ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年9号
SOLE
SOLE報告

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

65 SEPTEMBER 2003 SOLE東京支部では毎月「フォーラム」を開催し、ロジスティクス 技術、マネジメントに関する意見交換を行い、会員相互の啓発に努め ている。
今年度の第9回目となるフォーラムを7月16日に開催した。
今回はロジスティクス施設の見学として、アサヒビール株式会社 の最新鋭工場、神奈川工場ならびに物流センターを見学させてもら った。
以下に見学会の概要を紹介する。
*       *       * 伊豆箱根鉄道・大雄山線の終点、大雄山駅からタクシーに乗ること 10分。
山肌を切り開くようにアサヒビール神奈川工場が現れた。
総坪 数125,000坪。
もともとミカン畑だった山を削って作られたそうで、確 かに真後ろに山が迫るようなロケーションとなっている。
ビオトープ 風の美しい噴水を横目に見ながら、巨大だが落ち着いたたたずまいの ゲストハウスに通され、まずは工場全体のレクチャーを受けた。
今回のホストは、アサヒロジスティクスの河西企画部長と、アサ ヒビール神奈川工場の根本センター長が務めてくれた。
この日はち ょうど同社が新発泡酒「本生アクアブルー」を発売した日で、案内 に従って倉庫に着くと、パレット3段積みで出荷を待つ新製品が目に 飛び込んできた。
神奈川工場物流センターでは、神奈川県全域、山梨県の一部、東 京は三多摩地区と23区の一部、さらに伊豆半島への配送を行なって いる。
納品時間との関係で出荷の本格スタートは18時以降のため、 見学を開始した14時の時点では出荷作業はほとんど行われていなか った。
まず圧倒されたのは倉庫部分の広さだ。
総面積は通路・パレ タイザーなどを含め約5,000坪あり、なかでも目算で縦100m、横30m はあろうかと言う巨大な下屋は圧巻である。
聞けば、工場設計の段 階で物流の効率にかなり重点を置いたとのことで、物流重視の姿勢 は他の工場と明らかに一線を画しているといえる。
入庫場所へ行くと、パレットの4枚取りが可能なAGF(無人フォー クリフト)、AGV(無人搬送車)が所狭しと走り回っている。
AGF6 台・AGV3台の計9台が常時稼動している物流センターを見たのは 我々も初めてだった。
人は管理者以外全く見かけない。
車輌はほぼ特 注品に近く、全て環境に配慮したバッテリー駆動である。
完全無人化 を徹底する為に、このシステムではバッテリー充電にも特別な配慮が 図られている。
AGF6台は場内のバッテリー交換センターで自動的に バッテリー交換が行なわれ、AGV3台は場内3カ所に設けられた充電 所に停車することで自動充電を行なう仕組みになっている。
樽・びん・缶製品のピッキングシステムもほぼ自動化されており、 自動倉庫とレイヤー(層)ピッカー、段ばらし機の組み合わせによ り、パレット単位・層単位のピッキングを行っている。
倉庫内では、ギフトシーズンの本格化に向けて、ビールをギフト ケースに詰め合わせる作業が行なわれていた。
「装製」と呼ばれるこ の作業は、製品種類や包装のバリエーションが多いこともあり、人 による作業が中心である。
その隣にある課税倉庫では、焼酎・チュ ーハイ・ワインなどのバラピッキングが行なわれていた。
中にはケ ースを開けてのピースピッキングもあり、やはり人による作業が殆 どである。
最先端の機器を駆使した入出庫システムの一方で、こう いった地道なピッキング・出荷作業もしっかりと行なわれているの である。
アサヒビールはニッカウヰスキー、協和発酵、旭化成、マ キシアムジャパン、オリオンビールなどとM&Aや業務提携を相次 いで行い、課税品の品目数は確実に増えているとのことだった。
このあと工場見学もさせてもらい、最後はビール試飲会でメンバー 全員出来たてのビールに舌鼓を打ちながら、しばしの歓談となった。
*       *       * 当フォーラムはSOLE東京支部会員を対象としたものだが、特定月 のみの参加も可能。
ご希望の方は事務局まで。
SOLE東京支部につい てのお問合せ、ご意見などはsole_consult@jmac.co.jpまで。
