ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年3号
SCC報告
日本語版『SCOR入門編』

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

いのでしょうか? 予算計画? 経営計画? 中期計画? それともリソース計画? また、 この計画においてどのような情報が必要でし ょうか? そしてこの計画が影響力を及ぼす 範囲はどこからどこまでですか? さあ、いかかでしょう。
MARCH 2002 76 本稿は、サプライチェーンカウンシル(S CC)が作成したSCOR(Supply Chain Operations Reference model )を日本企業 でより効果的に活用して頂くために、SCC 日本支部SCORワーキンググループ「SC OR普及・啓蒙分科会」が作成した『SCO R入門編』についてご紹介したものです。
S CMプロジェクト推進におけるSCOR活用 の意義について簡単に触れた後、『SCOR 入門編』発行の経緯、およびその構成と内容 の一部をご紹介致します。
「SCOR入門編」はSCORのマニュア ルの補完としての内容だけではなく、SCM そのものを理解するための理念をも述べてい るため、これからSCMに取り組もうとお考 えの皆様には絶好の参考書となっています。
日本企業の皆様にとって、これまで以上にS CORを活用したSCMプロジェクトが身近 なものに感じて頂ければと考えております。
SCMプロジェクト どこから手をつける? 実際にSCMプロジェクトを実施しようと した場合、皆さんは様々な問題に直面するこ とと思います。
例えば以下のようなケースを考えてみまし ょう。
年間販売計画に基づいて、工場では人員計 画、設備計画、材料計画、原価計画等を立 てますが、この計画プロセスを何と呼べば良 第12回 日本におけるSCOR活用のヒント 日本語版『SCOR入門編』 SCC日本支部が「SCOR」の日本語版入門書を 作成した。
読者をSCCの会員だけに限定した日本企 業向け「虎の巻」だ。
本書の概要と、その内容の一部を 本号と次号の二回にわたり紹介する。
SCC日本支部 SCOR普及・啓蒙分科会編 『SCOR入門編』 SCC会員向けに1部2,800円で販売 されている (連絡先:info@supply-chain.gr.jp) 77 MARCH 2002 普段あまり気に留めることなく行なってい る日常業務であっても、いざ舞台に上げてス ポットライトを当てると、その定義に苦慮す ることがお分かりだと思います。
さらに読者 の皆さんは、以下の問いかけに対する「具体 的な」お答えをお持ちですか? ・自社サプライチェーンの全体像や特徴、長 所・短所は何であるのか? ・サプライチェーン改革によって具体的に何 を実現するのか? ・そのためにサプライチェーンのどの部分を どう改革するのか? ・改革の対象にしようとするプロセスの範囲 はどこか? ・サプライチェーンを構成するプロセス間の 繋がりが明確になっているか? ・改革の優先順位をどうするか? 加えて、皆さんが頭を悩ませていらっしゃ る問題としてプロジェクト成果管理があると 思います。
サプライチェーン改革の企画内容 を現場作業者に納得させ、日々の作業として 自律的、継続的に展開させるにはどうすれば 良いのか。
同時に結果だけでなく、そこに至るまでの 現場の努力を経営層に納得させるにはどうす ればいいのか。
換言すればトップとラインとの板ばさみを 回避し、全社が一丸となったプロジェクト運 営を行うにはどうすればいいか、という問題 意識です。
すなわち、 ・現場の評価指標と経営指標とをどう直結さ せるのか? ・経営計画にのっとった形でどう仕事に対す る誇りと自信を与えるか? ・評価指標の正当な評価を現場にどう実感さ せるか? ・トップと現場の方向性をどう統一するか? SCMの実施にあたってはこのような問題 も解決しなければならないのです。
SCMは部門間にまたがるプロセスの管理 であり、どこからどこまで、何に、どんな基 準で手をつけていいかが分からないと対処で きないものです。
種々の意思決定事項を曖昧なまま進めると、 その結果、改革全体で実現されるアウトプッ トのイメージを具現化できなくなります。
日本でSCORを 効果的に活用するために S C O R ( Supply Chain Operations Reference model )とは米国SCC(Supply SCORモデルへの期待 標準化された全体最適な ビジネスプロセス SOURCE MAKE PLAN DELIVER 部門毎、昨日毎に個別最 適に構築された現状のビ ジネスプロセス SCOR普及の壁 自分ではSCORのメリットを理解したつもりでも、それを 社内に普及させ改革プロジェクトの定番手法として認知し てもらうまでには多くの壁を乗り越えなくてはならない。
SCORって何? なぜSCORなの? 既存のシステム との関係は? MARCH 2002 78 Chain Council )の提唱する、サプライチェ ーンの設計の方法論と、そのために必要とな る業務プロセスの名称、その評価指標を定義 したものです。
SCORは階層化されたプロセス記述を行 うと共に、それらの階層で何を決めてから次 に進むかを定めており、用語やSCM対象範 囲の曖昧性のない記述と共有化を可能としま す。
また、階層化されたプロセスにメトリクス が定義されており、詳細プロセス(自分の業 務目的)がどう経営と結びついているか、ま たトップは、経営指標をどう分解すればよい かが明快に理解できます。
この結果、部門毎、 機能毎に個別最適に構築された現状のビジネ スプロセスを、全体最適実現のためのビジネ スプロセスとして捉え直すことが可能になる のです。
