ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年10号
ケース
ナスステンレス―― 組織改革

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OCTOBER 2003 44 外資系経営者から企業再生人へ システムキッチンやシステムバスなどの住 宅設備機器を扱う中堅メーカー、ナスステン レスが背水の陣を敷いて企業再生に取り組ん でいる。
同社は昨年九月、親会社だった日本 冶金工業の経営再建策の一環として、みずほ コーポレート系の投資ファンドに売却された。
売却益を狙ったわけではない。
親会社にと って悩みのタネの子会社を切り離したという のが実情だ。
日本冶金は「私的整理に関する ガイドライン」に基づいて金融機関から総額 三五〇億円に上る金融支援を受けている。
こ のうち半分はナスに関連する負債であり、こ れを切り離すことは親会社にとって不可避の 選択だった。
一方のナスは、これによって株式の九九・ 九九%を握っていた親会社の庇護を失い、自 力で再生しなければ将来のない状況に置かれ ることになった。
今年三月末からは投資ファ 投資ファンドの選んだプロ経営者が 企業再建かけてロジスティクス改革 親会社の経営危機にともない投資ファンド に売却された。
受注生産に近い製品を主に扱 っているにもかかわらず、なぜか大量の在庫 を抱えていた。
投資ファンドから企業再生を 委ねられたプロ経営者は、オペレーションの 競争力強化のためロジスティクス部門を新設。
ロジスティクスの責任者を社外から招いて企 業改革を進めている。
ナスステンレス ―― 組織改革 企業再建人を自認する小田嶋勇社長 45 OCTOBER 2003 ンドの運営会社、ベーシック・キャピタル・ マネジメント(BCM)によって送り込まれ た新社長の下で、抜本的な事業の再構築を進 めている。
そのナスが最近、立て続けにマスコミに登 場した。
まず八月一七日にTBSの夕刻の報 道番組「ニュースの森」で、「指示待ち社員 はいらない」と銘打った三分間の特集に登場。
成績の芳しくない営業所長を全国から集めた 合宿の様子が放映された。
次いで八月二十一日には、日本経済新聞の 朝刊一面の「企業再生」という囲み記事のな かで、外資系を追う和製ファンドの取り組み として紹介された。
いずれも新社長、小田嶋 勇氏の企業改革に焦点を当てたものだった。
小田嶋氏は一九六八年に一橋大学商学部 を卒業するとモービル石油に入社。
在職中に 米マイアミ大学でMBA(マーケティング専 攻)を取得し、米国本社に四年間勤務するな ど早くからアングロサクソン流の経営に接し てきた。
二五年間在籍したモービルでは、企 画部長やリテール開発部長、ロジスティック 統括部長などを務めた。
九三年に国際航空貨物大手のDHLジャ パンに転職し、同社の西日本事業部長を務め ていた九七年にヘッドハンティングされて、 米オフィス用品通販大手のバイキングが新設 した日本法人の社長に就いた。
翌九九年にな ると、バイキングの米国本社がオフィスデポ に吸収されたのを機に、オフィスデポの日本 法人の社長も兼務。
オフィス用品の拡販に注力することになる。
二〇〇二年にオフィスデポジャパンの社長 を辞めてからは、一年間ほど個人で経営コン サルタント業を営んでいた。
そこで講演や著 述活動を続けるうちに「?企業再生人〞をや ろうと決めた。
私は外資系企業の出身だから グローバルスタンダードの経営手法が分かる。
いま元気をなくしている日本企業の経営に不 足しているのは、このグローバルスタンダー ド。
私の経験を上手く活かせれば面白いと思 った」(小田嶋勇ナスステンレス社長)と述 懐する。
もっとも小田嶋氏が最初にこうした提案を 日本企業に持ち込んだ二〇〇一年の時点では、 各社の反応は「いやぁ、外資の出身者はちょ っと‥‥」というのが主流だった。
ところが、 その雰囲気が昨年の後半あたりから劇的に変 わったという。
