側から出てきている。
これは、アジア地域の持つ優れた特徴であると認識さ れうる。
いくつかの国では、道路と港湾の増設を含む 社会インフラの開発に、プライベート・ファイナンシ ング・イニシアティブ(PFI)の手法を積極的に適 用している。
アジア諸国の中には、これまでもビルド・ オウン・トランスファー・アプローチを採用してきた ところがあったが、いくつも混在させる結果となって いる。
4―7 推奨政策措置 ?ロジスティクス・インフラ開発への 民間参加促進政策の必要性 最終的には、ロジスティクス・インフラはロジステ ィクス産業からのニーズを満たすべきものであり、これ はまた商業的ニーズにも適う。
政府は、民間部門の参 加を伴う革新的なインフラ投資計画を開発する必要があるが、また同時に、こうした計画が持続可能な開発 目標との間に整合性を持つようにする必要がある。
従 って、先進のグローバル・ロジスティクス・システム の整備に関わる全ての主体を視野に入れた政策が考案 されるべきである。
プログラムを成功裡に実施していけるかどうかは、数 多くの重要な条件が整っているかどうかに依る。
すな わち、ロジスティクス・システムの計画化段階での政 府の積極的役割、民間投資に対する強い関与、堅調な 経済成長、民間部門と公的部門とのリスク共有、強力 な現地資本市場、企業家精神を備えた民間部門といっ た条件である。
公共部門と民間部門とのパートナーシ ップ形態が選好されるが、民間部門参加の特殊形態と の間でなされる選択は、利用可能な各選択肢の総体的 JULY 2003 84 なコストと利益の分析に基づいてなされるべきである。
?消費者保護に対する政府の統制維持の必要性 政府は、インフラに対する投資と統制に民間部門が 活発に関わっていけるような政策枠組みを開発すると ともに、インフラの利用が「正しい」価格付け政策の 適用により与える負の側面を認識する必要がある。
政 府と民間部門との間の協定には、(直接的コストと間接 的コストを考慮に入れた)価格付け、建設と統制的整 備、情報輸送技術の活用(例えば、自動料金収受シス テム適用の際のネットワーク内での一貫性)といった 内容が、サプライヤーの空間的独占的地位に対するセ ーフガード同様に、盛り込まれているべきである。
?リスクに対する適正な管理と配分の必要性 輸送インフラに対する民間部門からの投資は、公的 部門と民間部門とのパートナーシップとして考えられ なければならない。
国内、国際両市場で拡大を見せる 民間資本の持つ潜在的能力は、投資家がインフラへの 投資から生み出されるキャッシュフローに対し合理的 に企業期待を形成できるような、明確なガイドライン を設定する政策改革によって高められる。
この点に関し、プロジェクトはリスクの影響を最小 化できるよううまく管理される必要がある。
インフラ・ プロジェクトに固有のリスクは、効果的に管理され、適 正に配分される必要がある。
また同時に、民間部門に はそのリスクに応じたインセンティブが与えられるべき である。
従って、リスクの共有は、インフラ・プロジェクト に要求される管理構造の重要な部分をなすであろう。
イ ンフラ・ベンチャー・キャピタル・ファンドが、こうし たハイリスクな投資への資金を集約、確保するために 創設されるだろう。
しかしながら、公的部門と民間部 門との間で何らかのリスク共有形態が必要ではあって も、政府は通常の商業的リスクまで引き受けるべきで はない。
?コストを適正に再配分し 国家側の援助を最小化する必要性 コストと利益の配分は、BPPと汚染者負担の原則 に基づくと同時に、公正であるべきである。
これには、 新規、既存両者間でインフラがさらに効率的に利用さ れる必要がある。
新たな施策は、この点から考案され るべきである。
外部性の創出を含め、新規施策が社会に受け入れら れるよう、常に考慮されるべきであろう。
コンセンサス に至る過程は注意深く管理される必要があるし、多様 なグループに帰属するコスト(直接的、間接的)と利 益の配分は、市民に納得できるものであり、開示され る必要がある。
意志決定プロセスを通してコンセンサ スに至るためにも、歳入の配分は慎重に決定されるべ きである。
一般に、利用料は、現在の施策下でのインフラ整備 に関わる直接的な総費用を賄うだけの十分なものでは ない。
