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JANUARY 2002 28
コントラクト・ロジスティクスに強み
――TNTポストグループ(TPG)にとってのロジ
スティクス事業の位置付けを教えてください。
TPGはメールとエクスプレスとロジスティクスと
いう三つの事業で形成されています。 地域によってロ
ジスティクス事業を別会社化しているところもありま
すが、本社組織は同じ会社です。 つまり、ロジスティ
クス事業部があると理解していただいた方がいいでし
ょう。 欧州ではロジスティクス事業の割合が大きいた
め、リポーティングライン(指示命令系統)も独立し
ています。 しかし、アジアの場合は、ほとんどの国が
一つのリポーティングラインのなかにメール、エクス
プレス、ロジスティクスの三つの事業を入れています。
実際、日本法人でもそうしています。
――TPGの売上高のうちロジスティクス事業の構成
比はどのくらいですか。
三割弱です。 ただし今後を考えると、ロジスティク
ス事業は一番大きくなる可能性を持っています。 国内
の郵便事業は基本的に成熟市場ですし、インターナシ
ョナルのエクスプレス事業の市場規模というのは、そ
れほど大きなものではありません。
――具体的にどういったロジスティクス・サービスを
提供しているのですか。
まず当社の考え方から説明した方が良いと思うので
すが、当社ではロジスティクスを二つに分けて考えて
います。 一つは『コントラクト・ロジスティクス』と
呼んでいるものです。 これは基本的に、お客様に対し
て専門の配送ネットワークを作り、専門の倉庫を構え、
専門のチームで対応する。 つまり、特定のお客様のた
めに専属のサービスを用意します。
従って一つひとつの契約規模は大きくなり、少なく
ても数十億円単位になります。 契約期間は短くて三
年、長いと一〇年ぐらいにわたります。 ここまでやる
となると情報システムにしても非常に複雑なものが必
要になる。 倉庫機能や配車管理のソリューション・デ
ザインも大変、重要になります。 大きな案件では専用
車両だけで、五〇〇〜六〇〇台使うケースもあります。
典型的なのはイタリアのフィアット社のケースですが、
何千坪という専門倉庫を、世界数十カ所に構えてい
ます。
――もう一つのロジスティクスとはどういう種類のも
のなのでしょうか。
もう少しシンプルなケースで、エクスプレスに付加
価値をつけたサービスです。 当社の場合は、これを
『VAS(Value Added Service
)』という言い方で全
社的に統一しています。 おおまかに言えば通常、皆さ
んが仰っているロジスティクスがこれに当たります。
ただし、さきほどの大型案件のように専門の配送網な
どは必要とされない案件です。 既存の配送ネットワー
クなどを活用するものです。
――コントラクト・ロジスティクスとVASを分ける
基準は?
ある程度の企業規模がなければ、専門のコントラク
ト・マネジャーを張り付けることもできませんので、
自動的に規模で分けられる面はあります。 実はコント
ラクト・ロジスティクスの手間は規模の大小にかかわ
らず同じなんです。 基本的に月に一度はお客様とレビ
ュー・ミーティングをしますし、その際にどういう指
標をチェックするかも、あらかじめ契約で決めてあり
ます。 それを一日かけて会議をして、いかに改善して
いくかを話し合うわけです。 それは契約の規模とは関
係ありません。
――日本でコントラクト・ロジスティクスの事例はあ
「3年以内に日本の物流市場は一変する」
TNTポストグループ(TPG)は、UPS、ドイツポスト、FedEx
と並び、物流業界のグローバルな再編劇の柱の一つになると目されて
いる。 同社は「コントラクト・ロジスティクス」と呼ばれる特定荷主
専属の3PL事業では世界第2位の実績を誇る。 今後は日本国内のロジ
スティクス事業の開拓やアジア地区での営業強化に取り組む。
TNTエクスプレス渡辺泰徳 社長
第4 部外資系物流業者の日本展開
29 JANUARY 2002
るのですか。
日本国内での事例はまだありません。 しかし、アジ
ア各国で上位一〇〇位の会社をピックアップすると、
どの業界を見ても、八割方は日本企業です。 というこ
とは日本企業を無視しては、アジアではやっていけな
いということです。
なかでも自動車、ハイテク、化学薬品という三つの
業界は、3PLのニーズが一番大きい業界です。 部品
点数が圧倒的に多い。 部品点数が多ければ、当然複
雑なロジスティクスが必要になります。 半導体などは
その典型です。 ようするに、在庫を持ったら企業経営
に大きく影響するようなもの、つまり一点一点の部品
が高いか、もしくは部品点数が極端に多い業界では、
3PLのニーズが大きくなっています。
インフラより人材がカギ
――物流業者が3PLを展開していく上で、必要にな
る要件は何でしょうか。
ロジスティクスにとって重要な要素は三つあります。
一つは、きちんとしたソリューション・デザインがで
きること。 これは完全にソフトのノウハウです。 二つ
目は、そのソリューション・システムをきちんと動か
すITの能力を持っているかどうか。 三つ目は、実際
の現場のオペレーション能力です。 この三つを強化す
ることに世界的に取り組んでいます。
逆に言うと、当社が基本的に必要だと考えているの
は基本的にこの三つだけであって、インフラストラク
チャーは、ここには入ってきません。 インフラという
のは一番単純なもので、必要があれば建てればいいと
いう発想です。 大きなロジスティクスの案件というの
は、契約が取れてから実際に走り出すまでに一年以上
かかるわけです。 どうしても必要なのであれば、倉庫
はその間に建ててしまえばいい。 これに対して、先に
挙げた三つは簡単には実現できません。 人材の問題が
からんできますから。
――人材育成に関しては日本法人として教育するだけ
ではなく、世界的に経験を共有できるような仕組みが
あるのですか。
場数を踏めば踏むほど、経験を積むことになります
からね。 当然、TNTの社内にもトレーニング・プロ
グラムがあります。 しかし今は、全社的にロジスティ
クスの人材が不足しているんです。 これは当社だけの
話ではなく、どこでもそうです。 ですから外部からど
んどん人材をとってきますし、社内でも育てようとし
ています。
――日本法人としての今後の展開について教えてくだ
さい。
グローバルな3PLも大事ですが、今後は日本国内
で完結するロジスティクスもやっていきたいと考えて
います。 アジアやヨーロッパで受注するにしても、日本国内での実績がモノを言うことが少なくない。 当社
は『コントラクト・ロジスティクス』の分野では世界
第二位の企業なのですが、日本やアジアではまだまだ
知名度が低い。
――日本でロジスティクス事業を展開していこうとす
ると、メーカーの物流子会社の存在が邪魔になりませ
んか。
それは否定しません。 ただし、日本企業もかなり変
わりつつあると思います。 最近の日本メーカーの競争
相手は、中国や東南アジアなどで生産する海外のメー
カーです。 日本国内だけでしか通用しないコスト構造
では勝負になりません。 私は今後三年ぐらいの間に、
日本の物流市場が突然、がらっと変わるのではないか
とみています。
TNTエクスプレスは今後は国内完結
のロジスティクスにも力を入れる
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