ちょうど当時は?ハゲタカ〞扱いされてき た投資ファンドが、日本でも産業再生の一翼 を担う存在になるのではないかと世間の論調 が変わりつつあった時期だ。
日系の金融機関 や企業が、こぞって投資ファンドによる企業 再生に触手を伸ばしていた。
そうしたファン ドにとって悩みのタネは、再建を任せられる プロ経営者が日本ではなかなか見つからない こと。
そこでBCMが目を付けたのが、外資 でキャリアを積んだ小田嶋氏だった。
ロジスティクス本部の新設 これまで小田嶋氏は、外資系企業の良さと 悪さの両方に接してきた。
その経験から、「外 資が日本で失敗するのは、海外のやり方を一 〇〇%押しつけてしまうから。
経営の九〇% はグローバルスタンダードでいいが、残り一 〇%はローカルなりその企業に適応して修整 していく必要がある」と指摘する。
小田嶋氏がナスの経営再建を請け負ったの には、それなりの勝算があった。
ナスの直近 の売上高は約二四〇億円と最盛期の半分にま で落ちこんでいる。
過去三年は当期損失を続 けており、決して楽観できる状況にはない。
投資ファンドとしても当初は財務リストラを 中心に検討していた節があった。
しかし、小田嶋氏の考えは違った。
財務リ ストラだけでは縮小均衡に陥る。
マーケティ システムキッチンが作られている大船工場 OCTOBER 2003 46 ングなどに重点を置きながら、ある部分では 積極的に拡大していかなければダメだ――。
実際にそうしたビジネスプランを提示したと ころ、ファンド側も乗ってきた。
そのうえで 一定期間は経営を全面的に任せてもらうこと を条件に、ナスの経営トップの座に就くこと を受託した。
ナスの持つブランドの価値も魅力だった。
「四〇才以上の女性を集めて調査したところ、 四五才以上の方の大半はナスの名前を知って いた。
ところが実際にどんなイメージを持っ ているかを聞くと、何も出てこない。
実はこ れはマーケティングをやるうえで最高の条件 だ。
知名度だけが高いところに、これから自 由に色をつけていくことができる」(同) ただ消費者向けに新しい企業イメージを売 り込む前に、まず赤字を垂れ流しているナス の企業体質を刷新するのが先決だ。
今年三月 末に社長として乗り込んできたとき、小田嶋 社長はナスの抱えている問題として?三つの 呪縛〞を感じたという。
日本冶金の子会社だ ったという呪縛、ステンレスの呪縛、業界悪 習慣の呪縛――である。
これまで親会社ばかりをみて経営してきた ため、ナスの社内には自ら物事を決断できな い人材が多かった。
ステンレス技術に優れて いるばかりに、本当に消費者が望んでいるの かを考えずにステンレスばかり使う傾向もあ った。
さらに住設業界の一般的な悪弊として、 売上志向が強く、利益を稼ぐという概念が弱 いうえに、他社の真似ばかりしていた面があった。
何よりもこうした企業体質を改善する ことが急務だった。
まず小田嶋社長は組織改革と人事の刷新を 断行した。
今年七月一日付けでロジスティッ クス本部やマーケティング本部を新設し、外 部からの人材登用も含めてマネージャークラ スの顔ぶれを大幅に入れ替えた。
併せて給与 体系の見直しも実施し、三カ月の猶予期間を 経て今年一〇月から新しい体系による管理を スタートする。
「人件費の総額は変えていないが、配分を 大幅に見直した。
一番、変動幅が大きいケー スでは年収が二〇〇万円くらい上下すること になる。
全体の傾向として、女性の給料はだ いたい上がるはずだ。
新潟の営業所長だった 女性を、関東支店長にするという人事もやっ た」と小田嶋社長は管理体系の見直し方針を 説明する。
まず組織をあるべき姿に変え、そこに既存 の人材を適材適所で当てはめていく。
社内に 適任者を見つけられない役職については、外 部から人材をスカウトしてくる。
こうした方 針に沿って人事の刷新を進めた結果、計六人 を外部から引っ張ってくることになった。
新 設したマーケティング本部の責任者にはファ ーストリテイリング(ユニクロ)にいた女性 を当てた。