最低でも、政府は、現在のネットワークを維持、 修復するのに必要なコストに基づき利用料を決めるべ きである。
資金不足の場合でも、それを公的部門の年間予算で 補填される部分と考えるべきではない。
補助金と保証 貸付を政治的手段として使うことは、納税者にコスト とリスクを移転することになるので、補助金と保証は、 絶対的最低限度に留めて使用されるべきである。
現行 のプロジェクトの直接コストは高いが、他の政策目標 に貢献するようなものの場合、例外として正当化され るだろう。
このような場合であっても、投資はハイリ スクな出資として扱われ、それに応じた管理となる。
?均整のとれた開発への民間投資促進の必要性 アジアの発展途上国政府は、インフラ開発プロジェ クトの民間部門への開放をさらに進めるだろう。
しかしながら、発展途上国では、民間部門は投資を しても十分にそれに見合うだけの料金を請求すること ができない可能性があり、PFIプロジェクトは魅力 的なものとならないかもしれない。
民間部門のプロジ ェクトを推進するには、助成や、何らかの形での補助 金(例えば、負の支払い)を与えることが必要であろ う。
先進国は、ODA(政府開発援助)の枠組みでは、 これら諸国に直接、資金を貸与できない。
従って、世 界銀行の下部組織であるIFC(国際金融公社)は、 低率での貸付で引き続き重要な役割を果たしていく必 要があるだろう。
これにより、平均貸与利率は効果的 に引き下げられ、プロジェクトの魅力はより高まり、投 資コストは低減する。
アジアにおけるもう一つの課題は、多様な国と諸地域との間に存在する、ロジスティクス・インフラ量と 制度的措置との間の不均衡である。
この不均衡は、各 ロジスティクス・システム開発に対する弱点を示すも のである。
従って、ロジスティクスの概念も慣行もほ とんど存在しない地域レベルでのロジスティクス・シ ステムの開発に重点を置くべきである。
そして先進ロ ジスティクス推進可能な戦略を策定すべきである。
し かしながら、アジア諸国間には大きな違いが存在する ことから、定型化された目標の実現は不可能であるこ とを認識すべきであり、各国は、地域的な目標に個別の 目標をバランスさせる戦略を策定しなければならない。
?補完情報 ロジスティクスの物理的インフラ開発に対する民間 投資の活用が適正なものかどうかは、インフラ投資形 85 JULY 2003 が活発化することが予想される。
インターネット取引、 3PL、多様なニーズを満たす新たなビジネスとサー ビスの発展は、市場の拡大に資するだろう。
特に、ロ ジスティクスを始めとして顧客に焦点を当てた流通手 法は、今後、将来にわたって、重要性を増すであろう。
ロジスティクスは、サプライチェーンを構成する諸 活動を「最適化する」機会を与えてくれるが、この過 程では、アウトソーシングが決定的に重要な役割を果 たす。
内部会計活動の低減同様、輸送およびロジステ ィクスのサプライヤー雇い入れ数の増加は、アウトソ ーシングと専門的特化の趨勢を反映している。
「支援的 な職務」(すなわち、主要な活動に関係しない職務)数 の削減は、生産性の向上と価格の低下につながる。
数多くのサービス・プロバイダーや下請け業者、地 方もしくはグローバルな組織化企業の間で、サプライ チェーン活動が分担されるようになれば、それだけそ の調整が必要となる。
特化されたサービスは、特定の 資産とノウハウに焦点を当てたものだが、また複合的 な完全に統合されたサービスを提供する凝集的な枠組 みの中に入れ込む必要がある。
パートナー間の密な結 びつきは、組織の中でさらに強固に厳格なものとなり、 厳しい「ジャスト・イン・タイム」慣行を含む産業組 織形態を、これまで職人的とされたところにまで普及 させていく。
従って、技巧と産業的特性に基づく伝統的分類法に 変わるアプローチは、統制的ロジスティクス活動を組 織的活動を主体としたものから区別するものであり、統 制的ロジスティクス活動の開発、販売、管理からなる。
情報技術に大きく支えられる、これら統制ロジスティ クス活動のインターフェースが重要な側面となる。
5―3 ロジスティクス産業における 変化が人的資源に及ぼす影響 ロジスティクスにおける数多くの発展が、雇用と労 働に重大な影響を与えている。