SOLE報告 The International Society of Logistics SOLLE東京支部フォーラム報告 SOLE東京支部では「RAMS研究会」を開催し、米国防総省 (DoD)の調達管理プロセスの研究を行っている。
研究素材の「防衛 システム調達管理プロセスチャート(DSAMP)」はDSMC(防衛シ ステム管理学校)の調達基礎コースの教材。
調達ライフサイクルに かかわる機能的活動のロードマップとして役立つように構成されて おり、国防総省の各種の調達指針やマニュアルに準拠している。
SOLE東京支部では、このチャートを詳細に研究しようとしている。
そこにはシステム製品取得にかかわる全ての活動が網羅的に記述さ れており、調達プロセスの全体を概観するのに適しているためだ。
前回の報告ではDSAMPチャートの「調達方針(AP)」の概要につい て紹介した。
今回はその中の「調達組織」と「関係者」(キープレー ヤー)に関する議論を紹介する。
*       *       * 今春の英米によるイラク攻撃の主体は、米軍の中央軍だった。
米 軍は地域的に中央軍、太平洋軍、欧州軍などの5軍、目的ごとに戦略 軍、特殊作戦軍などの4軍からなる統合軍で構成されている。
機能・ 戦力的には陸軍、海軍、空軍、海兵隊、沿岸警備隊の5軍種からなる。
作戦ごとに地域組織が指揮をとり、陸・海・空・海兵の機能的戦力 を統合して戦闘ならびに支援活動を行っているわけだ。
ちょうどエ ンジニアリング会社が地域的に営業エリアを決め、機能・戦力面で は機械・電気・建設などの技術部隊を構成し、案件が発生するとプ ロジェクトを編成するのと同じ構図である。
これは、立方体を想像していただき、X軸に地域(太平洋、欧州、 中央軍、あるいは国内、中近東、東南アジア地区など)、Y軸に機 能・戦力(陸、海、空、あるいは機械、電気、建設など)、Z軸に作 戦・プロジェクト(イラク、コソボ、湾岸、あるいは××プラント 工事、○○建設工事など)を位置づければ判りやすいだろう。
軍の調達は、機能・戦力単位、すなわち陸、海、空、海兵ごとに、 地域的要請、作戦的要請を考慮に入れて行われる。
DSAMPチャー トの解説文書によると陸、海、空、海兵などのそれぞれの組織によ って、調達に携わる関係者(キープレーヤー)の名称は異なるが、 担当する調達活動は共通している。
たとえば装備司令Materiel Commands(自衛隊でいう補給本部)というのは、機能的には装備 品の仕様を決め、所要量を計画し、調達を行う部門だ。
同様の業務 を担当する部門であっても、キープレーヤーの名称は組織によって 異なる。
陸軍ではAMC(Army Materiel Command)、海軍では SYSCOMS(Systems Commands)、空軍ではAFMC(Air Force Materiel Command)、海兵ではMCSC(Marine Corps Systems Command)となっている。
調達機能の流れとしては、先ずREQUIREMENTS DEVELOPER (参謀本部または作戦本部、自衛隊では各幕僚監部の防衛部に相当す るキープレーヤー)が装備体系を決める。
民で言えば土木工事ビジ ネスのためにブルドーザーなどの重機を調達し、保有し、維持管理 するといった内容に該当する。
次にSVC HQ LEAD FOR REQUIREMENTが運用要求をまとめ、 技術的リクアイアメントを明らかにする。
ブルドーザーの例であれ ば、どのような場所、環境で、連続何時間運用し、故障時の復旧時 間はどの程度なのかといった機能・性能を明らかにする。
それに基 づいて装備司令が調達活動を実施し、次の段階でDEVELOPMENT T E S T E R が試作品を評価し量産化の可否を判定する。
OPERATIONAL TESTERは運用上の評価を行い、HQ ACTION OFFICERは後方幕僚として装備品の製品支援活動を担当する。
本研究会では今後、DSAMPチャートの横軸、すなわちシステム 調達フェーズ(マイルストーンゼロ、フェーズゼロ‥‥)にそって、 縦軸の「方針と組織マネジメント領域」、「ビジネスマネジメント領 域」、「技術マネジメント領域」を詳細に検討していく予定。
RAMS研究会報告〈 第3回〉

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