ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年10号
特集
共同物流の実践 路線便事業のモデルは通用しない

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

OCTOBER 2003 22 共同配送に雛形はない ――北海道では共同配送の取り組みが盛んです。
なぜ でしょうか? 「北海道は物流の地理的条件が良くない。
大都市・札 幌から各中堅都市までの輸送距離が極端に長い。
お まけにそこで動く物量が少ない。
そのため一社単独で の配送ではどうしても非効率になってしまうからです。
これは共同配送を提供する、われわれ物流業者にとっ ては逆に?地の利〞と言えます」 ――札幌通運が北海道で最初に手掛けた共同配送は 菓子メーカーを対象にしたものでした。
「もともと菓子メーカー三社は道内にそれぞれ倉庫 を借り、それぞれ違うトラック業者を使って得意先に 商品を届けていました。
しかし、北海道は本州に比べ て物量が少なく、常に配送が非効率な状態だった。
何 とかコストダウンできないものかと相談を受けて、提 案したのが共同配送でした」 「道内三カ所の倉庫の運営はそのまま。
当社のトラ ックが、方面別に仕分けされてカゴ車に積まれた商品 を各倉庫(札通が請け負っていた以外の二カ所)から 集荷し、混載してから得意先に配送する。
ただし、当 社が道内すべての地域の配送を担当するのではなく、 既存のトラック業者にも配送の担当地区を割り当てる。
そのためにメーカー三社からの出荷情報を基に最適配 車を割り出す専用の情報システムを開発。
当社がその システムを使って配送全体をコントロールする、とい う仕組みです」 ――菓子共配が軌道に乗った後、化粧品、加工食品 など新たな共同配送を次々と立ち上げていきました。
いずれも菓子共配がベースとなっているのですか。
「いいえ。
業種によって共配の仕組みはそれぞれ異 なっています。
例えば、化粧品の場合は各メーカーが 道内に用意していた倉庫に当社が商品を取りに行くの ではなく、各メーカーが当社の倉庫に商品を納品。
方 面別に仕分けして配送するという作業フローです」 「さらに最近スタートさせたテープ共配(カセット テープやCDなど記録メディア媒体を対象にした共 配)やカメラ共配もちょっと違う。
各メーカーの関東 の工場や物流センターから商品を航空便などを使って 当社の倉庫に直送してもらい、その後、仕分けて配送 するという仕組みになっています」 ――業種ごとに共配のシステムを構築しているわけで すね。
「基本的には案件ごとに共配システムを作り込んで きました。
物流というのは業種によって色々なパター ンがあり、答えは一つではない。
これを用意すればバ ッチリだという雛形が存在しません。
つまり共同配送 は共同配送という一つの商品では括れないのです」 ――当然、共同配送の仕組みづくりには手間も時間 も掛かる。
「共同配送は複数の企業が参画するプロジェクトで す。
まずルールを決めるまでに時間が掛かる。
自社の エゴのようなものを捨ててもらい、各社には統一され たルールに従ってもらわなければなりません。
この部 分の調整、つまりコンセンサスを取りつけるまでが非 常に難しい。
共同配送は?協働〞配送であることをき ちんと認識してもらう必要があります」 ――その調整役には物流業者が適している? 「その通りなのですが、物流業者が勝手に仕組みを 作って『さあ使ってください』というやり方では荷主 企業に受け入れてもらえません。
各社の意見を聞いた うえで落とし所を決めていく。
それが共同配送プロジ ェクトでの物流業者の役割になります」 「路線便事業のモデルは通用しない」 路線便は荷物を出す側の視点からシステムが構築されてい る。
これに対して、共同配送には荷物を受ける側の意向が強 く反映される。
路線便のバリエーションとして共配をとらえて はならない。
安易な共配の事業化は必ず失敗する。
