ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2003年9号
メディア批評
辻元前議員逮捕の不自然なタイミングに疑義を唱えないマスメディアの問題意識

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高信 経済評論家 47 SEPTEMBER 2003 私が編集委員をつとめる『週刊金曜日』を 取り上げるのはフェアでないと思って控えて きたが、社民党の辻元清美前議員の逮捕につ いて、真正面から「疑義」を唱えたのは同誌 くらいなので、八月一日号のそれをここで紹 介したい。
呼びかけ人の一人の今井一は、落合恵子や 私などとともにやった「疑義」の記者会見を、 翌日の朝刊が「極めて冷ややか」に扱ったと し、「例えば『毎日新聞』は社会面に九行、 『朝日新聞』は同一六行だけだった(東京本社 版)。
私でさえ当初、記事が載っていることに 気づかなかった」と書く。
元最高検検事の土本武司でさえ、次のよう に批判しなければならなかった逮捕劇の裏に 何があったのか。
「辻元前議員は『ワークシェアリング』と主 張していたようだが、これは本来の目的を隠し た給与を申請したことを認めたもので、実質的 には『自白』といえる。
この主張を『否認』と みて警視庁が逮捕に方針転換したのだとすれば、 この事件処理には若干の疑念が残る」 『週刊金曜日』は取材班の記事として、三つ の疑問(総選挙出馬とからむ? 世間の常識 と真っ向対立? 警察不祥事の記者会見隠し か?)を挙げる。
とくに注目すべきは最後の 「警察不祥事の記者会見隠し」説である。
辻元が逮捕された七月一八日、警視庁で記 者発表があった。
辻元逮捕のニュースの陰で「小さく扱われ」ることになったそれは、次の ようなものである。
悪名高い消費者金融の「武富士」社員に何 と警察が捜査情報を漏らしていたとして、元 月島所長の武田三郎警視正を書類送検し、同 警視正と捜査一課警視を警視総監訓戒、赤羽 署巡査部長を戒告の懲戒処分としたという。
明らかな疑惑隠しの逮捕ではないか。
同誌 の解説をそのまま引く。
〈 警視庁の発表によると、武田警視正は国際 組織犯罪特別捜査隊長だった二〇〇一年七月、 武富士の渉外担当だった中川一博被告(業務 上横領罪で起訴)の依頼を受け、逮捕された 同社社員の供述状況を教えた疑い。
部下に命 じ、捜査している警察署から情報を取ったと いう。
中川被告も一八日、地方公務員法違反 (唆し)の容疑で書類送検された。
三人はこのほか一九九五年十一月ごろから、 暴力団員や右翼の犯罪歴、電話や乗用車の名 義人情報を中川被告に漏らしていた。
漏洩は 武田警視正が六件、捜査一課警視が同課係長 在任中に三件、赤羽署巡査部長が新宿署警備 課在任中に三七件だったが、ほとんどが地公 法違反の時効(三年)が成立し、送検はわず か一件にとどまった〉 私たちは税金で?警察官〞という名の暴力 団員を雇っているのだろうか。
これを読む限 り、あのチョンマゲ代議士、松浪健四郎がカ ワイク見える。
そして、この記事は「なぜ、警視庁はこの ような事実の発表を辻元容疑者の逮捕の日に わざわざ合わせたのだろうか」と続く。
私は腐りきった警察を改めて責めようとは 思わない。
むしろ、ミエミエのこんな猿芝居 のスリカエにまんまと乗ってしまうメディア の問題意識のなさに呆れてしまう。
やはり、まだ、記者クラブ制の弊害は根強 く、記者は警察とまともにケンカはできない のだろうか。
今井一は、「辻元逮捕」に疑問や疑念をもつ 人々が少なからずいることを大きく取り上げ ようとしない姿勢は「新聞に限らず放送も同 じ」だと嘆く。
なぜ、この日なのか? 警察をはじめ官の 発表には、まず、こうした疑問を抱くのが当 然だと思うが、そう思った人間はメディアに はほとんどいなかったということだろうか。
私たちが呼びかけた「疑念」への賛同者は すでに一〇〇〇人を超えた。
その疑念は、言 うまでもなくメディアにも向けられている。
辻元前議員逮捕の不自然なタイミングに 疑義を唱えないマスメディアの問題意識

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