例えば、ヨーロッパで は、ロジスティクス組織として二つの形態が存在する が、そこでは労働力の状況が重要な問題となる。
一方 の組織では、高度スキル、情報技術、先進のロジステ ィクスに求められる臨時的標準が重要であるが、他方 の組織では、給料と労働条件に下方圧力をもたらすよ うな製品の低価格と競争力が決め手となる。
同一組織内に両形態を同時に採用しうる。
それは、 他方で補助的サービスは外部プロバイダーに委託した り、臨時工を使い社内生産されるが、中核的なロジス ティクス・システムは、現代的な組織に従うという、一 見、矛盾するような採用方法であっても、である。
従って、価格圧力下にある運送業務と倉庫業務では、 特に東欧諸国の、十分な訓練のない低賃金の従業員が 大半を占める場合が多い。
しかしながら、新技術を使 いこなすには、輸送ロジスティクス・サービスに今や 不可欠となった貨物の追跡等に使われるICT装置を 操作できるだけの高度な訓練が必要となるだろう。
オーストラリアでは、国家道路輸送委員会が、産業 に不足するスキル問題の解決に向けて、高速輸送訓練 に対する若手ドライバーのスキル水準の評価アプロー チをいくつか再検討してきた(NRTC, 1999 )。
NRT Cの出した結論は、たとえ高速輸送のドライバー達の 中から慎重に選定されるのであっても、重量の重い自 動車での経験の浅い若手ドライバーの事故率の高さを 考えると割に合わないため、道路の安全基準の点から 高速輸送の概念は批判される可能性があるというもの であった。
高速輸送を提供しようとすれば、若手ドラ イバーの事故の危険度を高めることになろう。
これに関連して、厳しい財務的制約の下で雇用され る下請けドライバーへの従事は、道路輸送における信 頼の連鎖に関わる問題である。
オーストラリアでは、法 態に特殊的な条件と各国で支配的な政治的、経済的状 況によって異なる。
第5章 技能と訓練に対する要件 5―1 ロジスティクス産業における 労働市場の特徴 ロジスティクスは、主要な経済活動かつ重要な雇用 源となりつつある。
労働条件と労働訓練に関する公共 政策は、労力の量と質、そして輸送およびロジスティ クス・サービス市場の競争力に直接影響する。
貨物輸 送産業を支援する人的資源開発は、公的部門と民間部 門の両者の責任であると考えられる。
現在、ロジスティクス分野の労働力は、構造的労働 力不足に対する恐れが高まる中で、主に年輩男性で賄 われている。
特に高度に熟練したドライバーにおいて そうだが、アメリカ、オーストラリアのように、特定の 活動分野において熟練労働力の不足が既に見られる国 がある。
EUのロジスティクスでは、特に、西欧諸国 と東欧諸国でスキル水準と賃金の国家間格差は著しい。
他の産業分野と比較した場合、ロジスティクス分野で の熟練労働力の不足は、労働条件が劣悪かつ困難であ ったり、賃金水準が低かったりすることと関係してい るであろう。
5―2 ロジスティクス産業における変化 新しい手段、手法、組織形態を導入することで、ロ ジスティクス・サービスの生産構造が変化することが 予想される。
事業活動の拡張の結果として、ロジスティクス市場 JULY 2003 86 の遵守と執行を効果的なものとするために、荷主と受 取人も含め、道路上の危険をもたらしうる輸送チェー ンの構成主体にまで責任の連鎖を拡張し、適用する取 り組みがなされている。
包括的な国家的レベルでの遵 法と執行の提供は、最終的には道路輸送産業、道路輸 送局、執行機関と共同で、国家道路輸送委員会が行う。
また職業健康安全(OH&S)局もこの過程に関わっ ている(NRTC, 2001 )。
さらに、ロジスティクスの発展に伴いスキル需要は 変化し、高度教育を受けた従業員が必要となる。
顧客 に対しカスタム化された完全な統合流通サービスを提 供するうえで、流通業者は顧客の複雑な流通ニーズを 調査し、彼らにとって最善の輸送手段を考案し、必要 な流通情報システムを設計するだけのスキルを備えた ロジスティクスの専門家を雇い入れなければならない。
この過程で重要なのは、こうした専門的な能力を持っ た人材の確保である。
多くの発展途上国では、ロジスティクスの知識と政 策に欠け、人的資源教育・訓練に対する支援を必要と している。