また、ロジスティックス本部の本 部長にはリーボックジャパンの物流部門から 男性を引き抜いてきた。
このクラスの人材を見つけてくるのは容易 ではなかった。
ヘッドハンターが持ち込んで くる人材を書類選考で厳選し、小田嶋社長自 身が五〇人近い人たちと一対一の面接を繰り 返した。
一般的な日本企業では人事部が採用 候補を絞り込み、経営者は最後に面接するだ けだ。
こうしたやり方は「外資の常識では考 えられない」と小田嶋社長はいう。
「欧米の経営者は、ダイレクトリポーター (自分に直接報告を上げる立場の部下)につ いては必ず自らインタビューして採用する。
能力の高い人間を見つけるには、それ以上に 高い能力を持つ人間が面接をする必要がある。
もの凄いエネルギーを要する作業だが、これ は日本の経営者に足りない部分だ」 物流費三割減、在庫五割減 ナスの企業競争力を高めるうえで、ロジス ティックス本部の新設は欠かせない組織改革 だった。
従来の同社では、生産本部の担当者 リーボックから引き抜かれてきた江曽 菊夫ロジスティックス・調達本部長 47 OCTOBER 2003 が調達から輸送業者の管理まで手掛けていた。
この体制を長く続けてきたことが、結果とし て非効率な物流管理を招いてしまった。
競合 入札でコストを下げるという発想など、どこ からも出てこない状況になっていた。
過去にモービル石油でロジスティクス部門 の責任者を務めたり、DHLに在籍していた 小田嶋社長はロジスティクスに明るい。
「I Tとロジスティクスは日本の経営者が苦手と する分野。
それだけに穴だらけだ。
この二つ は、いずれも欧米の経営者にとっては必須の 業務。
なぜなら、そこが一番コストを下げら れる業務だからだ」という。
ロジスティクス部門の責任者としてリーボ ックジャパンから引き抜かれてきた江曽菊夫 ロジスティックス・調達本部長(先日、ロジ スティックス本部に調達機能を吸収し改組し た)は、こうした考え方をよく理解している。
小田嶋社長にとっても、ロジスティクスに対 する理解度の高さと、論理的に問題解決に当 たる能力の高さが江曽氏の採用を決めた理由 だった。
当の江曽本部長は、ナスの物流管理の現状 をこう解説する。
「ロジスティクスを実現し ようとしたら調達から販売まで一元的に管理 する必要がある。
従来の当社では、これがで きていなかった。
これは管理職クラスの人間 の責任というよりは、経営トップの問題とい うべきだろう。
トップが大きなビジョンを示 し、中長期のプランまで示すべきだ」 江曽本部長も外資系企業でキャリアを積ん できた。
日本ポラロイドに約二六年在籍し、 経理からロジスティクスまで人事総務以外の 仕事に一通り携わった。
約三年前にポラロイ ドを辞めて日系企業に転職し、半年ほど経っ たときにヘッドハンティングでリーボックジ ャパンに入社した。
それから一年半ほどした ときに、共通の知人を介して小田嶋社長から 声がかかった。
今年七月一日にナスに来てからまだ数カ月 のため、会社の実状を把握したり、自社製品 や業界慣行の理解、取引先との関係づくりな どに追われる日々を過ごしている。
それでも 小田嶋社長がナスの再生に向けて打ち出した 「支払い物流費三〇%削減、在庫五〇%削減」 という目標を達成するための手は打っている。
ナスの協力物流業者との付き合い方は、す でに以前とは様変わりしている。
過去には協 力物流業者との契約を、各地の支店や営業所 に一任していた。
このため地域によって輸送 や保管に関する契約内容の基準が異なるとい う事態を招いていたうえ、競争入札という考 え方をとってこなかったことで物流コストは 高止まりしていた。
この状況を根本的に変えるため、ナスはま ず東日本地区を対象に物流業者との付き合い 方を全面的に改めた。
小田嶋社長の古い友人 が社長を務める中央通運を元請け企業として、 実務の進捗管理から決済までの協力物流業者 の管理を同社に一元化。