(聞き手 刈屋大輔) 佐藤知正 札幌通運 常務取締役 23 OCTOBER 2003 共配はまだまだ伸びる ――路線便は複数荷主の荷物を混載して配送するサ ービスです。
そういう意味で路線便は共同配送と同じ ものだと考えていいものなのでしょうか? 「その認識は大きな誤りです。
二つはまったく違う 商品として捉えるべきです。
共同配送はただ複数の荷 物を一緒に運べばいいわけではない。
そんなに単純な サービスではありません」 ――路線便と共同配送はどういう点が異なっているの ですか? 「路線便のシステムは出荷する側に起点を置いて設 計されています。
一方、共同配送のシステムではどう すれば荷受け側の手間が省けるか。
どういう物流サー ビスを荷受け側は求めているのか、といったことが非 常に重視されます。
つまり、この二つはシステムの起 点がまったく違う。
だからこそ、路線便の仕組みをそ のまま共同配送に当てはめることができないのです。
路線便の発想で共同配送に取り組めば、必ず失敗す るでしょう」 「求められるサービスのレベルも違います。
例えば、 大雑把に言うと路線便で求められる配達時間は『午 前中』です。
これで顧客も納得してくれる。
これに対 して、共同配送では『何時何分』というより細かい配 達時間が要求されます。
『午前中』の物流の仕組みで 『何時何分』という顧客のニーズを満たすのは不可能 です」 「コストも違います。
共同配送は路線便よりも安い コストが要求されます。
そもそも共同配送のコストが 路線便よりも高かったら、共同配送に取り組もうとい う話にはなりません。
路線便を使えばいいわけですか ら」 ――共同配送でないと、きめ細かな物流サービスを提 供できない。
このままだと路線便は衰退していく一方 ですね。
「いや、路線便にも便利な面はたくさんあります。
荷 物一個から扱ってくれる。
宅配便よりも運賃が安い。
実は路線便の運賃は共同配送と比べて、べらぼうに割 高なわけでもない。
路線便はなくなりませんよ。
ただ し、荷主企業は今までのように何でもかんでも路線便 を使って物流を処理するのでなく、コストや荷受け側 のニーズに合わせて共同配送と路線便を上手に使い分 けていくようになるでしょう」 ――最近、再び共同配送の動きが活発になっているの は何故でしょうか? 「共同配送の浸透は川下企業の発言力が強まっている ことと決して無関係ではありません。
川上企業は荷受 け側に対するサービスの一環として、もしくは荷受け 側からの要請で共同配送を展開せざるを得ない状況に なっている。
それが実際のところでしょうね」――共配事業は今後も伸びていきそうですか。
「日本では小売店舗の数がどんどん少なくなり、コ ンビニや量販店などへ集約される動きが進んでいます。
そして、こうしたチェーン系小売りは物流に対する要 求がとても厳しい。
路線便のような柔軟性に乏しい物 流の仕組みよりも、細かなサービスが受けられる共同 配送のようなオーダーメイド型の物流を求めてくる。
共同配送は今後も間違いなく伸びていく分野だと睨ん でいます」 「たくさんのトラックを動かすよりも一台のトラック で物流を済ませたほうが地球環境への影響も小さい。
共同配送によるグリーンロジスティクスを展開するこ とで企業イメージを高める。
そんな目的で共同配送に 乗り出す企業も今後は出てくるはずです」 加食第1 共同物流センター [倉庫東F棟] A社 B社 自動車部 札幌支店 自動車部 地方拠点 ターミナル 加食第2 共同物流センター [倉庫東E-10棟] C社 D社 E社 定時巡回集荷 北海道内エリア(札幌市以外) ●札幌通運が提供する加工食品の共同配送 札幌市内エリア 直集運行車 (幹線:旭川・函館・釧路・北見・苫小牧・帯広)  集荷車 集荷車 配達車(近郊) 配達車 専属・ 一般路線 中継上 直集直配運行車 大口届先 専属車 専属車 専属車 小口届先(区別積み合わせ) 各届け先 定時納品

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