先進国側は、こうした発展途上国側のロジ スティクス訓練コースの確立と開発に、ロジスティク スの専門家を派遣しているが、またこのことは、提供 国側のサプライチェーンにも利益となりうる。
例えば、 日本企業の中にはアジアの発展途上国で、船員訓練・ 保証・監視基準(STCW)に従って、人的資源の教 育・訓練を積極的に促進しているところがある。
海運 業で標準的な国際法・規制を制定したことも、発展途 上国での人的資源の教育・訓練への民間部門の関与を 促す要因となった。
5―4 推奨政策措置 ?ロジスティクス産業における 適正な労働力確保のための条件改善の必要性 ロジスティクス産業において将来の労働ニーズを満 たす適正な労働力を確保するためには、労働者のやる 気を奪い労働力の十分な活用を阻害してきた要因を取 り除かなくてはならない。
道路輸送等の分野で、輸送 部門を支配している雇用条件と他の部門のそれとの間 で公平性を追求するのであれば、相当の政治努力が必 要となろう。
年輩のスキルを持たない労働力の効率性を高めるに は、先進の情報技術と設備をより早急に導入すべきで ある。
しかしながら、当該産業はまた、将来、労働力 不足に陥らないよう、学校での熟練労働の開発を促進 し、就職活動の改善を後押しし、離職率の低減に努め る必要がある。
ロジスティクス産業が、ますます狭まる労働市場で 労働力を巡って競合しなければならない運命にあるの であれば、産業を上げてイメージの改善に努める必要 もある。
?ロジスティクスの発展に呼応した 訓練・資格認定システムの必要性 ロジスティクス訓練プログラムを通して、スキルを 向上させ、ロジスティクス・システムに雇用される者 の職務成果を改善できる。
技術は急速に変化し、多様 な産業に影響を及ぼしている。
しかしながら、最先進 の自動化されたシステムを計画し、開発、操作するに は熟練した人材が求められる。
ロジスティクス訓練・教育プログラムを使って、産 業内の多様なレベルの注意を喚起できる。
従って、ロ ジスティクスにおける訓練と人材の開発は、先進の技 術とグローバル・ビジネスの趨勢に対応するうえで重 要である。
政策立案者も企業のエグゼクティブも、ロ ジスティクスに関する研究と実践に関心を持ち、人材 の訓練を最優先の課題とすることが重要である。
訓練プログラムに併せ、教育・認証施策を通して労 働力のスキル改善が可能であるが、これは、より高度 なスキルを持った労働力の報酬を引き上げることにな る。
?発展途上国の支援を中心とした 国家間協力の必要性 公的部門、民間部門いずれにも、訓練・教育を通し た人的資源の開発は重要である。
域内ロジスティクス・ システムの多様な側面(例えば、統計、公共政策、ベ スト・プラクティス等々)をカバーするデータベースを 確立し、経験と新しいアイデアを交換するセミナーを 定期的に開催することで、国家間で協力することは、こ うした人的資源開発にとって有益なものとなろう。
多くの発展途上国でロジスティクスに関する知識と 政策に欠けていることは、経済発展を隘路に導くこと になろう。
先進国側は、これら諸国にロジスティクス の訓練コースを確立、開発すべく、ロジスティクスの専門家を派遣することで、発展途上国の人的資源訓練 を促進する必要がある。
専門家の派遣は、人的資源開 発でこれら発展途上国の利益となるだけでなく、マル チモーダル輸送活動の調整において重要な役割を果た しうる、重要なロジスティクス施設の整備促進にもな るだろう。
第6章 ロジスティクス・システムの 評価――指標の開発 6―1 ロジスティクス成果指標の開発目的 ロジスティクス分野での成果指標を開発する目的は、 ロジスティクス・システムの効率性と持続可能性を評 87 JULY 2003 れが保持する、システム全体の資源と資産の中でのシ ェア構成と利用に対する責任を反映した新指標の開発 が必要である。
グローバル・ロジスティクス・システムの伝統的な 成果指標では、単純な定量的基準に依存する度合が大 きかった。
このような単純な基準は、経営者、顧客、サ プライヤー等がそのサブ・システムが特定の局面でど れだけ優れた成果を達成しているかを評価するのに使 われ、部分的な比較分析を行う場合に役立ってきたが、 多様なサプライチェーン間の全体的な効率性を比較す るのには不十分である。