同時にナス側の窓口 もロジスティックス本部に統合し、中央通運 とだけ話をすれば東日本全体を管理できる体 制を作った。
そして、既存の協力物流業者だけでなく新 顔も加えて競争入札を実施。
これだけで支払 い物流費を一五%程度、引き下げることに成 功した。
東日本については、この新しい体制 に基づく物流管理を今年一〇月からスタート する予定だ。
競争入札の実施にともない、倉庫業者との 契約方法も変更した。
「坪借りを立米単位に 変えた。
立米単位の契約だと、倉庫業者は自 らスペース効率を考えなければ採算が合わな い。
我々にとっても突発的に物量が増えたと きにスペースを確保しづらいというリスクは あるが、物量を一定させれば立米単位の方が 契約単価を落としやすい」(江曽本部長)た 関連業務を集めてきたロジ本部の人員は約40人 めだ。
保管期間に関する契約も見直した。
従来は 月末の在庫量に基づいて支払い保管料を算出 していたのを、三期制(毎月一〇日、二〇日、 月末の時点で精算)に変えた。
ナスにとって は、かえって支払い物流費が増えてしまう可 能性もある試みだったが、「一〇日単位で支 払うようにすれば保管料の支払いが在庫の実 態に近づく」と江曽本部長。
これによって在 庫管理のムダを明るみに出すことを狙ってい る。
受注生産と直送化の実現目指す ロジスティックス・調達本部(=ロジ本 部)ができたことで、ナスの需給調整のやり 方は大きく変わった。
従来は生産管理部門と 営業が調整しながら生産量を決めていた。
こ れに対して、ロジ本部が情報を一元管理でき る体制になった現在では、同部がウォーニン グ(警告)を出しながら全体をコントロール している。
生産量を最終決定する権限は従来 通り生産部門が持っているが、全体最適の視 点からロジ本部が在庫に常に目を光らせてい る。
毎月、実施している製販会議にもロジ本部 が出席し、在庫増を求める営業部門に対して ブレーキをかけたりする役割を担う。
現状で はまだ安全在庫の下限を探っている段階のた め、アイテムによっては在庫水準を下げすぎ て欠品を出してしまった例もある。
それでも、 OCTOBER 2003 48 こうした試行錯誤を繰り返しながら長期滞留品などの不良在庫を見つけて処理していくこ とによって、従来より大幅に在庫水準を下げ られる感触を掴みつつある。
ただし、ナスが現段階で掲げている「支払 い物流費三〇%削減、在庫五〇%削減」と いう数値目標を、これだけで達成することは できない。
このため、まず一〇月から東日本 で新たな物流管理を稼働し、さらに西日本で も同様の体制を構築していく。
東日本でやっ たのと同様に元請け業者を一社決めて、競合 入札による協力物流業者の見直しを進める。
そして次のステップでは、東西それぞれに 一元化した物流ネットワークを、改めて全国 レベルで刷新することを狙っている。
現状で はナスの主要な物流拠点は厚木と大阪の二カ 所にある。
それぞれに在庫を持ち、全国各地 に設置した積み換え拠点を経由しながら顧客 に製品を届けている。
各地の積み換え拠点から在庫をなくすのが 先決だが、「将来的には大阪の在庫拠点もな くしたいと考えている。
大船工場(神奈川 県)から東日本の拠点に横持ちし、ここから 全国の顧客に直送できる体制を実現したい」 と小田嶋社長は意気込む。
そもそもナスの主力であるシステムキッチ ンやシステムバスは、受注生産に近い製品だ。
着時間の指定こそ厳しいが、突発的に需要が 発生するわけではない。
計画的な輸送を実現 し、配送業者に時間調整してもらう体制を作 ることができれ ば、東日本の一 拠点から全国に 納品することは 可能だ。
そうす ることで在庫半 減という目標を 達成し、オペレ ーションのコス ト競争力を高めようとしている。
そのためには輸送業者の協力が欠かせない が、競合入札による業者の見直しの際には、 すでにこうした条件まで提示しながら新たな 契約を交わしている。
小田嶋社長と江曽本部 長は、思惑通りに直送体制を実現できれば二、 三年以内に「支払い物流費三〇%削減、在 庫五〇%削減」という目標をクリアできると 考えている。
