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MARCH 2002 14
――グルメンは麺の卸として出発しています。 それが純粋
な物流事業に乗り出したキッカケは。
麺の販売だけでは儲からなかったからです。 もともと卸
は利が薄い。 まして独立したばかりですから、誰も相手に
してくれない。 何か営業の「お土産」が必要でした。 それ
が情報であり、物流だった。 要はスーパーマーケットが一
番不得意な分野が情報と物流だったんです。 その提案を
するから我が社の商品を買って下さいという戦略です。 実
際、それで買ってもらえた。 当社の創業は八四年ですが、
既にその翌年から松坂屋ストアの共配センターをやるよう
になりました。 当初は和日配専門です。 豆腐、こんにゃく、
納豆、漬け物、佃煮、惣菜といった商品です。
――和日配は零細のベンダーが多く、大手卸はあまり扱
ってこなかった分野ですね。
大手は今でも苦手ですね。 大手問屋はどうしても大手
メーカーの商品が中心になりますから。 また和日配よりも
っと苦手な部分が生鮮品です。 それも当社はターゲットに
してきた。 後から出てきて体力もないから結局、人の嫌が
ることをやるしかなかったんです。 どろんこ部隊ですよ。
和日配の一括物流で成長
――物流のノウハウはどうやって学んだんですか。
POSはこれだけ普及しましたが、日々の活動には実
際には使われていない。 普通のスーパーさんは月末締めて、
ABC分析をしてみるという程度にしか使っていないのが
現状です。 そこで我々は現場の日々の情報をどうやって
本部に伝えるかという仕組みを考えたんです。 効率的な物
流は的確な発注がその前提になりますが、それができてい
なかった。 スーパーマーケットの発注担当者というのは大
学出のサラリーマンです。 確かに勉強はしているが、三〇
分や一時間かけて店に通勤してくる人ばかり。 地域の事
情が分からない。
食品という商品は地域密着ですからね。 本来はそこに
住んでいる人でないと分からないことが多い。 そう考える
と実は売場のことを一番良く知っているのは店のお客さん
であり、店の近所に住むパートさんなんです。 そこから
「コンパニオン・システム」と呼ぶ仕組みを作りました。
――どんな仕組みですか。
まず店の近所に住むパートさんを当社が採用したんです。
店でチラシを配って集めた。 そして店舗に納品に来ている
豆腐屋や漬け物屋に対して、我が社で発注から返品から
毎日の掃除までやりますよと提案したんです。 そうした和
日配のメーカーではルートセールスがハンドルを握って一
軒一軒店舗を回って納品していた。 しかし、彼らは基本的にはドライバーですから店舗のオペレーションについて
はあまり勉強していない。 競合他社の動向、売場の全体
の企画の問題、他の商品との連動の問題などを考えてい
ない。 それじゃダメなんです。 そこで、それを止めさせた。
仕事を分担したんです。 メーカーは作るだけ。 後は当社が
採用したパートさん。 コンパニオンと呼ぶようにしました
が、彼女たちに全て任せた。
――配送はどうしたのですか。
牛乳屋の協力運送会社の空いている時間帯を貸しても
らうことにしました。 牛乳の納品が一番、時間が早い。 夕
方六時ごろに物流センターに来て、深夜十二時くらいに
は納品を終えて帰ってくる。 それを知っていたので、朝の
四時、五時から一〇時の間だけアルバイトで走ってくれと
お願いした。 五時間だけ貸してくれという契約をしたんで
す。 深夜に四トン車、しかも冷蔵車で運ぶと当時、月間
九〇万円ぐらいかかった。 それが半額くらいでできた。
日配品の3PL――
グルメン
澤田幸雄
社長
「電車通勤の正社員ではダメ。
発注は地元のパートに任せる」
グルメン
澤田幸雄社長
ビジネスモデル
首都圏の地域スーパーを対象に、大手食品
卸が扱ってこなかった和食系のチルド商品(和
日配)の一括物流を提供する食品分野の3P
Lを展開。 当初は店舗に商品を納入するメー
カーを荷主として、その物流を代行する共同物
流業者という位置づけだった。 その後、チェー
ンストアが相次いで自社専用のセンターを設置
するようになって、顧客の顔ぶれはメーカーか
ら小売りにシフトしている。 扱い商品も拡大し、
現在は和日配のほか、生鮮品や洋日配も含め
た日配品全般をカバーしている。
沿 革
澤田幸雄社長は一九四八年、一六代続いた
旧家の跡取り息子として京都で生まれる。 高
校卒業後、印刷会社を経営する実父と対立し、
15 MARCH 2002
――納品後にコンパニオンは何をするのですか。
売場のクリーニングと毎日の棚卸、この二点です。 コン
パニオンが七時半に店に来ると、商品はもう届いています
から、まず事前検品をします。 八時を過ぎると社員が出
社するので、そこで改めて検品してもらう。 その間にコン