現在のミクロ・マクロの指標はいずれも、各サプラ イチェーンの成果を評価するのには不十分である。
ど れだけ単一企業レベルに妥当性を持ったミクロ指標で あっても、これを総計してサプライチェーン・レベルに 適用するのは困難である。
サプライチェーンの効率性 の側面を反映するマクロ指標は、政策立案者にとって 関心のあるサプライチェーンのあらゆる局面を包括的 に検討することよりも、むしろ、個別の特定の事柄に 分断的に焦点が当てられる傾向がある。
従って、ロジスティクス全体の費用、ロジスティク ス・サービスの質、そして社会経済的要素に対する影 響までカバーすることになろう、多様な国にまたがる ロジスティクス・サービスの比較評価を行うためのメ ゾ・レベルの多基準評価システムを開発する必要があ る。
しかしながら、最近出されたOECDの報告書 ( OECD, 2002 )では、こうした分析の際に、データの 利用可能性に大きな問題がある点が強調されている。
主 要なデータ問題には、商業的に敏感なデータへのアク セス問題、データの収集、蓄積、伝送コスト、政府統 計局により収集されたデータへのタイムリーなアクセ ス、こうした政府機関の直面する資源面での制約と産 業特殊的データの収集、管理、伝送に対するこれら機 関による「利用者負担」アプローチの採用といった問 題がある。
最後の部分に関しては、資金不足から、政 府統計局によって多くの統計データが収集されないで きた。
6―3 新指標開発に向けた推奨措置 ?包括的評価を可能とする 多基準指標開発の必要性 成果指標は、コスト指標と定性的指標の二つの形態 に分類できる。
民間部門では、コストの側面からだけ でなく、消費者サービス、財の品質、安全性といった より包括的な側面から、消費財市場でのロジスティク ス・システムの成果を評価する必要がある。
さらに、全体的な成果を評価する場合、社会経済的 なコスト(環境コスト含む)のような非貨幣的コスト が考慮される必要がある。
こうしたコストは、民間部 門では軽視されがちである。
しかしながら、社会全体でみれば、こうしたコストを必ず負担することになるた め、システムの全体的効率性は低減してしまうことに なる。
これらのコスト指標と定性的指標を組み合わせたり、 地域的、国家的平均的価値にまとめ上げることによっ て、ロジスティクス全体でのコスト、ロジスティクス・ サービスの質、社会経済的要素に対する影響までカバ ーするより包括的な評価が可能となる。
?競争力あるサプライチェーンを 開発できる政策活動とするための メゾ・レベルの指標開発の必要性 政策立案を支援しうる指標の開発が必要であるが、こ れによって産業競争力のあるサプライチェーン開発努 価し、ロジスティクス政策の達成度を測定し、改善可 能性を検討することにある。
ロジスティクス・チェーンを構成する多様なプレー ヤーは、また多様な目標を持つが、その個々の目標に 関して達成度を評価する必要がある。
民間部門は、サ プライチェーンの最適化の実現、ひいては国際市場で の競争力の確保を目的としている。
公的部門の場合、 持続可能性と社会的目標を実現しつつ、経済のグロー バル化と貿易の自由化の趨勢に対処しうる効果的な政 策を適用することで、自らの責任を果たすことが目的 となる。
公的部門は政策の効果性を測定するうえで、貨 物輸送を監視し、ロジスティクス・システムの成果を 測定できなくてはならない。
従って、産業や国家の競争力といった視点からだけ でなく、グローバルな社会的「最適化」の観点からも、 ロジスティクスの先進性を評価する必要がある。
消費 者、荷主、ロジスティクス・サービス・プロバイダー、 政府に例示されるロジスティクス・システムの主要プ レイヤーを考慮に入れて、ロジスティクスの影響を評 価する際に、成果指標を使うことができる。
ロジスティクス・システムを完全に評価するのは困 難なことであるが、成果指標を使い、多様な国家間で ロジスティクス・サービスの成果を比較することによ って、相対的に評価することは可能であるし、また有 益である。
ベスト・プラクティスを標準的評価基準と することによって、それは評価可能となる。