こうしたオペレーション改革の実現はナス にとっては必須だ。
同社は財務リストラの一 環として大船工場のかなりの土地を売却した。
工場内の保管スペースが狭まったため、従来 のように甘い在庫管理ではスペース不足に陥 る公算が大きい。
一般的な企業にとって二、 三年で在庫を半減するという目標は不可能に 等しいが、ナスにとっては、実現できなけれ ば未来を失うことになる必達目標なのである。
再生に向けて新製品を投入 すでにリストラの成果はかなり出てきた。
東日本の拠点一カ所からの全国直送 を目指す 49 OCTOBER 2003 今年七月のナスの収支は、単月でみると黒字 に転換したという。
「四月と五月はかなり大 きな赤字を出したが、改革に着手して四カ月 で黒字化できた。
来年三月には、通年でも少 しプラスを出すくらいまで持っていけそうだ」 と小田嶋社長の見通しは明るい。
金融支援などで借入金を圧縮できたことも 大きかったが、何より効果的だったのは社員 一人ひとりの姿勢の変化だ。
これを小田嶋社長は「人力(にんりき)」という独特の表現 で説明する。
「平均的な人間の能力を?一人力〞と規定 すると、一人力より大きい人材が多いに越し たことはない。
そして、たとえ一人力に達し ていない人材でも、零人力より大きいのであ れば、それは採用した人間が悪い。
ただしマ イナス人力、つまり組織に迷惑をかける人間 だけは辞めてもらうしかない」 こうした考え方で人事制度を見直し、人材 の再配置を断行した結果、ナスの単月収支は 黒字転換した。
いま随所で進めているコスト 削減の効果がフルにあらわれるようになれば、 収支はさらに改善するはずだ。
オペレーションの競争力を高める一方で、 小田嶋社長はナスの復活を担える新製品の育 成にも取り組んできた。
この一〇月に発表予 定の新製品は、これまでのナスにありがちだ った自己満足に陥った製品ではなく、若手の プロジェクトチームのメンバーが消費者への ヒヤリングを繰り返しながら作ったものなの だという。
この新製品がヒットするかどうかでナスの 将来は大きく変わる。
同時に、新商品の成否 は同社のロジスティクスにも多大な影響を及 ぼすことになる。
新製品がヒットすれば、既 存のナス製品の潜在的な顧客がそちらに流れ る。
逆に想定していたほど売れなければ、新 製品のために取引先と開発した独自の部材な どを大量に抱え込むことになる。
いずれにし ても難しい需給調整を乗り切ることが、ロジ 本部に問われる。
現状を見る限り、ナスの経営再建はそれな りに順調に進んでいると言える。
ただし、同 社が計画通りリストラによってコスト競争力 を強化し、ヒット製品の開発という当面の課 題をクリアできたとしても、次に待っている のはライバルとの相対的な比較だ。
今のナス は、自ら抱え込んでしまった非効率の是正に 必死で、その結果が競合他社と比較してどう なのかまでを考える余裕はない。
同業者で現在、最も勢いがあると思われる クリナップは、ナスが構築しようとしている オペレーションをすでに高いレベルで実現し ている。
その上、さらに自社の輸送ネットワ ークを異業種に開放し、共配システムとする ことで、オペレーションのコスト競争力を一 段と高めることを狙っている。
いわばナスが 次の段階で取り組むべき共同化という課題に クリナップは挑んでいる(本誌特集三〇ペー ジ参照)。
こうした劣勢を跳ね返してナスが復活でき るのかどうか。
幸い住設機器の市場そのもの は、リフォームブームなどの追い風を受けて 伸びている。
同社が生き残る余地はあるはず だ。
しかし、残された時間は少ない。
今秋、 投入する新製品の成否に加えて、オペレーシ ョン改革をさらに加速できるかどうかが、ナ スの運命を決める。
(岡山宏之) 海外から輸入する部材は需給調整が難しい

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