このようにSCORはSCMの実践方法を 効果的に体系化したものなのですが、そのモ デルは欧米(特に北米)企業の考え方に基づ いています。
現在のビジネス環境では彼らの 考え方が「ワールド・スタンダード」に近い ものとして認識されていることは事実ですの で、日本でもこのモデルに基づいてサプライ チェーンを見直すことは、特にグローバルに 事業展開を行っている企業にとっては有益な ことだと思います。
しかしながら一方で、この北米スタンダー ドのSCORモデルに基づくSCMプロジェ クトを日本企業に効果的に導入するためには、 いくつか乗り越えなければならない壁が存在 することがSCORワーキンググループの活動を通じて明らかになってきました。
具体的には、SCORという概念をプロジ ェクトメンバーにわかり易く説明する必要性 や、これまでの手法に変えて何故SCORと いうツールを用いることが有効だと考えられ るのか、あるいは従来の改革手法により開発 された既存システムをSCORベースに変え た時の整合性の取り方、などなどです。
また、オリジナルのSCORは英語で作成 されているため、その日本語版の作成にあた り定義や概念の解釈をめぐって様々な議論が 交わされました。
その中にはSCORには記 載されていない日本のビジネス環境にとって のベストプラクティスやその測定指標(メト リクス)をどう扱うのか、といった問題提起 もなされています。
その結果、ある企業で意欲的にSCORベ ースのプロジェクトを推進してきたメンバー は、「約二年半にわたり社内での普及に努め て来たが、日本企業に導入するには日本人に とって分かり易い虎の巻が必須であるとの結 論に至った」と述べています。
その思いが結 実したのが今回作成した『SCOR入門編』 なのです。
『SCOR入門編』の構成 ご存知の方も多いと思いますが、SCOR の体系の中には様々なモデル特有の概念や定 義が出てきます。
右の図はこれらの一例です が、先にご紹介したメンバーに限らず、「先 人による解説なくしてSCCのホームページ ( http://www.supply-chain.gr.jp )に掲載さ れているOVER VIEWとSCORのプ ロセス・メトリクス等の定義書(ディクショ ナリと呼ぶ)だけからその本質を理解するの は至難の技であり、ましてプロジェクトでの 実際の活用については途方に暮れてしまった」 というご経験をお持ちの方もいらっしゃるの ではないでしょうか? このよう問題意識から、『SCOR入門編』 SCORモデルの第一印象 サプライチェーン ベンチマーキング? プロセススパン? プロセスカテゴリー? プロセスエレメント? インプット・ アウトプット? メトリクス? 階層構造? イネーブル? ベストプラクティス? 79 MARCH 2002 ではSCORの意義・使い方に ついての解説を試みています。
その構成は上記の通りです。
また、随所にコラムを散りば め、執筆メンバーが実際にSC ORを現場で使ってみた時の苦 労話や経験談もご紹介していま す。
本来『SCOR入門編』の内 容は、SCCメンバーに対して のみ公開されるものなのですが、 少しでも多くの方々にSCOR の内容とその活用方法について ご理解頂きたいという理由から、 第1章と第2章の一部につき二 回に分けてご紹介させて頂きま す。
さらにSCORをより実践 的に利用して戴くために日本支 部ではSCORワークショップ を年三〜四回開催しております。
是非、SCCに参加され、各社 におけるSCORの活用をご検 討頂ければ大変幸甚です。
※『SCOR入門編』第1章「SCOR誕生 の背景」より抜粋 第4章:SCORベースのプロセス記述 事例紹介 【1】改革範囲の決定(レベル1) 【2】現状地理マップ(As-Is Geographic Map ) 作成:プロセス全体を地理マ ップで表現し てみる 【3】A s - I s スレッド・ダイアグラム(A s - I s Thread Diagram )作成:プロセスカテゴリ を実行系と計画系にわけて描く 【4】As-Is スイム・チャート(レベル2)の記述 【5】As-Is スイム・チャート(レベル3)の記述 【6】As-Is スイム・チャート(レベル4)の記述 第5章:メトリクスの活用法について 【1】SCORにおける評価指標(メトリクス) とは? 【2】企業業績とSCORメトリクスの関係 【3】メトリクスの定義 【4】メトリクスの活用方法 【5】SCORメトリクスとIT 第6章:ベストプラクティスの 活用方法について 【1】ベストプラクティスとは 【2】SCORにおけるベストプラクティスの使 い方 【3】見方/使用上の注意 おわりに はじめに 第1章:SCOR誕生の背景 【1】SCOR開発の背景 【2】サプライチェーンカウンシル(Supply Chain Council : SCC)の経緯 【3】SCOR開発の経緯 【4】SCOR開発組織 【5】SCORの改訂・変更手続き 【6】SCORの効用 【7】SCORの手法概要 【8】SCOR活用企業例 第2章:SCORのスコープと体系 【1】SCORのスコープ 【2】SCORの体系 【3】用語集 【4】SCORモデルの展開予想 第3章:SCORプロジェクトの 編成と進め方 SCORプロジェクトとは何か 【1】ステップ―1 支援者教育 【2】ステップ―2 改革ポイントの特定 【3】ステップ―3 競争戦略分析 【4】ステップ―4 解決策設計 【5】ステップ―5 詳細設計〜試行 【6】ステップ―6 実施導入

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