6―2 新指標の必要性 サプライチェーン間には、高度に複雑に網目化する 傾向がある。
このようなチェーン間では、多くの主体 による合同管理とネットワーク内のフロー間の相互作 用が必要となる。
複雑なサプライ・ウエブを構成する 多くの主体間での同時的管理には、個々の主体それぞ JULY 2003 88 力を支援する形で、政策活動を実践していくことが可 能となる。
競争力のあるサプライチェーンを作り出すことに対 する産業側の責任と政策活動を通した産業の効率性改 善という公共政策目標との間の相互作用には、政府が、 国内的も国際的にも、サプライチェーン上の荷主、輸 送業者等のサービス・プロバイダーの実績に作用する メカニズムを理解する必要がある。
広範囲にわたる適 切な政策手段の持つ経済的、財務的影響に関して包括 的に分析することで、多様な政策手段のコスト効果性 と適正を決定する際の助けとなるだろうが、これには マクロ指標が必要となる。
しかしながら、厚生の最大化に焦点を当てるマクロ 指標は、サプライチェーンに関してではなく産業部門 や地域に対する、マクロ指標に従属的な条件下で厚生 の最適化に焦点を当てるメゾ・レベルの指標にほとん ど分解される。
政策立案者は、一方でマクロ・レベル とメゾ・レベルで指標を連結させることを求め、他方 でサプライチェーンの指標開発を進めるべきである。
?指標開発に関わる戦略的政策目標を 明確に伝達する必要性 政府にとって、指標の価値を適切な行動に移し替え、 またこうした価値を過去に行った開発とこれから将来 の開発に結びつけるには、成果指標とこれが導き出さ れる支援対象としての輸送政策目標との間の明確な関 係を作り上げることが重要である。
従って、政府は、成 果指標を開発するための戦略的政策目標を明確にし、 ロジスティクスに関係する全ての参加主体にこれを伝 達する必要がある。
?民間部門による指標の実践を促す必要性 多くの企業が、成果基準に関心を持っている。
本当 の課題は、成果改善に有効な指標を定義し、それをあ らゆる関連するステークホルダーとの関係で実施に移 していくことである。
サプライチェーンにおける成果の 測定は困難である。
自分たちの範囲に留まらず、積極 的に広い視野を持って配慮できるパートナーであれば、 良いサプライチェーン・プレイヤーとして、その地位 を確保することになるだろう。
?データを収集し コストを適正に比較する必要性 輸送政策の基盤を改善するためには、ロジスティク ス・サービス・プロバイダーから入手可能なデータを 収集することが肝要である。
また、国際比較に有効な データと輸送政策目標に関連する分析に有効な指標に 関心の焦点を当てる必要もある。
輸送業者同様、荷主 も関連データの直接的な入手先となり得る。
コスト効果的に関連情報を収集するには、特に多様 なサプライチェーンにおける成果との関係で、輸送形 態統計と輸送計数情報で補完した、サンプル調査を行 う必要があるだろう。
特に関心のあるのは、いわゆる 「ラスト・マイル」、すなわち都市部での消費者への財 の配送が重要性を高めている点である。
B2Cのeコ マースが発展しその機会が与えられたこと、消費者間 で買い物時間が短縮化する傾向にあることは、ホーム デリバリーに対するニーズを拡大させている。
このこと は、サプライチェーンと輸送にとって大きな含みを持 つ。
また、調査でよく見逃されるのは、環境に優しい 別の手段によって、店舗への行き来に使われる乗客輸 送がいかに代替されるかという点である。
コストの国際比較を行う際、適正な単位の選定、コ ストと価格面での国際的標準化、先進国ほど高くなる 労働コストの国家間相違を主要因とするコスト差と、規 制、距離、財の形態等幾つかの要素から多様となるロ ジスティクス・コストを考慮に入れる必要性といった、 技法的課題に取り組む必要がある。
要するに、適切でそつのない、データ入手可能な指 標を選定する必要がある。
そうした指標の適用におい ては、産業界、政府両者に、サプライチェーンを非効 率化している要素を特定するのに必要な洞察と、成果 を改善しうる戦略と政策を与えられるようなものとす べきである。
REFERENCES

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