パニオンは売場に行って、商品の日付を確認して、売り
物にならないものを下げる。 それを台帳に記入して、販売
可能な残数を書く。 その次に今日届いた商品の数を書く。
これを毎日やらせる。 ということは毎日棚卸ですよ。 同時
に棚にある全部の商品をいったん下げて毎日掃除をやら
せました。
――発注は。
発注までコンパニオンがやります。 もちろん店長なり、
担当者なりからハンコはもらいます。 しかし、コンパニオ
ンは地域の他の店のこともチラシを見て知っています。 実
際、家からチラシを持ってきて並べて、私はこれを発注し
た方がいいと思います、と提案する。 結局、担当者は分
からないからコンパニオン中心になる。
ベンダーの物流コストを半額に
――メーカーはグルメンの提案をどう受け取ったのですか。
アウトソーシングしたくても既存の社員の雇用の問題もあ
りますから、そう簡単に提案を受けられないでしょう。
和日配の物流コストはメーカーが自分で納品していた
時には売上高の三〇%程度かかっていた。 それを当社に
委託すれば半額で済むとアピールしました。 もっとも、メ
ーカーはほとんど原価計算をしていなかった。 だから、こ
っちが原価を教えてあげるんです。 それが半分になるって
いったら感動しますよ。 人の管理はしなくていい、店の苦
情は聞かなくていい。 しかも、売上げはコンパニオンが正
確に把握して、毎日報告してくれるのですから。
――その後、小売りが専用センターを設置するようになれ
ば、荷主がメーカーから小売りに変わりますね。 小売りに
対しては、どういった営業を展開したのですか。
確かに現在は売上の九〇%が小売りのお客さんです。 チ
ルドの一括物流を請け負う物流会社にはメーカー系、商
社系が多い。 そこにアウトソーシングすることで支配され
てしまうという恐れが小売り側にはあります。 これに対し
て当社は昨年、三井物産とトヨタ自動車の資本が入りま
したが、基本的には系列が何もない。 完全な独立系です
から、小売りに安心してもらえる。
――実際、業績は順調に伸びていますね。
過去八年間は毎年二〇%から三〇%ぐらい延びていま
す。 しかし、それ以前には痛い目にもあいました。 創業間
もないバブルの頃、騙されて一億円ぐらいの借金を背負っ
たんです。 周りには皆、潰れると言われた。 しかし、意地
でも会社は潰さないと家族と一緒に死ぬ思いでがんばった。
卸事業に比べて利益率の高い物流事業に特化したのもそ
の頃です。 結局三年で借金を返すことができて、バブルが
終わった頃には無借金になっていた。
――現在は株式公開の準備を進めていますね。 将来のビ
ジョンは。
当社は出世魚のような会社で、生麺の卸から3PLの
物流屋になり、最近はITもカバーするようになっている。
一口で何屋なのか、よく分からなくなってきた。 しかし、
その基本にあるのは食流通のコンサルティングであり、マ
ーケットとしては物流だという認識です。 日本の場合、G
DPの約一〇%が物流費だと言われています。 従って五
〇兆円が物流のマーケットです。 そのうち六〇%が首都
圏に集中している。 その一%をとれば三〇〇〇億になり
ます。 IPO後一〇年で売上高三〇〇〇億まで拡大する
ことが当社の使命だと思っています。
昨年はメーカーが抱えている余剰在庫の販売事業も始
めました。 現在の食品メーカーは需要に対して約二〇%
上乗せした量を生産しています。 商品によっては、それが
四〇%にも上る。 それだけ余っているわけです。 それを当
社が安く購入して、特売の目玉として小売りに提供する。
昨年の八月に実験的に始めて既に月間一億円ぐらいの商
売になっています。 これも将来は事業の柱の一つになると
見込んでいます。
自らも印刷会社を設立した。 いったんは経営を
軌道に乗せたものの社員に二〇〇〇万円を持
ち逃げされて倒産。 歩合制の営業マンとして職
を転々としながら借金を返済し、八四年に麺
類卸のグルメンを設立。
当初は卸としての顧客サービスの一貫で手が
けた和日配の共同物流が、後に事業の柱とし
て成長。 卸事業との相乗効果を生み、飛躍的
に規模を拡大させた。 二〇〇二年三月期の売
上高は約八〇億円。 収入の内訳は、純粋な物
流事業と卸販売がほぼ半分ずつだという。 現在
正社員数は四七人。 他に「コンパニオン」と呼
ぶパートが三〇〇人。 昨年は三井物産とトヨタ
自動車が出資。 現在、株式公開の準備を進め
ている。
http://www.gurumen.co.jp
特集その後の物流ベンチャー
1996 1997 1998 1999 2000 2001(年度)
(単位:百万円)
グルメンの売上高推移
8,000
6,000
4,000
2,000
0
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